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ちきんな大学生と片付けられない女の子。

『たてやまくん。家でお茶でも飲んでいかない?』


飲み会の帰り。岩佐木美子は玄関まで送った僕に少し俯きながら言った。


「え?でも…」


流石に夜の10時過ぎ。最終電車にはまだちょっと時間がある。けど。


「いーからいーから。もう少しお話したい…し、ダメかな?」


彼女…岩佐木美子は僕と同じ法学部の同期生。サークルで一緒になってまだ一ヶ月ちょっとだけど、彼女は綺麗と言うよりも可愛い、ちょっとした小動物をイメージさせる感じの娘。

同じ学部で、選択科目も結構同じのが多かったから、サークルでは他の男よりも話す方。


で、あったわけだけど。


こ、此処でダメとか言われて断れる男がいるだろうか?


否!ない!(反語)


もし、居るとしたらそれは真剣に魔法使いを目指してる方(30代で童貞)とか、女の子より男の娘の方が好きか、歪んだ青春時代を堪能したある意味男らしい人に違いない。


僕は高校時代の3年間は光画部(写真部との違いは卒業して2ヶ月たった今でも分からない。)で、共学だったのにもかかわらず、彼女のかの字も出来なかった黒歴史は兎も角置いておいて、今現在彼女もなく、大学のサークルで新歓コンパの帰りにそんなことを言われるとも思わず(そりゃそうなったら嬉しいけど現実問題としてそんな事はないと思ってた。)当然思考はオーバーフロー。


健全な18(まだチェリーボーイ)の僕には据え膳とか毒食わば皿までとか、そんな思考をする余裕は当然なくて、


「あ、あぁ。でも、良いの?」


一応遠慮。


ここで『お邪魔しまーす!!』何て言えるほど人生経験豊かじゃない。


まだ童貞だし(-_-)


「遠慮しないで、ね?あ、でも、ちょっと部屋散らかってるかも…」


「あ、あぁ、そんなことは気にしなくても。」


「じゃあ、ね、付いてきて。」


彼女の部屋はマンションの4階だった。

オートロックを解除して中に入っていく彼女の後に続く。

…僕の家賃の倍は軽く払ってそうだ。


エレベータの上がっていく感覚に軽い違和感を感じながらも、これからの事を考えると微妙にソワソワ。


よし、おちつけ、びーくーる。

そうだ、こう言うときは素数を数えると良いって同じサークルのヒデは言ってたんだ。


1,3,…


えぇ。もう彼女の部屋の前です。






『ち、散らかってるけど、遠慮しないであがって。』











初めて、の、女の子の部屋。



彼女無し=年齢という人生において、初めての(彼女じゃないけど)女の子の部屋。


妄想が性欲を上回る事もあり得る春期発動期な男子としては小動物を連想させる女子の部屋に招かれたら、多少の期待も含めて色々考えてしまう。


それが普通、普通だと思う。


だよね?


が。


彼女の部屋のドアを開けてもらった瞬間、僕の思考は停止した。


なぜなら。


彼女が部屋を開けた瞬間、『雪崩』が起きた。


いや、雪が部屋に降るわけがないんだから『雪崩』という表現は正しくないのか?

『土砂崩れ』なら良いのか?


という、事を意識の外で他人事のように思ってると。


「ほら、入って入って!」


と、部屋の主である彼女…美子がぐいぐい背中を押してくる。


え?え?入るん?この部屋?部屋?部屋なの?


「あ、靴は脱がなくて良いよ。玄関小さいから」


いやいやいや!


玄関と言うか靴を脱ぐ場所?無いよね?人一人やっと通れる位の通路?がなんとか膝まであるかつて塵だった物の上にあるけど、両サイドなんなの?

本?やたら薄いけどこれ?本?


そうやって考えてる間にも彼女はぐいぐい背中を押してくる。


こういう状況じゃなければ、あるいは僕がもう少し人生経験豊かな人間だったなら或いは対処ができたのかもしれない。


でもね。


絶賛人生経験中!じんせいけいけんなう!今!まさに今その経験を体験中!


ぐいぐい女の子に背中を押されて部屋に入るという、人生初のたいけん。


おかあさん、ぼくはまたおとなのかいだんをまたいちだんのぼりました。


よし、おちつけ、びーくーる。


深呼吸をしようと大きく息を吸い込んだ瞬間、盛大にむせた。


鼻の中に酸っぱい臭いが充満。


え?これが女の子の香りかぁ~って違う!

あれですよ、俗に言う腐敗臭。

まあ、天井近いくらい床に散らばってるかつてのコンビニの袋だったものとか、そのコンビニで売ってるオニギリの食べかけとか、飲みかけのペットbo


「あ、今飲み物用意するね、適当に座ってて」


ニッコリ彼女は笑うと軍人さんのような回れ右をして玄関の方に戻っていく。


…座っててって言われても、この幅だと、正座しかデキナインデスケド。


仕方がないので僕も彼女の真似をして回れ右してそのまま正座……したくないなぁ。


「ん?どうしたの?座って?」


彼女はペットボトルを持ってきて器用に正座。というか女の子座り。


胡座かいたら両側崩れちゃうかなって少しずつ冷静になっていく思考。


とりあえず落ち着くために彼女に合わせて正座。


きちんとした正座するの、高校の選択科目で体育で剣道やって以来だよ。



うん。まだ少し混乱してるな。


とりあえずお茶もらってさっさと帰ろう。そうしよう。


「はい。粗茶ですが。」


うん。ありがとう。ペットボトルのお茶を紙コップで渡されて一口。


「…これ黒烏龍茶?」


「ん?いと○えん」


いや、ほぼ隠れてないし!否、お茶こんな色してないし!


一口つけたお茶をブハー!っていう音と共に吹き出す。だぁ、ちょっと飲んじゃった。


「きゃあ!汚い!」

避けようのない状況のなかで僕の口の中にあったお茶は彼女にかかったのだが。


お前が言うなー!←心の叫び


あ、気持ち悪くなってきた。


酒と、緊張と、止めのお茶で。


「大丈夫?顔真っ青だよ?」


うん、正直やばい。

頭クラクラしてきた。

ちょっと横に…なりたくてもこの狭さじゃ…。




「ダ,ダイジョウブ…ボクモウオイトマスルカラ」


フラフラしながらなんとか言葉を絞り出す。


暫く正座をしていたせいだろう。足が痺れていた。その足で立ち上がろうとした時、体がふらついた。


思わず側の右手の物を掴んで体を支えようと、したんだけど。


「え?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


天井まで積み上がってる『物』が雪崩となって僕の頭に落ちてきた。


頭に固い物が落ちてきて目から星が飛ぶ。

否、火花かもしれない。


強く打った頭を振って意識をなんとか保とうとした瞬間。


ガン!


今までで一番の衝撃を後頭部に受けて僕は意識を失った。

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