序章【1】
※この作品は、作者の処女作です。
そのため、文章が読みづらい、内容の矛盾、誤字脱字があるかもしれません。
歴史上の人物のキャラは、銀魂と薄桜鬼と作者のイメージを参考にしています。
誹謗中傷ご遠慮願います……。
――20××年、平成
「ひぃ、ひぃ……ふぅ」
汗の臭いと熱気が充満する道場に、乱れた呼吸だけが聞こえる。
窓から差し込む茜色の夕日が、床に二つの陰を描く。
そんな中、凄まじい程の殺気を放つ者がいた。
艶やかな黒髪を一つに束ねた誇り高き剣道部の女部長、東雲悠希。
涼しげな中性的な顔立ちは、男だけではなく女までも惹きつけるほどの美しさだった。
しかし、今、その顔は夕暮れのせいかわからないが鬼に見えてしまうだろう。
「――早く仕掛けてこないか。私を馬鹿にしてんのか!?」
変わらぬ状況に耐えきれなくなった悠希は、正面で構えている新米部員の西野風を怒鳴りつける。
「ひぃ! すいませんっ、そんなつもりはないですぅ~!」
恐ろしい部長の怒号に、肩を跳ねらせた。
ぱっちり二重の大きな目を潤ませ、頬を赤くさせている。
心なしか竹刀の切っ先が震えている。
そんな彼女からは、守りたくなってしまう気持ちにさせてしまうだろう。
しかし、それが悠希を益々苛立たせるのであった。
「風! そんなんだから、女は男に舐められるんだ! 闘え。さぁ、私を斬れ!」
「悠希先輩から一本取るなんて、無理ですっ!」
「何故!? 何故やる前から、諦めるのだ!?」
顔を顰めて問いかけながらも、悠希は全くと言って隙を作らない。
「全国大会の優勝常連の悠希先輩から、一本取るなんて……、蟻が像を持ち上げるくらい不可能です!」
「馬鹿言うんじゃない! 蟻だってな、努力すれば像だって持ち上げられる」
「蟻とキリギリスじゃないんですからぁ」
いつの間にか、剣道の試合からコントへと変わっているのに気付かない二人は、なかなか構えを解かず言い合うばかりであった。
「……チッ。早く、私を倒すんだぁぁ!!!」
このままでは、埒が明かないと思った悠希は踏み出した。
不意の攻めに、風は目を丸くした。
徐々に自分の脳天に迫ってくる竹刀。防具を付けているが、相手は無敵の優勝者。恐怖からか、風は身を右へ翻した。
「なっ!? ……ならば!」
体を切って、次は空いた脇腹を狙う。
「ひゃっ……」
反射的に、竹刀でそれを受け止める。
重い攻撃に手が痺れ、思わず竹刀を手放してしまった。
「取ったりぃぃ!」
占めたと、意気揚々と竹刀を振り下す。
「――っ!?」
あるはずの手ごたえが返ってこない。
はっと目を見開けば、風の姿は無い。
顔を上げると、そそくさと道場から出ていく背中。
「悠希先輩、お先に失礼します!」
「逃げんな! それでも、剣士か!?」
声を上げても、返事は返ってこない。
……なんて、逃げ足の早い奴だ。
舌打ちをすると、竹刀を持ったまま風の背中を追った。
運動靴を裸足のまま履き、学校内を探し回っていると、制服姿の風と鉢合わせした。
「ゆ、悠希先輩……!」
みるみるうちに、風の顔は青ざめていく。
「よぉ、風ちゃん。私から逃げるたぁ、良い御身……っておい!」
凄む悠希が話し終える前に、颯爽と風は走り出した。
諦めの悪い悠希は、逃がさまいと追いかける。
「もう、先輩しつこいよぉ」
涙目の風は、撒いたかどうか確認のため振り向く。
「ひぃぃぃ!!!」
一瞬にして、背筋が凍りついた。
何故なら、般若が追いかけているからであった。
――逃げろ。
本能がそう警告している。
しかし、このまま走ってばかりじゃ体力が尽きてしまう。
取り敢えず、隠れてこの場を凌ごうと辺りを見渡すと、正面に古そうな蔵があった。
あそこなら、隠れる所がたくさんあるだろう。
風は、蔵へと駆け込んだ。
お手(?)にとってくれて、ありがとうございます^^
こんな糞作品ですが、お付き合い願います。