エピローグ「そして荒野は、約束の地となった」
数年後。
かつて赤茶けた土が広がっていた場所は、今や見渡す限りの緑に覆われていた。
農園を中心に街ができ、多くの人々が笑顔で暮らしている。
ここは「農業都市アーク」。
世界中から美食家と、最強を目指す戦士たちが集まる聖地だ。
街の中央広場には、一人の青年と一匹の狼の銅像が立っている。
台座にはこう刻まれている。
『世界を耕した英雄と、その友』
だが、当の本人はそんな銅像には目もくれず、今日も畑にいた。
「よし、今年のイチゴは過去最高だぞ」
少し大人びた顔立ちになったノアが、真っ赤な宝石のようなイチゴを手に微笑んでいる。
隣には、相変わらず子犬姿のフェン。
そして、書類仕事の合間を縫って駆けつけたシルヴィアや、恰幅の良くなったゴードンの姿もある。
「ノア様、隣国から『枯渇した水源を復活させてほしい』との依頼が」
「西の大森林から、エルフの長老たちが『弟子の弟子にしてくれ』と……」
「あー、はいはい。それは後でね。今は収穫が優先だ」
ノアは困ったように笑い、またクワを握り直す。
その手から溢れる優しい光は、これからもこの大地を、そして世界を豊かにし続けていくだろう。
「さあ、みんな、今日のお昼はイチゴタルトだよ!」
「「「おーっ!!」」」
青空の下、幸せな声が響き渡る。
追放された少年がクワ一本で切り拓いた奇跡の物語は、これからもずっと続いていくのだ。
美味しくて、楽しくて、最高の物語が。




