お客様の対応に戸惑う事甚だしい3
目を輝かせて言う雨の説明に、なるほど、と菊子は頷いた。
そういう事なら雨のクロエに対するあの態度も何となく菊子には理解出来るように思えた。
雨にとっては、クロエは、お隣の可愛いお嬢さんにとどまらず、妹ポジション、と言う訳だ。
「菊子、お茶の用意をしてくれないか? 日向も応接間に呼んで」
そう雨が言うと、クロエが「菊子ぉ?」と可愛らしい顔を強張らせる。
クロエの様子に雨が、「どうしたんだ?」と訊ねる。
クロエは厳しい顔をして「家政婦さんの事、何で名前で呼び捨てて呼んでるのかなと思ったの」と言う。
「ああ。菊子は元々俺の友達なんだ。だから名前で呼んでる」
そう雨が答えた。
「え」
クロエがぽつりと声を上げる。
「さあ、いつまでもこんな所にいないで家の中に入ろう」
そう言って雨は車椅子を動かす。
菊子もお茶絵お入れなくては、と急ぎ足で家の中へと引き返す。
クロエは二人の後に続いたが、彼女の表情が固い事を菊子も雨も気が付かなかった。
菊子が日向にクロエが来た事を告げると日向は喜んだ。
雨と日向、そしてクロエは今、応接間にいる。
菊子は一人、キッチンでお茶の支度をしていた。
雨に紅茶にしてくれと言われていた菊子は大きなティーポットで紅茶を入れていた。
紅茶の出来上がる時間を計るために使っている砂時計をため息交じりに菊子は眺める。
上から下へ青い砂がさらさらと落ちていく。
紅茶なんて真面目に入れた事無いんだけど、大丈夫かしら。
まぁ、緑茶と一緒でしょ。
そう思いながらも菊子はスマートフォンで紅茶の入れ方を一応知識として仕入れておいてから紅茶を入れたのだった。
「そろそろかしら?」
落ち切った砂時計の砂を見て、菊子はお盆に載せてお湯を入れて温めておいた三人分のカップをお盆ごとシンクまで運び、シンクに次々とカップの中のお湯を流していった。
それが終わるとキッチンテーブルへと戻り、
お盆に載ったままのカップに三人分の紅茶をティーポットから注ぎ入れる。
「あ、何か良さ気な香り。色も、まぁ良いみたい。後は砂糖とミルクをそえてっと」
紅茶と紙のスティックに入った砂糖が入れてあるガラスの器、そしてミルクピッチャーの載ったお盆の全容を見下ろした菊子の口角は上がっている。
「よし!」
菊子はお盆を持ち上げてキッチンを出る。
向かうは応接間。
他人のお客様にお茶を出すって何だか緊張するわね。
などと思う内、菊子は応接間の前に辿り着いた。
部屋の中からは楽し気な話し声が漏れて来ている。
菊子は、こつこつと扉を鳴らして部屋の中からの返事を待つ。
「どうぞ」との大きな雨の声に答えて菊子は「失礼します」と部屋の中へと入る。




