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逆から一休さん

作者: 西 彼方

逆からシリーズ第三弾


一休さん編

エピソード1

一休が托鉢から帰ろうとすると、橋の向こうに人だかりが出来ていた。

一休『何かあったのかな。』と様子を伺っていると、見知った顔が、

新右衛門『一休さん、いいところに困ってるので助けてください。』

一休『新右衛門さんじゃないですか。どうしたんですか。何て言ったんですか。聞こえないのでそっちに行きますね。』

新右衛門『一休さん、ダメです。こっちに来ないでください。』と制止する素振りを見せたが、一休さんは橋を渡って、新右衛門さんのところに来てしまった。

一休『どうしたんですか?』

新右衛門『どうして渡ったんですか。ダメみたいですよ。この看板を見てください。』

一休『えーと、“このはしわたるべからず“ですか。』

新右衛門『そうですよ。渡ったらダメなんですよ。』

一休さんはしばらく考えると、

一休『私は、この看板を見なかったので渡ることができました。だから、こうすればいいんです。はっ!』と言って看板に蹴りを入れて川に落としてしまった。

一休『これで問題ありません。今日もトンチで解決です。では、寺に戻らなくては。』

新右衛門【一休さん、それってトンチ?】


桔梗屋『どうして、こっちにも看板を立てなかったんだ。』と番頭に文句を言った。

番頭『まさか、こちらにいるとは思わなかったので。』

桔梗屋『またしても一休さんのトンチにやられてしまった。』

番頭【トンチじゃないでしょ】と言いたかったが、言えるわけがなかった。




エピソード2

一休『うーん、和尚さんの水あめ美味しいなあ。毒とか言ってたけど、私の目は誤魔化すことはできませんからね。…と、もう半分になっちゃった。さすがに食べすぎたかな。どうしよう。そうだ、秀念さ~ん、来てくださ~い。』

秀念『どうしたんだ、一休!な、なにを、それは子供には毒なんだぞ。』

一休『もう、和尚さんの戯言を信じてるんですか。そんなんじゃいつまで経っても弥生さんに相手にされませんよ。』

秀念『余計なお世話だ』一休の頭を叩いた。

一休『イタタタタ。これは水あめと言ってとても美味しい食べ物なんですよ。みんなで食べようと思って呼んだのに…。』

秀念『本当か。どれどれ………美味い!』

陳念『私にもくださいよ~。…美味い!もっと食べたい。』

他の小坊主たちも食べると、水あめは無くなってしまった。

一休【これでみんな共犯者】

秀念『一休、和尚さんに怒られないかなあ。』

一休『もちろん、間違いなく怒られますよ。和尚さんが大事にしていた水あめがすっからかんなんですから。』

陳念『そんな~。どうしたらいいんだよ。』

秀念『一休、何か考えがあるんだろうな。』

一休『慌てない慌てない。みんな、こっちに行きましょう。』

連れて行ったのは和尚さんの部屋

秀念『和尚さんの部屋を綺麗にしてご機嫌を取ろうというのか。』

一休は、和尚さんが大事にしている壺を持ち上げ『やあ!』と投げた。壺は割れた。

陳念『…一休?』

一休『気持ちいい。みんなもやってみたら?スッキリするよ。それ!』今度は掛け軸を破った。

秀念【一休、気が触れたか】『もうどうにでもなれ!』襖を破った。これを皮切りに小坊主たちは部屋にあるものを次から次へと壊していった。

一休『もう壊すものがありませんね。それじゃあ、和尚さんが帰ってくるまでのんびりしましょう。』


和尚さん『なんじゃ、どうしたんじゃ。』部屋の惨状に驚いた。

一休『和尚さんだけに毒を飲ませてはいけないと思い、みんなで水あ…じゃなくて、毒を舐めたんです。でも思いのほか美味しくて全部食べてしまったんです。これだけ食べてしまっては死ぬだろうと思い、どうせ死ぬなら最後は思いっきり波目を外そうと壺を割ったりして、気分をすっきりさせたんですが、なかなか死ねなくて困ってるんです。』

他の小坊主たちが頷く。

和尚さん『………はあ。一休よ。あれは実は毒ではないのだよ。わしが嘘をついて悪かった。もうよい。ここを掃除したら下がっていいぞ。嘘の代償は高くついたわい。』

和尚さん『一休、お前は一休よの?大事な壺を割ったから毒と言われたものを食べて死のうとしたわけではないんじゃな。』

一休『そんな考えもあるんですね。さすが和尚さん。』

和尚さん『………。』【一休よ。トンチなのか?何か微妙に違う気がするのお。】




エピソード3

義満『よく来た、一休よ。』

一休『将軍様、私のような小坊主にどのようなご用件でしょうか。』

義満『うむ、ちと困っていてな。一休の知恵を拝借したいのじゃ。』

一休『私の知恵ですか。トンチでしょうか。』

義満『まあ、そうじゃ。実は、この屏風を見てくれ。』

一休『?』

義満『ここには虎の絵が描かれてあったんだが、ほれ、虎が屏風から出てきてしまってな。屏風に戻してほしいのじゃ。』

義満『さあ、虎を連れてくるんじゃ。』紐につながれて数人で押さえつけている虎が現れた。

新右衛門『上様?屏風の絵の虎ではなくて本物の虎を?いくら何でもそんな無茶苦茶な…。』

義満『さあ、どうじゃ、一休。降参すれば許してやるぞ。』

一休は、考えた。そして閃いた。

一休『私に不可能という文字はありません。私のトンチの真髄をお見せいたしましょう。新右衛門さん、小刀をお借りします。』

新右衛門『え?わ、分かりました。どうぞ。』

一休『虎をしっかり押さえ付けていてください。行きます。うおりゃ~!』と虎に斬りかかった。

虎『ガ~!グワーッ』斬られた虎が暴れて立ち上がったところを小刀で虎の胸から腹を切り裂いた。

断末魔の叫びをあげて絶命する虎、辺り一面が赤色に染まった。

義満『い、い、一休?な、何をしておる。坊主が殺生なんて…。』

新右衛門『い、一休さん?』

一休『殺生ではありません。屏風の絵の虎ですから。』と全身返り血を浴びて真っ赤になってニヤリと笑った。

一休『さあ、トンチの総仕上げです。』そう言うと、皮を剥いで、それを屏風に掛けたのだった。

一休『どうでしょう。何とか屏風に戻りました。もう出てくることもないでしょう。将軍様、どうされましたか。』

義満『よ、寄るでない。もうよい、下がれ。』赤色の一休が怖くて仕方がなかった。

一休『では、失礼します。』

義満『新右衛門、あの屏風をどこかに持っていってくれ。』

その後、しばらく足利義満は悪夢にうなされたのであった。


『すきすきすきすき すき すき あいしてる

 すきすきすきすき すき すき いっきゅうさん

 とんちはあざやかだよ いっきゅうひん

 どきょうはまんてんだよ いっきゅうひん

 いたずらきびしく いっきゅうひん

※しょせんはけんかも とんちでかいけつだよ いっきゅうひん』

と一休は歌いながらお寺に帰っていったのだった。

道中、返り血を浴びた一休を見て腰を抜かす人々が続出したのは言うまでもなかった。

もちろん、お寺に帰る前に川で洗ってできるだけ綺麗にしてから戻ったのも言うまでもないだろう。




逆からでもトンチ?が冴えわたる一休さんでした。



おしまい。


気が向いたら投稿しますが、あまり需要がないかな。

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