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衝撃のレッテル

 戻ると、まだ調理場は直っていないようだった。

 店長さんが困ったように、


「まだしばらく復活できないようだから……というか材料が足りなくてな」

「材料、ですか?」

「そうなんだ。“燃料石”という黒い魔力の石なんだが、先ほど買いに行ったら売りきれていてな」


 困った様な店長の言葉に、石炭みたいなものかなと俺が思っているとそこで火瑠璃がにやりと笑った。


「店長、それを取ってきたら何日か休みを貰えますか?」

「……アキトの料理をもう少し……」

「ん……んー……」


 どうしてか、火瑠璃が俺の方を見る。

 それも食い入るようにじ~っと俺を見て、から何かを決めたらしく、


「じゃあ、私と氷子でとってきます」

「? 女の子二人で大丈夫なのか?」

「こう見えても魔法の使える冒険者なんですよ!」

「……そこまで言うならお願いする。確かあそこの遺跡はそこまできついものでもないというか、優秀な冒険者の素養がある子供でも拾いにいける様な場所だったはずだから……危険の無い範囲で頼むよ」

「はい! というわけで氷子、明日は“燃料石”を取りに行くわよ!」


 それに氷子が、うん、いいよと微笑みながら答えた。

 でも何で俺が仲間はずれなんだろうなと思っていると火瑠璃後再び俺っを見て、真剣に何かを考えている様な言うのをどうしようか迷っている様な顔になってから、


「アキト」

「な、何だ? 火瑠璃。顔が怖いが」

「その、ね……これはただ単に確認であってそれ以上の意味はないから、気を悪くしないでほしいの。これはただ単に確認なだけで、それ以上は無いから」


 大事なことらしく、二回言う火瑠璃。

 ただその、顔が俺に近い気がする。

 こう、火瑠璃の唇が妙になまめかしくて、しかもこう、何となく甘い香りが……。


 いやいや、平常心平常心と俺がチョロくならないよう思っていると、深刻そうな顔をした火瑠璃が真剣な表情で、


「アキト……貴方、幼女趣味があったりする?」


 可愛い美少女にロリコン疑惑を突き付けられてしまったのだった。







 火瑠璃の予想だにしない衝撃的な質問に俺は絶望し、ふらふらと部屋の隅にやってきて俺は体育座りをしていた。


「いいんだ、どうせ俺なんてそんな扱いなんだ」

「ア、アキト、べ、別に深い意味は無いんだ」

「俺、そんな変態に見えていたのか? だから俺にそういった事を聞くのか。そうか……」

「そ、そういう意味じゃなくて……だって気付いたらあんなアイテム貰っているし!」


 火瑠璃が焦った様に俺にいってくる。

 なんだよ、アイテムってと思ってそこで……そういえば狐耳の少女にちょっとしたというか命を助けられたのだ。

 それを考えると俺がそう言われる筋合いはないというかむしろ、


「あのアイテムのおかげで助かった様な物じゃないか。それなのにそんな事を言うのか?」

「う、それはそうだけれど……何となく、アキトが取られる様な気がして」

「……取られる?」

「そ、そう“仲間”としてこう、あちら側に連れて行かれたりするとかこう、もしその……低年齢層好きだったら、そういうのもあり得るかと思って悩んじゃって」

「いや、俺、そんな特殊嗜好は無いし。そもそもそんな好みの女性というと、火瑠璃みたいな子が……あ、いや、火瑠璃が恋愛感情で好きというわけではなく年齢的にという意味で」


 つい言い方を失敗してしまったというか誤解を招くいい方をしてしまった。

 そして火瑠璃が顔を真っ赤にして固まっている。

 ど、どうしよう、本当の事を言っただけだけれど確かに火瑠璃は可愛いというか恋人に出来るなら……いや、よそう。


 それを考えていると何処からともなくあのおっさんが現れて、


「ハーレムハーレム」


 などと叫び、誘惑してくるだろう。

 そもそもそこにいる氷子ももう少しこう俺をフォローしてくれてもいいのに面白がるように、にまにまして様子を見ている。

 そんな話をしていた所で、“フェンリル”のティースがやってきた。


「あ~肉が上手かった。頭を撫ぜさせるだけで肉がもらえるなんて、こんな良い生活があるなんて思わなかった。……よし、明日もメスを探しに頑張るぞ~」

「……」


 そんなティースの様子は、“フェンリル”としての威厳もなく、可愛い犬のペットの様に見える。

 いいのかなと思いつつ空気を読める俺はそれ以上の突っ込み入れずに沈黙する。

 そこで、火瑠璃が、


「でも調理場が使えないなら、ご飯どうしようか?」

「私食べに行きたいお店があるんです!」


 そこで氷子が、この町のグルメガイドという物を指さす。

 描かれたのは鍋の様な物で、中に白身魚と野菜が沢山はいっている。

 ぐつぐつと煮えたスープが暖かくて美味しそうだ。


 しかも、この鍋を食べた後はご飯を入れて雑炊にするらしい。

 美味しくないはずがない。


「しかもお肌にいい、トロ魚の鍋なんですよ。お肌がつやつやになるそうです」


 うっとりとしたように氷子が言う。

 こういった点が気になる辺り女の子なんだなと俺が思って、結局俺達は、その店で夜とはいえ暖かくなってきた時期に鍋を食べに行く事になったのだった。



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