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花には蜜があります

作者: 時間旅行

私の大好きなもの、それはお花に甘いお菓子に綺麗なお洋服、キラキラした宝石に皆で話す噂話やお喋り。

あと、この国の第二王子シラー様、私の婚約者。


金色の髪の半分を上でまとめて、残りの半分をおろす。

今日着るドレスを侍女と一緒に悩んでいたら、途中でお父様に呼び出しを受けた。

淡い黄色と白のふんわりしたドレスに決まると、すぐに着替えて、お父様の待つ居間へ急いで向かう。


「私のマリー。今日も綺麗だよ。」

頬にキスをしてくれたお父様に、私もお返しをして微笑む。

「お父様も素敵ですわ。」

シラー様ほどではないがすらりと高い背に、綺麗に整えられたお髭。

白髪の少し入った髪はオールバックにしてある。


そうかそうかと笑ったお父様は、実はな、と話を切り出してきた。

「隣国で開催される2ヵ月後のパーティーにお前も連れて行こうと思う。」

「まあ。」

2ヵ月後のパーティーとはきっと隣国の第一王子様のお誕生会のことだろう。

「シラー様も招待されていると思うが、お前もどうかな。」

私はその言葉ににっこりと笑い、頷く。

「ええ。ぜひ連れて行ってください、お父様。」



そうなると、屋敷はあわただしいもので、着る物見につけるものの為に屋敷をいろいろな人が行ったりきたり。

私も着たり脱いだり採寸されたり、隣国の状況を探ったりなど、することがたくさんあった。

そうこうしていると、2ヶ月という期間は少なく、日はあっという間に過ぎ去ってしまった。



隣国は我が国より小さく、資源も我が国に頼っている状況だが、作る技術は発達していて

今後は伸びてくるだろうと期待が持てる国だ。


私とお父様、お母様と妹と弟が到着すると町はすでに祭りを始めていた。

道が込み合っていて、前日に到着してしまったが、1日あれば準備をする時間としては十分だ。


お父様がお前は特別だから、城に泊めてもらえる。と言われたが、それはお断りした。

一人でよその国のお城に泊まるだなんて、そんな不安なことは嫌だった。

特別だと言われたが、シラー様の婚約者だからだろうか。

シラー様と一緒に泊まると言うならば頷けたが、そうでは無いらしいので、やはりお断りしておいた。


次の日の夜になり、出かける準備がすべて整った家族を見渡したお父様は満足げに頷いた。

最後に私の肩へ手を置いたお父様は王子様へ祝いの言葉を必ず言うようにと念を押され、その言葉に

もちろんですわ、と私は頷いた。


今日のドレスは瞳に合わせた青色のドレス。

所々にキラキラと宝石が編みこまれていて、レースもたっぷり使用されている。

髪は複雑に編みこまれて、真珠をつかってくくられている。

今日は本当にお姫様になった気分だ。


それは、ほかの女性も同じらしく、皆私と同じようにふわふわとした心地でいるようだった。


会場の中を軽く見渡してみるがシラー様は見つからなかった。

高い身長と人を引き付ける存在感を見落とすはずは無いから、今日は欠席なのだろう。

気分が一気に急降下した。

パーティーは2日にわたって開かれ、1日目は前夜祭なので出欠は自由なのだ。

シラー様は派手なことが嫌いなお方なので、きっと1日目は参加されないだろうと思っていたが、悲しい事にどうやら当たっていたようだ。


はあ。とため息をつくと、声をかけられた。

「綺麗な方。そのため息の理由を聞いてもよろしいでしょうか。」

振り向くと、この国の第一王子様がいらっしゃった。

赤色の髪の毛に金色の瞳。少したれ目の甘い顔立ち。

周りの女性たちの視線を一身に集めていた。

ドレスを少しつまみ腰を下げる。

「こんばんは。そしておめでとうございます、ベルラ様。私はマリー・シア・ベゴニアと申します。お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません。」

王子様は眉を少し上げた。

「では、あなたがシラーの婚約者のマリー嬢でしたか。」

「はい。私のことを知っていてくださったのですね。ありがとうございます。」

微笑みながらお礼を言うと。ベルラ様は頬を染める。

「ええ。それに、シラーの婚約者と言うだけでなく、あなたは有名ですから。アイビー国にある3つの花の1つとして。」

ああ、確か有難い事に世間では花に例えて貰っている事は知っていた。

「名誉な事として受け取っております。」

シラー様に相応しくある為に努力した結果の一つだと思うと誇らしい。

私の方へ向けていた視線を下におろすと、ますます頬を染めて言いにくそうにたずねてきた。

「あの。ここにいるという事は、城に滞在していると言うことでしょうか。わ、私の結婚相手の候補として。

いや、・・・シラーの婚約者であるあなたがまさか、そんな。」

私はきょとんとする。

ベルラ様は何をおっしゃっているのだろう。

「私は城に滞在してはいませんわ。候補?シラー様の婚約者である私が、まさか。うふふ。」

私の言葉を聞いたベルラ様はとたんにがっくりとなさった。

そうですか。失礼なことを聞きました。そう言ったベルラ様は軽い挨拶を言い残し

ふらふらと別の場所へ移っていった。

その後を追うように女性たちも移動する。

さて、祝いの言葉を送るという目的も達成された。あとは、好きにさせてもらおう。

楽団のそばの椅子に座り、おいしそうなお菓子をお皿に乗せ、綺麗な色のジュースを飲んで

人々が楽しそうに踊るのを夢の中にいるような気分で眺めてすごした。


泊まっているホテルに戻ると、お父様がどうだったと聞いてくるので

今日見た綺麗なものを端から報告していると、ふと思い出す。

「今日はシラー様はいらっしゃいませんでした。そこだけが、残念ですわ。」

ふう、とため息をつくと。コホンとお父様がのどを鳴らす。

言いにくいことがある時のお父様の癖だ。

「マリー、聞いてくれ。シラー様はこのパーティーには参加なさらないのだ。我が国の王族で参加されるのは

第一王子様だ。私の勘違いだったのだよ。すまないね、マリー。」

私は目を瞬かせて、申し訳なさそうな表情をしたお父様を見る。

「お父様。シラー様は来ていますわ。」

「?」

お父様が眉を寄せ、無言で疑問を私に問いかける。

「このパーティーの準備で私とても忙しくて。

会いに行けない日々が続いたことを、シラー様が心配してくださって。

手紙が届いたのですわ。体調が悪いのか、と。」

お父様は髭をさわり、ますます眉を寄せる。

私、何か悪いことでもしたのかしら。

少し罪悪感を持ちながら、続きを話す。

「パーティーの準備のためです、と。シラー様も準備で忙しいのではないですか、と。手紙を書きましたら

マリーのおかげで参加するということを思い出せた。とお返事が来ましたわ。

だから、シラー様もこのパーティーは参加されていると思うのですけど。」

話の最後になるにつれ、お父様はうなり声を上げていた。

「お父様。私、何か悪いことでも?」

困った表情で見上げると。頭をなでてくれた。

よかった。何をしてしまったのか分からないけど、そこまで怒っては無いみたい。

ため息をついたお父様は「まあいい。」と言うとにっこり笑ってくれた。

「お前は素直でいい子だ。」

機嫌が直ったみたい。よかった。

「はい。」



次の日のお昼。

シラー様とこの国の騎士達でちょっとした試合を行うと噂を耳にしたので

2人の侍女に同行してもらい、こっそりと観客席の隅へ腰を下ろした。


だけど、隠れるように座る必要はなかったかもしれない。

戦う様子が目の前で見れる特等席にドレスを着たきらびやかな女性たちが陣取って、黄色い歓声を上げていたから。

私も混じっていいかしら、と侍女に聞くと。

怖い顔で、駄目です。と一刀両断された。

まあいいわ。

日陰の席だし、戦う人の姿は小さくて兜をかぶっていても、姿勢が良いシラー様はどこにいるかすぐに分かりますわ。

これって愛の力なのかしら。

うふふと笑っていると。

シラー様に話しかけている女性が目に付く。

女性も騎士なのか兜を腕に抱えていた。

長い赤い髪。

昨日出会った王子様と同じ髪の色。

きっと、この国の王女様なのだろう。

二人が話している光景に胸がドキドキしてきた。

パーティーの準備期間にこの国の情報も集めていたのだけれど、その中にとても興味深いことがあった。

それは、この国の王子・王女は我が国の王子・王女たちととても仲が良く、幼い頃からの遊び友達だということ。

これは女の感だが、シラー様の初恋はこの国の王女、アラリア様なのだろう。

その証拠に、仲良さそうに剣で打ち合いを始めている。

試合を始めたからか、兜を皆被っていたが楽しそうな雰囲気がここまで伝わってくる。

剣も持てない私ではとても真似出来ないわ。

ため息をつきそうになるのを堪えたはずなのに

後ろの方から音が聞こえた。

「はぁー・・・。」

同じように憂鬱を抱えている人が気になり振り返ると、眼鏡をかけたひょろりと細い、色白の男性がいた。

侍女たちは眉根を寄せて訝しがっていたけど

私にはすぐに分かりましたわ!

「恋する乙女ですわ。」

え。と侍女達が聞き返してきたが、男性のほうが反応が大きかった。

「えっ!?わ、ち、ちがっ!って乙女?」

顔を真っ赤にさせた男性が慌てながらこちらを向く。

「ええ。恋をすると誰でも乙女になるのですわ!」

拳を作り、真剣に言う。

「こ!恋!!」

男性はこれ以上真っ赤になると危ないのではないかと言うほど顔を染めていた。

ついには両手で顔を押さえ蹲ってしまった。

なんて可愛い反応。やはり乙女という表現は間違っていなかった。


「意中の相手は観客席の中かしら。どの方ですの?私協力しますわよ。」

同じ憂鬱を抱えている人だから何となく同士と思ってしまう。

いいえ。同士で無くたって恋敵で無いのなら、私は乙女の味方なのですわ!

男性は視線をさまよわせた後。

「ここからじゃあ分からないなぁ。」

とつぶやいた。

「まあ!私はシラー様が兜を被っていても、人ごみの中にいてもどこにいても見つけ出せますわ。

貴方も目を凝らして、さあ。」

男性は引き気味に私を見る。

「君、異常だよ。」

「そうかしら。」

首を傾げると。

男性が一歩下がる。と侍女達が私の一歩前に出てきた。

どうやら、男性を睨み付けているようだ。

「お嬢様。おとなしく見学を続けないのであれば、すぐに帰りましょう。」

「そうです。今夜の準備でもしましょう。」

そうだ、幼馴染の初恋相手に勝つために今すぐホテルへ戻りパックやマッサージ、他にもする事が色々ある。

だけど。

「はぁーー・・・。」

目の前でため息をつき、悩んでいる乙女を放っては置けない!

一度かかわってしまったのだし。

「貴方。今日のパーティーに出席するのでしょう?」

見た目は野暮ったいけど、着ているものはいいものだし、王族がいる建物の中にも入ることが出来る身分を持っているようだ。

「えぇ。まあ。」

私はにっこりと微笑む。

「では、私が貴方の魔法使いになって見せますわ。」

男性は首を傾げる。

御伽噺の中に出てくる魔法使いはお姫様を王子様と結ばせるために大活躍をするのだ。

「さあ、今日着ていく服を持ってきて。」

私がにこりと笑うと、男性は自分の服を指差す。

どうやら、今来ている服でそのまま出席するらしい。


侍女と私ははしたなくも、えぇっ。と声を上げてしまった。


ちょっと失礼します。と侍女が男性の髪をかきあげる。

あら。意外と整った顔立ち。

するともう一人の侍女が、男性の上着を脱がす。

と、野暮ったさが一気に抜ける。

どうやら、寸法の合わない上着を着ていたらしい。

今からオーダーメイドは間に合わないから、市販のものでも良いから貴方の体に合ったものを買いに行きますわよ。と言うと

おとなしく頷く。こちらの勢いに飲まれているようだ。

オールバックにして体にあった物を着るだけであら不思議。

元が良かったのか、一気に貴族の男性らしくなってしまった。

体が細いが眼鏡で知性をアピール。うん、いいわ。

さて、あとはパーティーと言ったらこれでしょう。

「手を出して下さい。」

「手?」

「一曲踊っていただけないかしら。」

戸惑うかと思っていたら、意外にもすんなり手をとり、侍女の手拍子に合わせ体を動かす。

上手い!

シラー様よりも、いいえ、ダンスの先生よりも上手いかもしれない。

くすりと笑うと、間近にいる男は少しびっくりした顔をする。

「君は、綺麗な人だったんですね。」

「まあ、今さらですわ。」

くすくす笑っていると、侍女が慌ててとめに入る。

シラー様が怒りますよと耳打ちされた。

なぜシラー様が怒るのかしら。

でも、侍女が言うのだからそうなのだろう。

それに、もう十分だ。

「貴方は自信を持っていいと思います。きっと上手くいくわ。」

男性は眉根を下げ、そうでしょうか。と呟いた。



私はその後、家に戻り、どこへ行っていたんだと少し怒っていたお父様に謝罪をして

すぐに着替えを始めた。



そして夜。

昨日よりも今日は人数も豪華さも違う。

きっと王族が揃うからだろう。

シラー様もいるはずと少し目線をさまよわせるだけですぐに見つかった。

やっぱりかっこいい、としばし見惚れる。

今日の服装はダークグレーの正装。

高い身長に短い黒髪と綺麗な緑色の瞳。ピシッとした姿勢でどこから見ても隙が無い。

きっと私の目はハートマークだろう。

すぐにそばへ駆け寄りたいが、今の私は婚約者と言う立場ではなく

お父様の娘として参加しているため、傍に行っては邪魔になるだけだろう。

私は私でこの時を楽しもうと、お皿を取るために手を伸ばすと、会場がざわつく。

皆が向いている2階の扉を見ると、この国の王族が姿を現した。

王様と王妃様、そして王子であるベルラ様と王女であるアラリア様。

王妃様以外は全員、赤い髪に金色の目。服装も赤を基調とした色合い。

バラのような王家だ。

ドレスは着慣れていないのだろう、恥らうアラリア様と苦笑しているベルラ様。そこへ挨拶に向かうシラー様。

華やかな場面にうっとりしていると、ふと寂しげにため息をついていた昼間の男を思い出す。

きっと注目の的になっているだろうときょろきょろと辺りを見てみたが見つからない。

まあ、シラー様のようにすぐに見つかるとは思えないからゆっくり探してみましょうか。

・・・。

いない。

1時間ほど探してもいないなんておかしい。

庭に出ているのかと、窓からのぞいてみたけどそれらしい人はいない。

見えない所でため息でもついているのかと思い、廊下に出て外に出てみようと思ったが

その廊下の途中で目的の人物を発見する。

廊下に並べてある椅子の一つへ項垂れるように座っていた。


「具合でも悪いのですか。」

私がそっと声をかけると男性は体をゆっくりと起こす。

私を見るとへにゃっとした顔をして笑った。

「やはり、僕には無理です。」

えぇ!

「何故?貴方はとても素敵になりましたよ。自信を持ってください。」

「僕よりもっと相手のほうが綺麗になっていたんです。姿を見た瞬間気づかされました。やはり僕じゃ駄目だ。」

まあまあまあ。

これは大変。恋する乙女が沈むとなかなか浮上してはこれないのよ。

どうやって説得しようかしら。

まず会場に連れて行くには・・・食べ物!は大好きって感じの人じゃないわね。

じゃあ、音楽!そうよ、ダンスよ!

「もうすぐ、ダンスが始まるわ。貴方とダンスを踊れば相手の方はきっと夢中になるわ。ね、行きましょう。」

これは効果があったのか、男性は悩むように唸った。

これで駄目ならどうすればいいのかしら。

男の手をとろうとすると、ぽんと肩を誰かにたたかれ、マリーと名前を呼ばれる。

いつもより低い声だけど、間違うはずが無い。

満面の笑みで振り返る。

「シラー様!」

私の反応が意外だったのか、シラー様は少し眉を上げる。

が、すぐに気を取り直し、私と男性を交互に見渡す。

「説明してもらえるか。いや、言い訳か。」

言い訳?首を傾げる。でも説明なら出来る。今の私一人ではこの方を会場まで連れて行けないからシラー様にも加わっていただこう。

シラー様の腕を引っ張り、いままでの経緯を説明する。

途中まで納得の行かない顔をしていたシラー様だったけど、途中から何かを思いついたのか

じっと男の人の顔を見ていた。


私はすべてを話し終え、のどが渇いたなと思っていると、シラー様はその長い足で

男の人のところまでさっと歩き、がっと腕をつかむと、引きずる、いえ、持ち上げるようにして男性を会場まで連れて行った。

さすがはシラー様だわ!

私が考えに考えた説得でも動かせなかった岩を難なく運んでしまった。

会場に着いたシラー様は男の腕を離すとまたどこかへ向かって歩いていってしまった。

離された男はその場で放心していて、頭がついていっていないようだ。

私は近くの給仕から水をもらい飲んでいた。


ガラスに入った水を半分ほど飲んだところでようやく喉が落ち着く。

と、シラー様が戻ってきたようだ。

手にはアラリア様の腕をつかんで。

隣にいた男性はうっと、息を呑む。

ああ、なるほど。分かりました。

この男性の思うお方が。

アラリア様は男性を見ると見る間に赤く染まり、自分の身を隠すようにシラー様の後ろへ周る。

ああ、そこは私の位置なのに。

すると、シラー様はアラリア様を猫の子へするように襟首を掴み男の前に立たせた。

あらあら、そこには初々しい2人の出来上がり。



興味心身で見つめていると、いつの間にか傍に来ていたシラー様に手を取られ、2人と群集から遠ざけられた。


着いた目の前には楽団がいたので、にっこり笑うと、少し頬を染めた楽器を持つ男性たちは

軽やかな音楽を奏ではじめてくれた。

「シラーさま踊っていただけますか。」

小首をかしげて手を出すと、ぎゅっと握り締めて、顔を寄せてきた。

「もう、浮気はしないと誓うなら。」

「浮気?」

「ベルラをその気にさせて、先ほどの男ももう少しでマリーを好きになるところだった。」

えぇ?

「ベルラ様を?先ほどの男性も?まさかそんな。シラー様の勘違いですわ。」

ころころと笑うと。シラー様はため息をつく。

「早く繋ぎ止めたいが。君の父上はなかなかに手強い。

大事に大事にしながら、見せ付けるようにして虫を誘き寄せている。ひどい人だ。」

お父様が何か色々、企んでいるのは知っているけれど。

最後はきっと私の意志を尊重してくれるはずなので、そこはあまり問題ではないと思う。

問題なのはシラー様の女性関係だ。

音楽に乗せて、少し体を揺らしながらシラー様に何気なく尋ねてみる。

「シラー様の初恋は終わりました?」

アラリア様は別の男性を好きになったようだし、シラー様も観念なさいませ。

「いいや。継続中だ。」

私に額をあて、見つめながら宣戦布告されました。

堂々と浮気発言するなんて!まあ、そこも素敵なのだけれど。

「マリーは?」

そんなこと聞かなくても分かっているくせに。

シラー様の目を見つめて言う。

「継続中ですわ。」


シラー様と踊るダンスは上手い上手くないで分類されるものではなく

ただ単に楽しい、嬉しい、もっと踊りたい、そう思わせてくれる。

間近でおしゃべり出来るのもいいわ。

シラー様もそう思ってくれてたらいいのに。

「楽しいですか?」

つい聞いてしまった。

シラー様はにやりと笑い。

「マリーが浮気をしなければ、いつでも楽しい。」

なんてことを言うのですか。

浮気をしているのはシラー様のほうでしょう。

頬を膨らませると、そのほっぺにシラー様がキスをしてきた。

不意打ちのキスに頬を赤くさせていると、シラー様がふわりと笑う。

やられました・・。

やっぱり、シラー様は素敵です。

私、負けません。この初恋を必ず実らせますから覚悟なさいませ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きがよみたい! ひきこまれました。 お父さんが今までにいない感じのおちゃめな感じもよかったです!
[良い点] 凄く良かったです。 可愛いのに天然。しかも無駄に頑張っているところが いいですね。 続きを希望します!
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