何故にこうなりました?2
菊子は目を丸くしてクロエを見る。
クロエはバツが悪そうに横目で菊子を見て「紅茶が、その……少し冷めてる気がして」と言う。
「えっ!」
菊子の視線が瞬時に紅茶に注がれる。
雨や日向も自分が持っているカップに目を落としている。
「そうかな? 俺はそんな風には感じなかったけど」と言った後、雨は紅茶を飲んで、「うーむ」と眉間に皺を寄せた。
それを、はらはらと菊子は見守る。
「うーん。分からないな」
困った顔で雨は言った。
クロエはしゅんとする。
「ご、ごめんなさい。気のせいかも知れないね。家で飲む紅茶とは違うし、そんな気がしただけかも」
クロエがそう言うと、日向が神妙な顔で紅茶を一口飲んだ。
「いや、言われてみれば少しぬるいかも。家政婦、戻って来るのが少し遅かったし、紅茶を入れた後、油でも売ってたんじゃないのか?」
日向の細い目が菊子に向けられる。
「そんな、私、油なんか……」
売ってました……。
部屋の前でお盆を持ちつつ立ち聞きしてました。
その間に紅茶が冷めたのかしら?
けど、そんなに長い時間じゃなかったはず。
いや、と、兎に角!
「申し訳ありません。紅茶、入れ直してきます」
頭を下げる菊子に雨が、「いや、大丈夫だよ。皆んなが言うほどの事じゃないさ。俺は大丈夫だったよ」と、にこりとする。
雨の周りにお花畑でも見えそうな笑顔だ。
そんな雨を見た日向が、「ま、まあ、入れ直すとか面倒だし、別に俺も良いよ」と頭を掻きながら菊子に言う。
クロエは、「き、気のせいかも知れないし、私も別に入れ直して欲しいとかじゃあ!」と雨に向かって必死に言った。
雨はクロエに頷く。
「うん、分かってるよ、クロエ。菊子、そういう事だから」
「目黒さん……皆さん、ありがとうございます。これからは気を付けます」
菊子は頭を下げる。
「さ、お茶を続けようか」
手を鳴らして、笑顔の雨が言うと菊子の体から力が抜けた。
場の雰囲気が柔らかくなっているのが菊子には分る。
多分、皆んなにも伝わっている。
日向もクロエも明るい顔をしていた。
目黒さんって魔法の様に人の気持ちを明るくする。
そういう所、尊敬できるな。
菊子は雨に視線を向けながら紅茶を飲む。
すると雨と菊子の視線が合った。
何を考えているのか雨はカップに口を付けたまま菊子から視線を逸らさないでいる。
何となく気恥ずかしくなった菊子が雨から目を逸らすと雨は何事も無かったかの様にして紅茶を啜った。
何、今の?
非常に恥ずかしかったんですけど?
菊子は手のひらで、ぱたぱたと火照った自分の顔を仰ぐ。
目黒さん相手に何をやってるのかしら、私は。




