来客、再び6
「雨さんにもバレちゃってますかね?」
問われて菊子は、うーむ、と考えた後「さあ」と答える。
柚李さんの子の様子じゃあ多分バレてると思うけど、どうだろう。
何とも言えない気持の菊子。
「実は、私の気持ち、母にはバレまして。雨さんの所に母に代わって何かとお裾分けに行きたがる私を見て気が付いたみたいで、母の方から私に雨さんに好意があるのか訊ねて来ました。私が雨さんに好意があるのを知ると、母は喜びました。母は雨さんの事を気に入っていますから。母は少々強引な人で、実は雨さんに私とのお見合い話を持って行ったんです。父には黙って……」
「ええっ?」
目が飛び出しそうになる菊子。
「お見合い話を? 目黒さんに? それはそれは。何と言うか、急に、そんな」
娘に好きな人がいるからといっていきなりその相手にお見合いの話を持って行くだなんて、中山夫人はかなり大胆な人だ。
「はい。こうは言いたくは無いんですが、雨さんの生活は豊かですから。だから母は雨さんを……」
「なるほど」
金持ちの男に任せれば娘も安泰、という訳か。
菊子の脳裏を中山夫人の顔が掠める。
元々お金持ちだし、結婚して娘のランクが落ちるような事になるのは……親として複雑なものなのかしら?
その分じゃ、目黒さんなら間違いないわ。
親の気持ちはまだまだ菊子には計り知れない。
何をしても子供に幸せになって欲しいと考える親もいれば本人任せの親もいる。
はて?
自分の親はどうだろうか?
菊子が思いを巡らせているうちに柚李の話は続けられた。
「でも、父は私と雨さんが親しくするのは大反対でして。父は母づてに私が雨さんに好意がある事を聞いていまして。父はあんなギャンブルで成り上がった様な男、とんでもないって言いだして」
「あー、なるほど」
雨が金持ちであるのは宝くじの高額当選連続というラッキーが続いた為、と言える。
宝くじもギャンブルだとしたら確かに、だが。
硬派なお父様なのかしら。
こっそりと思う菊子。
「それに……」柚李は続ける。
「それに?」
「雨さん、足が、その……」
話を聞いて菊子の頭の中に車椅子に乗った雨の姿がはっきりと映る。
「だから、私が苦労するんじゃないかって、父は……」
「ああ……」
菊子の顔は真顔だった。
「でも、私、そんな事、ちっとも気にならないんです! 兎に角、私、雨さんに惹かれるんです! この気持ちを自分でもどうにもできないんです! 雨さんのお金に興味はありません! 私は雨さんご自身に、とても惹かれているんです!」
雨がまだ玄関扉の前にいるにも関わらず柚李の出した声は大きかった。
柚李は少し興奮している様だった。




