表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者魔王短編作品

熱い実況で送る勇者魔王決戦!

 場所は魔王城・魔王の間。

 時刻はまもなく午後8時を回ろうとしております。

 ついに勇者と魔王、長年続く両者の因縁に決着がつく時がやって参りました。


 果たして生き残るのは勇者か、それとも魔王か!?



 青い石扉を開いて――ここはあえて青コーナーといたしましょう。

 青コーナーから現れたのは、勇者だァ!!!

 身長180cm! 体重78kg!

 最強ホモサピエンス! 数々の武勇を打ち立てた奇跡の若者が今、魔王の喉元に喰らいつこうとしているのであります!



 対しまして血塗られた赤い玉座――赤コーナーに君臨するのは魔王だァ!!!

 身長220cm! 体重200kg!

 黒いマントを羽織ったその姿は威厳ムンムン! 魔族の首領ドンが今まさに勇者を殲滅せんと、その重い腰を上げたのであります!



 ――おっとぉ!?

 両者睨み合っております!

 魔王城はいつ爆発してもおかしくない火薬庫と化しております!

 両者の闘気・殺気・覇気その他諸々が渦巻く気のバーゲンセール開催中! 持ってけドロボー! 出血大サービスだァ!



 おおっ……魔王が歩み出た!



「よくここまで来たな勇者よ。褒美に地獄に送ってやろう!」



 なんという褒美でありましょうかァ! こんな褒美は死んでも受け取りたくはない! これが魔王だ! これぞ魔王だ! 無数の屍を積み重ね、群雄割拠の魔界に君臨した帝王だからこそ吐ける台詞でありましょう!



「魔王……必ずお前を倒し、世界と姫を救ってみせる!」



 勇者も負けておりません! 高らかに世界と姫を救ってみせると宣言いたしました! 俺は二兎を追ってみせる宣言! これだから彼は勇者と呼ばれるのです! 魔王に負けていない……全く負けてはいないぞ!



 ゴングは設置されておりませんので、私が言いましょう! カァァァァン!!!

 さあ、始まったァ!



 勇者は勇ましく剣を相手に向ける、竜牙の構え! 一流の剣客のみ使いこなせるという超攻撃的構えであります!

 一方、魔王はなんの構えも取っていない! これは策略? いや、余裕の表れかァ!



「行くぞッ!」



 勇者が駆け出し、魔王に斬りかかったァ!

 魔王の黒衣をわずかに切り裂いたのみ!

 おっと魔王の反撃ィ! 鋭い爪が勇者に襲い掛かるッ! 名づけるならデスクローといったところか! ――が、勇者もこれをかわすゥ!

 両者一度間合いを取った!

 ファーストコンタクトは互角といったところ! なんという攻防でしょうか!



「せあああっ!」



 勇者、攻める、攻める、攻めるゥ! 得意の十連斬で、魔王を追い込んでいきます! 魔王、一気に壁際に追い込まれたァ! これは万事休すか!? 魔界政権交代かァ!?



「甘いわ」



 ここで魔王、灼熱の炎を吐き出したァ!

 赤ではなく青! 一見涼し気に見えますが、赤い炎よりも温度は上! 浴びれば全身黒焦げウェルダンは必然であります!



「――いない!?」



 勇者がおりません! 哀れ人間ステーキになったと思われた勇者、忽然と姿を消したァ!

 こんな非常時にも一流マジシャンにも勝る勇者イリュージョンを見せてくれるとはァ!



「ぬっ、上か!」



 勇者、跳躍で炎をかわしていたァ! 3メートルは跳んでいるぞ! 遥か遠い異国に存在すると言われる“天狗”なる魔物を思わせる身のこなし! 重い使命を背負ってはいるが、身は軽い!



「だあああああっ!!!」



 勇者の袈裟切りが魔王に炸裂ゥ! 会心の一撃といっていいでしょう! 魔王にとっては痛恨! これは勝負あったか――!?



 いや……魔王は生きています! それどころか立ち上がり、まだまだ余裕といった表情を見せている! この男は不死身なのかァ!?



「フフフ……見せてやろう。我が真の姿を!」



 魔王、豪快に黒衣を脱ぎ捨てました!

 ストリッパーよりも鮮やかな脱ぎっぷりであります!



 するとなんだこれは!?

 魔王の正体は鬼と竜が融合したような禍々しいバケモノだったァ! 邪悪の二文字を生き物にすると、丁度こんな感じになるぞといった具合のド迫力であります!

 これが我の第二形態、ここからが本番と言わんばかりに笑っております!



 魔王が動いた!

 なんというスピード! あっと勇者吹っ飛んだ! 何をしたかまるで見えませんでした!

 多くの人々を泣かせてきた魔王は、やはり実況泣かせでもありましたァ!



 邪悪の化身と化した魔王の猛ラッシュ!

 勇者も懸命に反撃するが、焼け石にウォーター! このまま敗れ去ってしまうのか!?



「これで……終わりだ!」



 倒れた勇者を、魔王踏みつけるゥ! 無慈悲なストンピング! このまま万力のように勇者の頭を踏み砕くつもりでしょうか!?

 勇者の頭蓋骨はメキメキと音を立て風前の灯火であります! 出来上がるのは脳みそのスクランブルエッグ! なんという残虐クッキングでありましょうか!



 このまま終わっていいのか!? なんとか立ち上がって欲しい! 頑張れ、頑張れ勇者!



「ぐ……うおおおおっ!!!」


「な、なにっ!?」



 勇者立ったァ! カウント2.9で立ち上がりました!

 オオッ!? 勇者の体が光り輝いております! これは一体なんなのでありましょうか!? 眩しい! 太陽が現れたかのような輝き!

 時刻はもう夜ですが、掟破りの夜太陽であります!



「俺はずっと心の底でお前を恐れてた……だが、やっとお前と戦う勇気が生まれた!」



 この光の正体は勇気! ほんの僅かに残っていた恐れを振り切り、100%の勇気を発揮したのであります! 100%勇気であります!



「行くぞォォォォォッ!」


「来るがいい……!」



 勇者の勇気と魔王の邪気がぶつかり合う!

 白と黒!

 正と邪!

 光と闇!

 生と死!

 正義と悪!

 天使と悪魔!

 泥棒とおまわりさん!

 これらが混ざり合い、混沌こんとんが形作られていく!

 そう、混沌カオス! カオスであります! このカオス対決を制するのは一体どっちだァ!?



 勇者が全ての闘気を剣に託したァ! さらに光り輝く! これはもはや太陽ではない! 超新星の産声でありましょうか!



 魔王は暗黒の魔力を体に纏っている! 魔王の周囲だけ真夜中! 局地的ミッドナイトであります!



「だああああああっ!!!」


「滅べぇぇぇぇぇっ!!!」




 激突だァァァァァッ!!!




……




……




 ――こ、これは!



 勇者の剣が魔王の体を真っ二つにしているゥゥゥゥゥ!!!

 魔王の右半身と左半身が永遠の別れを告げたのであります! 右と左の遠距離恋愛! なんという……なんという悲恋でありましょうか!



「バ、バカな……」



 あんな状態でも喋っている! とてつもない根性であります! ド根性魔王!



「勇者よ……よくぞ我を倒した……。しかし……覚えておくがよい……。人がある限り、その心には闇が生まれる……その闇こそが我ら魔族の糧、なの、だと……」



 カンカンカンカンカァーンッ!!!

 試合開始から45分32秒、魔王が消滅したァ!!!



 最後のマイクパフォーマンスは、負け惜しみとも戒めとも取れる言葉でありました!



 ですがその通りです! 魔王を復活させないためにも、人類は生まれ変わらなければならないのです! 勝利はしましたが多くの課題が残される結末となりました!

 さあ、あとは最後のイベントを残すのみ!

 フィナーレを決めろ、勇者!



「姫……!」



 一目散に姫の元へ向かう勇者!

 その胸の内にあるのは果たして愛か! それとも性欲か!?

 性欲だとしても姫がそれを拒むことはないでしょう! なにしろ勇者にはそれだけの功績があり、それだけの男なのですから!

 むしろ性欲カモン! 煩悩の何が悪い! でありましょう!



「姫、途中の頑張れって言葉が効いたよ。あれで魔王への恐れがなくなった! ……ありがとう!」



 なんのこれしき! よくやった勇者! まさに君こそ世界の救世主でありましょう!

 その偉業は天にも届き、永久に語り継がれていくに違いありません! 世界史の教科書掲載は確約だァ!



 おっとそろそろ実況を切り上げたいと思います!



 魔王城という名のリングを後にする勇者! 私は文字通りお姫様抱っこをされ、勇者に運ばれていきます!

 今まさに感動のエンディングの幕開けであります!!!






楽しんで頂けたら感想等頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴールデンタイムにプロレスが放送されていた時代が懐かしいですね。
[一言] 途中の時点で「所で実況者は誰だよ……」と思ったらまさかの姫、魔王も勇者も横で大声で実況する姫をよくスルー出来たものだ……w
[一言] ……書き忘れました。 実況をしていた人の正体に、大変驚きました(°Д°) そして内容を最初から読み返すと……。 大爆笑www 姫よ、ギャグセンス高過ぎ。 姫よ、実況している場合か? 姫…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ