来客、再び5
「あの、柚李さん、せっかく来て頂いたのに申し訳無いのですが、今、来客が来ていまして。また今度、ゆっくりお礼せて頂ます」
雨がそう言うと柚李は一瞬曇った顔をした。
しかし、直ぐに笑顔を作り、「じゃあ、お客様を待たせているんですね。いけないわ。タイミングが悪い時に来てしまいました。あの、お礼だなんてお気になさらないで下さい」と話す。
「いえいえ、そういう訳にも行きませんよ。頂きっぱなしなので、今度お礼に伺います」
その雨の台詞を聞いて柚李は嬉しそうに「本当、お気遣いなく」と言う。
そういう割には嬉しそうな柚李に菊子は、分かりやすい人だな、と思う。
「では、あの、失礼します」
名残惜し気な柚李。
柚李はずっと雨を見ていて菊子はスルーだ。
「はい。ありがとうございました」
頭を柚李に下げる雨。
菊子も柚李に相手にされてないと知りつつ続いて頭を下げた。
柚李の方も丁寧に二人に頭を下げる。
「菊子、柚李さんを門までお送りして」
雨に言われて、「はい」と菊子は柚李の前に出ていそいそと門を開けに行った。
やれやれ。
心の中で一息つく菊子。
やっと柚李から解放されるかと思うと清々しい思いの菊子だった。
菊子の後に付いて来ていた柚李が開かれた門の外に出る。
門の外で柚李が立ち止まり、菊子の顔を見る。
菊子は、うん? と柚李を見た。
「あの、野宮さん、本当に色々と失礼を致しました」
柚李が頭を下げる。
菊子は僅かな苦笑いをして、「あ、大丈夫ですから」と両手を振った。
頭を上げた柚李は、「ありがとうごさいます。あの……」と言う。
あの?
何事? と頭を傾げる菊子。
「あの、野宮さん、失礼ですけど野宮さんにとって雨さんって本当にただのお友達何でしょうか?」
眉を寄せながらそう訊く柚李。
菊子は頭を掻いた。
ずばり訊いて来たな。
まぁ、遠回しに探られるよりは良いけど。
「あの、中山さん……いえ、柚李さん、で良いかしら?」
「え、はい」
「あなた、目黒さんの事が好きでしょ」
「えっ!」
思いっきり動揺を見せる柚李。
「な、何で?」
柚李の台詞に菊子はため息をつき、「そりゃ、分かるわよ。だだ洩れでしたよ」と言う。
柚李は目頭を押さえ、「うわぁ」と声を漏らす。
「だだ洩れでしたか」
「はい」
「そうですか」
「そうです」
「そうかぁ」
柚李は天を仰ぐ。
朝の空。
のんびりと白い雲が浮いていた。
鳥が一羽、真っ直ぐに、空を過る。
ビィッと言う鳴き声を残して鳥は去って行く。
見ていると本当に気持ちの良いくらいの空模様だ。




