スリッパ(木製)
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むしろスイマセン。
僕はあの後、フラフラになりながらもゴーレムのサポートで帰途についた。
帰還のための魔術は僕の魔力が必要だったみたいで、魔力の尽きた僕はゴーレムの中で気を失った。
で、目を覚ますと。
「あ、おはよう。ムル君。」
…
…
…
はい?
お姉さん、顔、むっちゃ近い。
で?なんで、お姉さんが僕と一緒に寝てるの?
「ごめんね。ムル君に無理させちゃったね。どこか具合の悪いところない?」
お姉さんが僕を抱いてギューってしてくる。
ふわり、と良い匂いが漂ってくると共に感じる柔らかさ。こ、これは…もしや…。
母親以外の異性を初めて意識した。段々と恥ずかしさがこみ上げてくる。
「だ、だだ、大丈夫!ぜ、ぜ、ぜ全然平気!」
気が付けば吐瀉物で汚れていたはずの僕の服は脱がされてた。
下着は…うん付いてる。
けど、なんか新しい気がする。
いや、気のせいじゃねぇぇぇぇ!
「お姉さん?僕の服…は?」
「あ、汚れてたから…私が!私が着替えさせたの!」
お、お姉さん、鼻息荒い…です。
「こんな美味しそうな…もう、我慢…しなくても…むしろ我慢しない!」
お姉さんの目が怖い。なんかスイッチ入ったのか?
「とりあえずいただき「させるかー!!!」ぐはー!」
パーンという破裂音とともに入るツッコミ!
危なかった!何かわからんが危なかった。
頭を抱えて蹲るお姉さん。その後ろにはスリッパ(木製)を片手に仁王立ちしている先生が。
た…助かった…のか?
「全年齢対象ですから!ふしだらな行為は読者が許しても神と運営が許しません!」
「いや、言ってる意味もスリッパ(木製)で人の後頭部叩く意味もわからないから。で、何しに来たの?」
「何しにって…ムル君が目を覚ました時のために水差し持ってきたんですよ。」
「まさに水を差しに来たんですね、分かります。」
「無意味に横に寝てるよりはマシでしょう?」
なんだ、この雰囲気。
「無意味じゃないわよ。私だってムル君の服着替えさせたり鑑「言わせねえよ!」ごふぅー」
僕の視力では先生の右手の動きを捉えることはできませんでした…。
あれから1ヶ月。
僕が住んでた村が見つかった、らしい。
今日は魔王と一緒に(自称)勇者御一行もお茶を飲んでる。
あんたら仲良いのか?
「最近はこの人…魔王のお手伝いもしているのですよ。報酬…ではなくて、やはり絶滅の恐れのある生物はある程度保護してあげないと。」
相変わらず欲の塊なんですね、神官さん。
「流石の俺様もモンスター護る為に戦うことになるとは思わなかったけどな。勇者を名乗るからには人類のことだけでなく、世界のことを考えて行動しなければならない、とそこの魔王に説得されてな。」
魔王に説得される勇者って珍しい。
「この情報も、モンスターの保護の途中で立ち寄った町で仕入れたんだが。勇者やってるお陰で顔だけは広いからな。懇意にさせてる商人経由でそれらしい村の話を耳にしただけだぜ?」
得意気に話す(自称)勇者。
「まぁ、怪鳥に拐われた子供が居る、なんてのは珍しいしな。」
この世界でも鳥に拐われるという事象は珍しいことらしい。
「で?坊主はどうするんだ?家に帰るのか?」
もう、ここに来て1年過ぎてるんだよね。流石に帰りたい。
けど。
僕は。
「お姉さん。」
この人を放っておくことなんて、できない。(主に世界平和的な意味で。)
「な、なに?」
だから。
「僕の故郷に一緒に行きませんか?」
言い訳は活動報告で!