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第4話 相違

「ユーザさん!」

「生きてたんですか!」

「会いたかったですよ〜!」

ユーザは超常大陸にあるネイション派の怪人の隠れ家に招待され、人間の姿に化けている怪人達から歓迎を受ける。


「覚えてますか?チェラキラです!一緒に団子食べましたよね?」

「え?」

「何惚けた顔してるんですか?イーグレブですよ〜トゲトゲ怪獣に追われた時は大変でしたね!」

「あっそ……」

(ダメだ!何も分からん!)


「お前ら離れろ!事情を話す。」

ネイションが怪人を退けユーザ達の事情を説明する。

「え……じゃあ本物のユーザさんは……」

怪人の1人が呟く。

「分からない。」

ネイションがキッパリと言い張る。その場の空気は沈黙に包まれ、ユーザは何となく居心地の悪さを感じた。

(まぁ……オレも本物なんだけどな………)

何とか心の中でおどけてみるが効果はさほどなかった。


そんな最中拠点の近くで爆発音が怒る。

「何だ!?またあの付喪神?」

ユーザがネイションに尋ねるが首を横に振る。

「いや、拠点がバレてるって事はおそらくキンガルイスの回しもんの可能性もあるな。お前ら、行くぞ!」

ネイションが怪人達に呼びかけると怪人達は皆姿を変え人間態から本来の怪人の姿に変化した。


「そ、そんな……」

隠れ家を飛び出した怪人達は目の前の圧倒的な物量を前に呆気に取られる。先程とは比べ物にならない数の兵士が武器の付喪神を持って構えていたのだ。

「何だよコレ……」

遅れて後からやって来たユーザもその数に一瞬息が詰まった。


「ネイション……」

ユーザは横にいるネイションに声を掛ける。

「何だ?」

「あの人達が持ってる武器も……着てる服も……全部…付喪神なのか?」

「…………そうだ。」

ユーザは自分がは今更ながらやっと自分が別世界に来た事を思い知らされた。


高圧的かつ侮蔑的な視線で険悪な雰囲気を惑わせる付喪神。骨と皮だけ、目も虚ろな状態なのにも関わらず着衣している服は不釣り合いに高品質な繊維で織られ、装飾品も煌びやかな人間達。記憶を失った後に出会い見てきた付喪神と人間の関係性が一切通用しない事が嫌でも分からされる。そんな状況にユーザは息が苦しくなり、体が震えてくる。


「大丈夫か?嫌なら戻ってもいいぞ?」

ネイションは過去にユーザと共に過ごしていた経験からユーザの細かな表情変化による感情の起伏をある程度読み取れるようになっていた。なので、今の彼がとても今の状況を苦々しく思っているを感じ取っていた。


なので気遣う言葉を掛けたのだが、

「ネイション、ここを生きているお前には悪いかもだがオレはこの世界が心底嫌いだ。断言出来る。」

「それは分かるぞ。だから……だから……!もう下がって」

「変える。」

「は?」

ユーザは前方にいた怪人を掻き分け先頭に出る。予想だにしなかった行動をとったのでつい間抜けな声がネイションの口から漏れる。


「嫌だからこそ………変えるんだ!」

そう言いながらユーザは眼前に写る兵士に駆け寄り、構えていた槍の付喪神を力任せに取り上げる。簡単に付喪神は引き剥がされ兵士は衝撃で尻餅をついてしまう。


喚き散らかす付喪神を無視してユーザは呼びかける。

「怪人の皆!オレが今やったように怪人と付喪神を引き剥がすんだ!」

そう言いながら次々と武器の付喪神を兵士の腕から取って行きその場に置いていった。


「しばくぞゴラァ!」

「テメェ触んじゃねーよ!」

付喪神の怒声が響く中全く手を緩めずやっていた。ネイションはその姿を見て

「フッ……変わらないな。」

と呟き今のユーザと裏切ってしまったかつての仲間を重ね合わせる。とても笑っているつもりなのに涙が溢れて止まらない。そんな表情を包み隠す事なくユーザに協力する。


「おいネイション!怪人達の教育はどうなってんだ?お前しか手伝ってないぞ!」

口を尖らせながらユーザは不満を言う。

「オレが動いた以上自ずと彼らも動く。少しは待ってろせっかちめ。」

ネイションはわざと、精一杯で思いついた憎まれ口風の返しをした。するとユーザが顔を背ける。

「あぁ…!すま….…ごめんなさい。」

ネイションが本気で謝ると


「いやぁお前のさ、その涙に濡れた顔。慣れなくて笑っちまうわ!耐えらんねぇ!」

そう言いながら頬を風船の様に膨らまして笑いを堪えるユーザはものすごく腹の立つ顔をしていた。今までネイションはこんな顔は見たことの無い表情だった。

彼が別世界の自分とどの様に接していたのかは分からない。ただ目の前にいる男は自分の知らない人物である事は確実だ。


そう再認識させられると同時にユーザを失った事で出来た心の溝を彼で穴埋めしようとしたら自分に大きな自己嫌悪を抱く。


やがて、怪人達も2人に協力した。


ウォータス──


「逃げろぉ!破壊者が来たぞーっ!」

鐘の付喪神が他の仲間達に告げる。外にいた付喪神は奴隷として扱っている人間に指示を出し、早急に帰り支度を始めたが

「ギャァ!」

「グアァア!!」

「グゴォ!」

モタモタしている内に次々と付喪神が破壊されていった。

「相変わらず手応え無いなー。もっと壊れないのないのー?」

剣を引きずり腰まで伸びた藤色の髪が目につくチェンジャーは付喪神破壊を趣味にしている放浪人だった。


「破壊者めぇ……!」

「キミはどうかなー?」

チェンジャーは逃げ遅れたランプの付喪神を手に取るなり一瞬で握り潰してしまった。

「壊れたー。」

そう言い残しまたトボトボと歩き始める。その時突如

「!」

真上から幾多もの何かが飛んできた。チェンジャーはそれを剣で弾きながら後退りする。


「何なんだー?ん、これは……」

チェンジャーは弾いた物の残骸を拾う。

「コレ………骨ー?」

落ちていたのはさまざまな種類の昆虫の肉を丸めて固めたものだった。チェンジャーはそれを真上に投げると口でキャッチしバリボリと噛み砕く。その間ずっと銃撃を受けていたがそれを剣で受け止めていた。


「拾い食いとは………やはりサルはどこまで行ってもサルなのですね。」

「クランボ、そんなひどいこと言うなよ?アイツ、人間の中じゃまぁまぁ強いぞ。」

昆虫弾を発車していた人物が何かと会話しながらついに口を開く。

「ひゃあー驚いたー!怪人と付喪神がグルだなんてー。」

チェンジャーの言う通り、相手は饒舌ながら怪人だった。右手に棍棒か握られていた。


「キンガルイス様が要注意人物に選ぶのも分かるな。オレと会って一分間ノーダメの人間なんて初めてだ。骨のありそうなヤツだぞクランボ!」

舌なめずりをしながら熊の怪人はクランボに話し掛ける。

「リグス様も悪趣味な事で。私は人間というニホンアジサルの良さが一切分かりません。動物園では子供の付喪神に特に人気のようですが、昔から理解しがたかったですね。」

散々な物言いでクランボは言う。


チェンジャーは欠伸をしながら問い掛ける。

「あのさぁーボク長い話ニガテなんだよねー。殺していいー?」

「この程度の会話時間が長い?やはり殺してしまいましょう!」

「その為に来たんだけどな。せっかく骨のあるヤツを見つけられたのに残念!」


リグスとチェンジャーは互いの武器をぶつけ合った。

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