会議2
菊子にはお手頃価格でパンが食べられるだけでそれはもう有難かったものだが。
こんなに美味しいパンで朝ごはん何て嬉しい。
次はもっと上手く切ろう。
菊子の顔は自然と笑顔になっていた。
「皆んなで揃って朝食を食べるのも良いもんだな」
雨が突然そんな事を言う。
「えっ、目黒さんと日向さんは朝ご飯、一緒に食べたりしないんですか?」
菊子が訊ねると雨が「俺も日向も起きる時間がまちまちだから朝食を一緒に食べる事はほとんど無いな」と答える。
「へぇー、そうなんですか」
「意外?」
雨にそう言われて、「ちょっぴり」と言いながら菊子はチョコクロワッサンに手を伸ばした。
「お前、俺が四六時中あにきにへばり付いてるとでも思ったのかよ」
そう日向が口を挟んできた。
いや、正直、そんなイメージしか無いんですけど。
と思いつつも、「とんでもない」と菊子は答える。
「じゃあ、何で意外なんだよ」と日向は言う。
言われて菊子は、うーむ、と考えてから、「いや、目黒さんって何か、誰かといる時間を大事にしている節があるじゃないですか。だから朝ご飯も日向さんと一緒なのかと思って」
言った言葉は菊子の本心だった。
雨にはそういう所がある。
菊子と飲みに行くときも、菊子との時間をとても慈しんでくれている様な気がしていた。
雨が日向と話す時もそんな風に感じる。
きっと、自分や日向以外の親しい人間といる時も、雨はこうなのではないか。
菊子はそう思う。
「菊子は面白い事を言うな」
謎のウエハースの封を破りつつ雨は言う。
「あんたにあにきの何が分かるんだよ」
日向が言う。
言われて菊子は首を傾げた。
雨はミステリアスな所がある。
雨の心の内を菊子は知れない。
雨の趣味も分からなかったりする。
雨はただ付き合っていて楽しい友達の内の一人。
気の許せる相手では……ある。
「わかりません。でも、目黒さんの事は好きです」
場がしんと静まる。
菊子は、はっとする。
「あっ、勿論、友達として、です」
焦って出た菊子の台詞は多少早口だった。
「あんた、友達だとしても男相手にそういう台詞が出て来るか?」
日向が目を細めて菊子を見る。
そんな事を言われたって自然と出てきた台詞なんだから仕方ないじゃない。
こんな事を言おうものなら、また日向から何を言われるか分からないと菊子は思う。
「俺も菊子の事が好きだよ。友達として」
笑顔で雨が言う。
余裕の笑み。
それが菊子にはなんだか面白く無くって菊子は、つん、として「光栄ですわ」と言った。
そんな菊子を見て雨はまた笑うのだった。
「ところで目黒さん、私の仕事の事何ですけど。今日一日何をしたらいいんでしょうか?」




