お客様の対応に戸惑う事甚だしい4
ソファーに日向とクロエ、そして車椅子の雨がテーブルを囲み、笑い声を響かせていた。
菊子はテーブルに近付き、三人に紅茶を配る。
テーブルの真ん中にはクロエの持って来たバスケットが開かれて置いてあり、中にはレースを模った白い紙ナプキンの上に載ったプレーンとチョコレート色のマドレーヌが六つあった。
菊子はバスケットの隣に砂糖とミルクピッチャーを置いた。
「では失礼致します」
そう言って三人にお辞儀をして菊子がこの場を去ろうとすると、「ちょっと待った」と雨が菊子に呼び掛けた。
菊子は雨の顔を見る。
「何でしょうか?」
私、何かまずい事でもやらかした?
どきどき、と菊子の胸が鳴る。
「いや、紅茶、菊子も持っておいで。一緒にお茶にしよう」
「は?」
菊子の声は間が抜けた。
その時、クロエの方もぽかりと口を開けていた。
「いや、お客様と一緒にお茶とか、とんでもない!」
この人は本当に何を考えているの?
見ず知らずの相手とお茶を共にしろ、だなんて、どうして思い付くのか、と菊子は雨の思考回路に疑問を抱く。
「お茶は皆んなで飲んだ方が楽しいからね。菊子も一緒の方が俺は嬉しいな」
「そ、そんな事言われても、あの、お客様の方はどうなんでしょう……」
気まずそうな視線を、ちらりとクロエに向ける菊子。
クロエも戸惑い顔だった。
しかし、そんな二人の空気を雨は読んではくれなかった。
「クロエも男ばりを相手にしてたってつまらないよ」
そんな事を雨は言う。
クロエは、「そんな事無い! 雨兄いとひーちゃんと三人でいて、私、凄く楽しいよ!」と躊躇い無く言った。
この台詞を聞いて菊子は思う。
私、完璧邪魔者じゃない。
何とか退散せねば。
「俺もクロエと一緒にいて凄く楽しいよ。それで、菊子とも一緒にいるともっと楽しいんだ。だから二人が嫌じゃな無かったら一緒にお茶しよう。あ、勿論日向も良かったら。どうかな?」
優しい笑みを浮かべて雨は言う。
雨の周りに光でも見えそうな感じだ。
その笑顔に菊子もクロエも、そして日向も、「うっ」と声を漏らす。
「俺は、あにきがそうしたいなら別に……」
日向が小さく呟いた。
「私だって別に」とクロエ。
菊子は内心、マジかよ、と思いつつも、やっぱり雨の極上の笑顔には敵わずに「私も、皆さんがよろしければ」と言っていた。
「じゃあ決まりだ。菊子、自分の分のお茶を持っておいで」
嬉しそうに雨は言う。
その笑顔が憎たらしい菊子なのであった。
応接間にて、菊子も含めた四人でテーブルを囲んでいた。
菊子は空いていたクロエの隣に座っている。




