会議1
朝食は雨の一言で結局三人揃って食する事となった。
菊子は忘れていたお湯を沸かし、コーヒーを三人分用意してダイニングに運んだ。
雨と日向の席にコーヒーを置くと、二人は早速コーヒーに口を付ける。
日向が黙って飲んでいるところを見るとコーヒーの味は大丈夫の様だ。
菊子はほっと一安心する。
しかし、それもつかの間。
コーヒーを飲みながらテーブルの藤のかごに載った菊子が苦心して切った食パンを見て日向が「何だよ、このパン。岩から切り出したみたいになってる」と言う。
菊子の胸に、ちくりと痛みが走る。
「すみません。慣れないもので」
菊子がそう言うと「食べられれば何でも良いよ」と雨が笑って言ったもんだ。
菊子の胸がまた、ちくり。
目黒ブラザーズには棘があるな。
こっそりと思う菊子。
「パン、焼いて来てくれる?」
雨にそう頼まれて菊子は作り笑顔で、「はい」と答える。
日向が「俺も」と言うので菊子はぶっきらぼうに、「はい」と答えた。
じゃあ、私もパンにして、焼こう。
菊子は三人分のパンをキッチンで、トースターで焼こうと試みていた。
トースターはトースト専用の物だ。
いびつな形のパンがトースターの口に入るか不安だった菊子だが、それはクリアー出来た。
数分でパンが焼き上がる。
焼き上がったパンの香りに菊子はうっとりとする。
いかにも美味しそうな香しい香りがキッチンに広がる。
パンは一度に二枚しか焼く事が出来ないので先に雨と日向の分だけ持って行こうかと思ったが、面倒くさいと、菊子は最後の一枚を焼いてから三人分纏めて持って行く事にした。
三枚目のパンが焼き上がり、菊子はパンをリビングダイニングに運ぶ。
リビングダイニングの扉を優雅にノックして開けば雨と日向は既にチョコクロワッサンにかぶり付いていた。
「お待たせしました」
菊子はパンの載った白い皿を雨と日向の前に置き「他にご用は?」と訊く。
雨が「大丈夫。菊子も席に着いて」と言うので菊子は有難く席に座る。
菊子は躊躇いながらも昨日の夕食の時と同じく雨の隣の席に座った。
菊子が座ると、雨はブルーベリージャムに手を伸ばし、日向はマーマレードジャムに手を伸ばす。
菊子は残ったラズベリージャムを手にした。
それぞれがパンにジャムを塗り、パンをかじる。
さくり、と言う音が同時に響く。
あ、このパン、甘くて柔らかくて美味しい。
焼かないでジャムを付けずにそのまま食べても良いかも。
パンの美味さに菊子はちょっとした感動を味わう。
菊子が一人暮らしをしていた時に食べていたスーパーで一番安いパンとは全く違う。




