お客様の対応に戸惑う事甚だしい2
扉の向こう側に、門の前に立っているロリータファッションの少女が見える。
雨の後ろで彼女を眺める菊子には彼女のロリータ姿がまるでウェディングケーキみたいに映る。
「クロエ、おいで!」
雨がそう呼び掛けると、クロエと言う少女は門を開き、歩きにくそうなピンク色の厚底靴を履いた足で、とことこ、とやって来た。
菊子は息を呑んだ。
間近で見る少女は本当に人形の様に可愛らしかった。
まつ毛が驚くほど長い。
まつ毛の影が白い肌に落ちている。
薄いメイク何ぞして、頬は、ほんのりと赤く、唇にはうっすらとピンク色のリップクリームが塗られていた。
こんな可愛らしいお嬢さんが目黒さんに何用?
菊子の目は少女に釘付けだった。
そんな菊子の事はまるで目に入っていないのか、少女は「雨兄い!」と笑顔で言うと、雨に躊躇いも無くハグをした。
ええーっ!
菊子はこれでもかと言うくらい目を大きく開く。
雨の方はと言うと、「よしよし」何て言って少女の頭を撫でている。
ボンネットが邪魔をして非常にやりにくそうだが。
な、何?
私は何を見せられているの?
少女は高校生くらいに見える。
そんな少女の頭を撫でている雨に菊子は驚きを隠せない。
こんな、孫でも可愛がるみたいに。
一体、この子は目黒さんの何なの?
雨とロリータ少女の周りにハートマークでも見えそうな感じだな、と思いつつ、いちゃつく二人を呆けた様子で菊子は見守った。
「クロエ、今日は突然来たりしてどうしたんだ?」
やっと頭を撫でるのを止めて雨が少女に訊くと、少女は雨から離れて「昨日の夜、マドレーヌを焼いたの。上手く出来たから雨兄いとひーちゃんにも食べさせてあげようと思っって来たんだけど……」と少女は手に持ったバスケットを雨に掲げて見せた。
このバスケットの中にお手製のマドレーヌが入っているのだろう。
「そうか。ありがとう」
雨がにこやかな顔を少女に向ける。
「あの、あの人、新しい……家政婦さん?」
そう言って少女は菊子を指差した。
少女の台詞に雨がやっと菊子の存在に気が付いた様に菊子に視線を向けた。
少女は瞬きを繰り返しながら菊子を見ている。
「ああ。昨日から家で働いてもらってる野宮菊子さんだ」
雨の紹介に菊子は「野宮です」と言って、さらりと頭を下げた。
少女の方は「山下クロエです」と自己紹介をすると、ちょこんと頭を下げてお辞儀をした。
か、可愛い!
菊子の頬が緩む。
「クロエは俺が実家に住んでた時に家が隣同士で。クロエとは、彼女がちっちゃい時からの付き合いなんだ」




