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戦うということ。

お気に入り登録ありがとうございます。

ゴーレムはどうやら僕の思うように動いてくれるみたいだ。

これで農作業すれば畑なんて簡単に広げられるのに。

そんな風には使われないんだろうなぁ。


手足を動かしながらそんな事を考えてた。

ちょっと倉庫内を歩いてみる。


「ジャンプしても大丈夫?」

「平気。床を強化してあるから穴が開くことはないわ。」

お姉さんに確認してからジャンプしてみる。これはちょっと力の加減が難しい。

一通り動かせることを確認し、外装を取り付けていく。

腕と足に外装を付けると更に虫っぽい形になった。

なんだろ?カマキリとか、ナナフシっぽい。

「デザインは変更も出来るから、気に入らなかったら言ってね。あ、でもでも、版権に引っ掛かるようなものはダメよ。」

とりあえず、二つ目で角が生えてて顎が赤いのはダメ…と。


「じゃ、早速行ってらっしゃい!」

え?

ちょっと待ってまだ心の準備が。

「それに乗ってるムル君ならドラゴンだって倒せるから!キマイラなんて指先一つで昇天よ。」

まぁ、そうなのかもしれないですけど。ドラゴンとは正直闘いたくないです。

むしろ誰とも闘いたくないんですけど。


僕元々農民だし。


そんな事情はお構い無く、お姉さんは魔方陣の準備をし始めた。

さすがにこのサイズを転送させるにはお姉さんでも術式は必要なのか。

って、転送?魔方陣見て転送って理解した自分に吃驚だよ!そして転送する気でいるお姉さんにはもっと吃驚だよ!

「退治が終わったらまたここに戻ってきて。サポートはその子がしてくれるから 。」

魔術の発動と共に機体が光に包まれる。

次の瞬間、岩がゴロゴロと転がる荒涼な風景が僕の目の前に広がっていた。


「まったく…無茶にもほどがあるよ。第一、どうやってキマイラとかを探せ…ば?」

なんて、暢気なこと言っていたら。




そこに、『それ』は居た。






「で、でけぇぇぇぇぇeeee!!!!」

はい。これがキマイラを見た僕の第一印象。

頭の高さは僕の乗ってるゴーレムの肩くらいだけど、二本脚で立たれたらゴーレムを越えるだろう。

4体の動物を組み合わせて出来た魔獣。顔は…人。



キマイラ。

性格は獰猛で残忍。

自然に発生する確率は低いものの、人里に近い場所に現れると災害認定されることもある。

顔は老人、羽は蝙蝠、体はライオン、尻尾は蛇って言う、進化論に真っ向から喧嘩を売っているようなデサイン。デザインだけならまぁ、100歩譲るとして、大きさも半端ねぇ。

生身で戦ったら、喰われる。見ただけで本能がそう理解する。

その怪物が僕を睨む。

力のない人間であれば、眼光だけで動けなくなるだろう。

人類に対する完全な捕食者。


それが今、僕の目の前にいる。



醜悪な老人の顔。口からは止めどなく涎が垂れているってことは、僕もきっと餌として認定されたんだろう。


僕にとって幸いだったのは、生身でこの怪物の前にいるわけじゃなくて、お姉さんが言うところの『研究の成果』の中に居て、かろうじて、これを動かすことが出来た…ってことだけ。


『GAaaaaaaaaaaaaa!!!!』


怪物の雄叫び。あまりの恐怖に僕の体は硬直した。


その隙を見逃すはずもなく、キマイラはすごい勢いで突進してきた。

僕は恐怖で身体が畏縮して動けない。

巨体がゴーレムに瞬時に迫る。

「ぐわあぁ!!」

怪物に体当たりをまともに喰らってゴーレム(と中にいる僕)が吹き飛ぶ。

衝撃が横Gとなって僕の身体がシートからずれそうになる。

『インフォメーションメッセージ!ダメージ軽微。機体に損傷無し。』

ゴーレムの状態が音声として僕に伝えられる。

あんな体当たり食らってダメージ軽微って…ホントかよ。



キマイラとの距離を取る。

何か!何か、武器になるものは?

『アラートメッセージ!敵魔力増大。』

老人の口が開くと火炎が放たれる。

何でもありか!

「くっ、シールド!」

僕は両手に握ったボール型のコントローラに魔力を込める。

左肘の部分から薄い膜状のシールドが展開される。

キメラの口から放たれた火球をシールドで受け流す。

「こ、このっ!やられっぱなしで!」

機体をキメラに向かって前進。加速させる。シールドは展開させたまま。そのままさっきのお返しとばかりに体当たりをかます。


怯んだ隙をついて蹴りを入れる…が足に尻尾が絡み付いた。

「こんなの!」

尻尾を強引に引っ張る。付け根からブチブチ…と、引き千切ると老人の顔がおぞましく歪み、悲鳴をあげる。

切られたしっぽはしばらく動いていたけど、踏みつけたら動かなくなった。

先程の雄叫びとは違う、悲痛な叫び。


僕はさらに魔力を機体に送る。今度はこちらのターンだ。

機体の指先に魔力を纏わせる。

鈎爪が魔力を帯び淡く光りだす。


「これでも…喰らえっ!」

技でも何でもない。必死に両手で化け物の顔を手で掴んで持ち上げただけ。

魔力を帯びた鉤爪が徐々にだが顔に食い込んでいく。



「グォォォォ!」


ミシミシと音をたて、醜悪な老人の顔の形が歪んでいく。

キマイラは苦しいのか、足を使って暴れるものの懐に入られてしまったせいでうまく攻撃ができない。

僕は振り解かれまいとさらに力を入れた…。



『グチャッ』




キメラの顔が潰れる感触。自分の手で潰したわけではないはずなのに、その感触は確かに伝わってきた。


頭を無くしたキメラはしばらく宙をもがき…力尽きた。


…「オゲェェェェェ」


緊張が一気に緩んだのと潰れた顔を間近に見てしまったこと、さらに潰れた感触が手に伝わってきたことなんかが一気にきて僕の胃はお昼に食べた物を全部吐き出した。


アイアンクローって、痛いよね。

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