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女の子の応援には答えるべき?

 俺はふと眩しさに目を覚ます。

 カーテンが少し開いていてそこから朝日が差し込んでいる。

 そうか、朝かと思って俺は……ぎょっとした。


 俺の隣に、火瑠璃が眠っている。

 パジャマではなくタンクトップの様な服を着ていて、温かい時期とはいえ風邪をひいてしまいそうな露出度が高い恰好である。

 しかも小さく呻きながら少し動いて、その時に服の隙間からちらりと胸の谷間が見える。


 はっきり行って俺は今まで彼女がいたこともなかった。

 そして自分の直ぐ側に、朝起きたら同い年くらいの女の子が寝ているなどという羨まけしからん状況など物語の中でしか見たことがない。

 俺は一体どうなってしまうのだろう。


「……そうだ。今のうちに逃げよう。そうすればきっと大丈夫だ」


 何が大丈夫なのかは分からないが、焦って一杯一杯担っている俺はその場から逃げようとした。

 正確には反対側に転がって、そっと逃げようとした。

 けれどそちら側ではなぜか、氷子が眠っている。


 あどけない表情で眠る二人の少女。

 俺、どうなってしまうんだろうという不安とともにこっそりと起き上がる俺だが、そこで火瑠璃の目が小さく動く。

 ゆっくりとその瞳が開かれて俺を映し、


「……アキト、おはよう」

「……おはよう」

「顔洗ってくるわ」


 そう言ってぼんやりとした感じで火瑠璃は立ち上がり歩き出す。

 俺なんかには目もくれない。

 良かったと思いながら、今のうちに逃げたほうがいいのではと思う。


 何だかよく分からないが、逃げたほうがいい気がするのだ。

 そう思っていると今度別の場所で声がする。

 見ると氷子が目を覚ましたようだ。

 彼女は俺を見て、


「……おはようございます」

「……おはよう」

「火瑠璃ちゃんは?」

「顔を洗いに行きました」

「そうですか。私も行ってきますね」


 そう言って氷子も立ち上がり歩き出す。

 そして二人がいなくなった部屋に残された俺といえば、


「俺……男として見られていないんだろうか」


 とても美味しい状況だったはずなのに、俺は切ない気持ちにさせられたのだった。









 戻ってきた火瑠璃はようやく目が覚めたようだった。


「お、おはよう、アキト。……昨日はごめんね?」

「昨日? 何かあったか? そういえば何かを話した気がするが、そのあたりの記憶が……そうだ、カードの魔法をどうやって使おうかって話だったか」

「そ、そうそう。でね、使えるようになるために、魔法の練習をしようかって話になったのよ」

「そう……だったか?」

「そうそう」


 火瑠璃が頷く。

 他にも色々話したり、何か出来事があった気がしたが俺は思い出せない。

 けれどいずれはカードの魔法は使えるようになりたいので、


「そうか。でも魔法って失敗するとどうなるんだ?」


 機械の暴走のように制御を失って大怪我となると俺は困る。

 なので、こちらでの魔法がどうなのか聞いてみると火瑠璃が、


「失敗にはいくつかあるけれど、よっぽどの大魔法でない限り大丈夫だと思うけれど……でもアキトの魔法は力が強いから、もしものことを考えて外で練習したほうがいいかもね」

 

 そう言われて、俺はそうだなと思う。

 大変そうな部分はあるが、使える力なら早く使えるようになっておいた方がいいだろう。

 そこで、俺達は呼ばれたのだった。









 朝の食堂で新たなメニューという名の、俺の良くしてっている料理をてきぱきと作り上げつつ、絶賛された後、ようやく休みのとれた俺達は、町外れに来ていた。

 ここで魔法の練習をしようという話になったが、


「むー」


 ひたすら紙を睨みつけ俺は念じてみた。

 カードになれ~、カードになれ~、そう繰り返し繰り返し、呪うように続けたが一向にカードが光ったりといったような不思議な現象はない。

 とうとう俺は諦めた。


「やっぱり無理なんじゃないのか? これ」

「諦めが早いわよ。もっと頑張ってからにして」


 火瑠璃に急かされて、氷子にも応援されて、女の子二人に応援されているのに諦めるのもどうかという気がしたので、俺は再度頑張ってみる。

 けれど未だにこれは夢の中なんじゃないのかという雑念が湧く。

 そのせいかは分からないが一向にカードは動かない。

 そこで火瑠璃は嘆息した。


「……せめて魔法を教えてあげるわ。先に使える魔法を増やしたほうが良さそうだもの」

「よろしくお願いします」


 そしてカードから離れてまず火瑠璃に教わる。

 自分の体にある魔力のようなものが手のひらに集まるように集中して呪文を唱えるらしい。

 上手く魔力がつながれば魔法が発動するとのことだが、魔力ってなんぞな俺にはよく分からない。


 先ほどから呪文なるものを唱えさせられているが、一向に発動しない。

 それを十回程度繰り返して、火瑠璃が深々と嘆息し、


「これじゃあ魔力の持ち腐れじゃない」

「そんなことを言ったって、今まで魔法なんて使ったことがなかったんだ。数字の計算の仕方を習っていないのに突然やれと言われても難しいだろう」

「それはそうだけれど、あんな呪文無しで魔法が使えるのに……そういった感覚を意識して魔力を放出してもう一回やってみて」


 けれど再度試しても魔法は発動しない。

 どうしようと思っていた所で、それは現れたのだった。


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