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黒猫とご主人様の異世界物語  作者: 宮凜猫
一章 運命の街
1/7

プロローグ 黒猫は走る

「──な、何なんですかここはー!?」


 鈴を転がすような可愛らしい声が、ざわめく街の空気を震わせた。石畳を踏み鳴らすヒールの音に、人々の視線が集まる。けれど、少女は気にも留めず、ただ叫ぶ。


「はっ、ご主人様……! ご主人様はどこへ!?」


 焦燥に胸を焼かれながら、少女は駆ける。その姿はまるで、猫のようにしなやかに。


「ご主人様ー! 今、迎えに行きます!」


 これは──黒猫の少女・ココアが、ご主人様の幸せを守るだけの物語。運命の歯車を狂わせる、最初の一歩だった。

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