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まだまだ
「・・・・い、・・・ろよ・・み・・・・・・美帆!!」
揺さぶられ目を開けるとそこには友幸の顔が目の前にある。
ああ、やっぱり夢だったのか。
安心してアハハ、と笑う。
「ばっかだな~、鏡の前で寝るとか。風邪ひくしすっげぇ面白い感じになってんぜ」
そう言ってカラカラ笑う友幸の臭いに美帆は顔をしかめる。
女ものの香水の匂いだ。
それも一つや二つではなく、かなりの量が混ざった臭い。
美帆はもちろん、優奈も芽依も香水を使わない。
「原っち・・・くさい」
まじで!?と驚いて自分の臭いをかぐ友幸。
クンクン、と何度か嗅いだ後
「ああ~、この臭いは一組の茜ちゃんと一つ上の小鳥先輩と……」
次々と上がる女の名前。
友幸は女の人の顔はおろか、名前を出すことも中々できないシャイボーイだったはず。
一体何をしたのだろう。
そう疑問に思い質問すれば友幸はさもいつものように、と言った感じで
「え、聞いちゃう?ナニしてたかだなんて」
と笑うのだった。
そこでやっと美帆は気付く。
成寅の場合容姿、声が変わり友幸の場合は性格がまったく真逆になる。
つまりここはまだ鏡の向こうの世界なのだ。




