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いったい誰がいるのでしょう

 準備が終わったので“氷結の迷宮”に入ることにした。

 都市から近いこともあって、現にいま目の前でもその遺跡に向かっていく人達が見える。

 もちろん厚手のコートを着てである。


 彼らの装備を確認して、次に俺も装備を確認して、


「やっぱり俺も剣くらいは装備したほうがいいのだろうか」

「? アキトは剣が得意なの?」


 火瑠璃が何処かワクワクするように聞いてくる。

 やはり火瑠璃も女の子なので、強い男が好きだったりするのだろうか?

 妹も自分より強い男が~と言っていた気がするし。


 そう思いながら俺は、残念ながら違うんだと自分自身を思いながら、


「学校の授業で、剣道があったからそれで少し。でもそこまでとく言うほどではないな。兄さん達のほうが凄かったし」

「そうなんだ……でもちょっとくらい使ってみない?」

「この世界だと使えたほうがいいか?」

「うん、やっぱり剣を持って自分の防衛が出来たほうがいいでしょうし」


 火瑠璃に言われて確かにそうだなと俺は思った。

 さっき見た冒険者も色々な種類の剣を各々が持っていた。

 やはり俺もと思っているとそこで、


「いえいえ、剣ではなく、折角なので貴方の才能を頑張って発揮しましょう」

「……悪魔のような何かが俺に剣を持つなと囁いている」

「悪魔とは失礼な。こう見えてもい世界の神ですよ。はははは」


 突然現れた異世界の神“ハイパーエンジエル・ラブピース”は相変わらずの海パンのような姿をしている。

 だがこんな寒い場所にこの格好でいられるのはやはり異世界の神だからなのか、それともこの筋肉に代表されるように、体を鍛えているのでそんな軟弱ではないというのだろうか。

 やはり俺もこの腕にもっと筋肉を……。


 そんな俺を、火瑠璃がそこで揺さぶった。


「アキト、大丈夫? 何だか現実逃避したような顔をしているわよ」

「いや……ここでまた現れるとは思わなかったので」


 そう俺は素直に答える。

 実際に何故ここにという状態なのだ。

 一体今度はこのおっさんは何を言う気なのだろうかと俺が思っているとそこで、


「いえ、多分突然だときついと思うので事前情報をと思いまして」

「……何と遭遇するんだ? よっぽど危険な的なのか?」

「あー、確かに危険な的には遭遇しますね。でも貴方がたの力なら大丈夫なのです。それに彼女もいますしね」

「彼女?」

「ええ、貴方がたがカードを設置している時に入っていった女性です。彼女がいるので私の手助けがなくともなんとかなるでしょう」

「だからその彼女ってなんなんだ」

「それは出会ってからのお楽しみということで。では!」


 そう言いたいことを一方的に告げて、その異世界の神はこの場から消えた。

 捕まえて話を聞いておくべきだった……あとになって俺は後悔することになる。

 なにせそこにいた人物は……。


 そんな何も知らないその時の俺は、意味深なことを言いやがってと小さく悪態をつきながらようやくその遺跡の中へと入りこんだのだった。









 “氷結の迷宮”は中も氷で出来ていた。

 透明なガラスとも思える氷だが、思いの外分厚く段々と奥のほうが見えなくなっている。

 何だかんだ言って幾らかは色が付いているのだろう。


 それでも昼間なせいもあるのか上から弱々しいながら光がこぼれ落ちてくる。

 そんな迷宮内では有るが、その中ではキノコや落差やら石のようなものやら……様々なものが生えていた。

 これらも依頼があれば取ってくるような、何かの材料にはなるらしい。


 しかしこんな寒い場所でもたくましいなと俺は思う。

 なにせ息を吐くだけで真っ白くなるのである。

 極寒とはいえずとも、冬というくらいには寒い。


 そう思っていると魔物が現れたようだった。

 何故そう思ったのかというと、目の前の冒険者達の前に魔物が現れたからだ。

 そして目の前の冒険者達がその魔物を軽快に剣などを使って倒していく。


 数分もかからずに倒したそれを見ながら俺達も、彼らの後を歩いて行く。

 途中別の冒険者とも遭遇する。

 ここは迷宮と言われるだけあって、中が迷路のように入り組んでいるようだった。


 ただ街から近いので冒険者達も沢山来るので、遭遇しやすくなり……気づけば5つほどのパーティと一緒に行動している状態に。

 どの人も、剣やら杖やら色々なものを持っている。

 いかにもファンタジーといった様相の彼らを見ながら、俺達も進んでいく。


 だが後ろの方のパーティである俺達なためか、魔物と遭遇すら出来ない。

 遭遇した途端早い者勝ちだというかのように、冒険者が襲いかかるのだ。

 まるでバーゲンセールの会場のようだと俺は思いつつ暫く進む。


 それから一時間たっただろうか?

 俺達は相変わらず歩いていて、一匹も魔物との戦闘に遭遇できずにいた。

 そこでようやく三つの分かれ道にやってきて、冒険者達が真ん中を避けるように進んでいく。


 俺達はその三つの道で立ち止まり、


「火瑠璃、真ん中の道は問題があるのか?」

「……地図によると危険な場所と書かれているわね。でもここに入らないと魔物との戦闘はできそうにないわね……」

「じゃあ、少し行ってみて危険そうなら引き返そう。それでどうだ?」

「……そうね、能力をあげるためにも、ここにいかないとね」


 火瑠璃はやる気を出し、氷子は少し不安そうだがちらりと俺を見て、

 

「アキト、頼りにしていますね」


 そう微笑んだので、俺は頑張らないといけない気がしたのだった。

 


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