何故にこうなりました?1
菊子はお代わりの紅茶を入れてキッチンから戻り、応接間の扉の前に立っていた。
応接間の中からは弾んだ楽し気なクロエの声が聞こえていた。
随分と楽しそう。
何の話をしているのかしら?
立ち聞き何て悪い、と思いつつも、つい扉の前で耳をすましてしまう菊子。
「それでね、学校の皆んなが言うの。私の事、変わってるって。だから、私、言ったの。皆んなの方が変わってるって。そうしたら、皆んなが私の事を無視する様になって……」
クロエの話を聞いて菊子は、ぎょっとする。
えっ、学校の皆んなから無視って、クロエちゃん、いじめにあってるんじゃあ……。
「それは酷いな。他に何かされてないか?」
日向の声だ。
「ううん。別に何も」
クロエの声。
「何かあったら言うんだぞ」と日向。
「うん!」
嬉しそうなクロエの声。
「あ、なぁ、菊子、遅くないか? 日向、ちょっと様子を見て来てくれないか?」
この雨の台詞を聞いて菊子は急いで扉をノックした。
「菊子? 入れよ」
雨がそう言うと菊子は出来るだけ平静を装って応接間の中へと入った。
「お待たせしました」
そう言ってテーブルに近付き、菊子は次々とテーブルの上にカップを並べていく。
はぁ、いけない、いけない。
盗み聞き何て趣味の悪い事して紅茶を冷ます所だったわ。
紅茶から、まだ白い湯気が出ている事に一安心の菊子。
紅茶を配り終え、ほっとして菊子は「失礼します」とソファーに腰掛ける。
菊子が座ると皆んなが紅茶に手を伸ばした。
菊子もカップを持って紅茶を一口啜る。
うん、さっきより良い感じに入れられたかも。
菊子はひっそりと笑みをこぼす。
菊子は雨の方を見てみる。
雨は笑顔で紅茶を飲んでいる。
良かった。
自分が入れた紅茶を飲んで笑顔を見せている雨の姿に菊子は嬉しさがこみ上げてくる。
雨の笑顔は兎に角菊子を幸せな気持にさせる。
菊子は晴れやかな気分で、もう一口、とカップに口を付ける。
すると、「どうした、クロエ?」と日向の声がした。
え? と菊子がクロエの方を向くと、クロエがカップを持ったまま眉を下げていた。
「クロエ、どうかした?」
雨が心配そうにクロエに声を掛ける。
クロエは更に眉を下げて、「あの、別に……」と言う。
本人はそう言うが明らかに様子がおかしい。
雨はカップを置き「何かあるなら言いな」と優しく言う。
クロエは雨の顔を大きな瞳で見つめた後、ぽつりと「紅茶が……」と言った。
「こ、紅茶?」




