来客、再び4
痛い役回りを演じ、海へと走り出したい様な恥ずかしさに襲われる菊子。
そうと知ってか知らずか、「そりゃあ、菊子が困っていたら見捨てたり出来ないよ。菊子は大事だからね」と、キザな台詞を平気な顔で雨は言う。
しかし、そんな台詞も違和感なく吐けるのが雨だった。
「大事?」
雨の台詞に柚李がびくりと反応する。
柚李の様子に菊子は背筋に寒いものを感じる。
菊子の口から、「いやーっ、友達として大事って事ですね。ありがとうございます」と早口が漏れる。
菊子の言葉に、ほっとした顔をする柚李。
「雨さんは優しいから、お友達は大事にされますよね」
笑顔で言う柚李に菊子は、ははっ、と笑い掛ける。
「そうそう。目黒さんは親切ですから。あの、柚李さん、仲良くお願いします。柚李さんさえ良かったらお友達になりたいわ。あはっ」
菊子は柚李に手を差し出していた。
内心、何をやってるんだと思いながら……。
柚李は差し出された菊子の手を驚いた顔で見ていたが「雨さんのお友達なら私も是非、お友達になりたいです。よろしくお願いします」と笑顔で菊子の手を強く握った。
ちょ、痛い!
何?
ていうか、雨さんのお友達なら、の所、めちゃ強調してなかった?
この人何?
考えて、はっと閃く。
この人、目黒さんに絶対好意を抱いてる。
女の感がビビッと来てるわ。
って事は何?
私、微妙に牽制されてる?
柚李に強く握られている手を急に心地悪く感じる菊子。
目黒さんは柚李さんの気持ちを知っているの?
ちらりと雨を見る菊子。
雨は涼しい顔をして菊子達を見ている。
よ、読めない男だ。
菊子は、お前はいいよな、と雨を睨らむ。
雨は、はぁ? という顔で菊子を見た。
菊子は、ふんっ、と雨から目を逸らし、「あの、そろそろ手……」と柚李に言った。
菊子の手は未だ柚李に握られ続けていた。
柚李は、「ああ、すみません」と直ぐに手を離した。
強く握られていた手からの開放感でさっぱりした菊子。
見れば菊子の手は少し赤くなっていた。
心の悲鳴が収まらない菊子だ。
この人を敵に回してはいけない、と菊子は肝に銘じる。
菊子は目の前で微笑んでいる女に震えるのだった。
「いやぁ、菊子も新しい友達が出来て良かったな」
満面の笑顔の雨。
「そ、そうね」
作り笑顔を浮かべて菊子は言う。
思いっきり仮面友達ですよ、目黒さん。
菊子は心の中で雨に突っ込みを入れる。




