雇い主の我がまま? 応えます。12
今菊子がいるのはリビングスペースである。
菊子はソファーの上に、茶色いブランケットを発見した。
ブランケットを手にすると、菊子はそっと雨にブランケットを掛ける。
雨が、「んっ」と声を漏らした。
起こしてしまったか、と菊子は、どきりとした。
しかし、雨は目を閉じたままだ。
一安心する菊子。
菊子はそのまま雨の眠った顔を眺めた。
そう言えば、目黒さんの寝顔って初めて見る。
「…………」
恋人でも無い男の寝顔を見ている、と言うのも馬鹿だな。
菊子はドライヤーのプラグをコンセントから抜くと、そっとダイニングを抜け出した。
日向さん、きっと今はバスルームにいるわよね。
ドライヤーを片付けるのは後にして、洗い物を済ませちゃお。
菊子はキッチンへ移動した。
キッチンに入り、さて、割れた皿を何とかせねばとシンクを見ると、割れた皿が消えていた。
日向さん?
日向が片付けておいてくれた。
それしかない、と菊子は思い、後でお礼を言おうと思う。
でも、あんな事があった後じゃあ……。
脱衣室での思わぬアクシデントを思い出して菊子は頭を痛める。
お礼は日向と顔を合わせた時にでも。
そう決めて、菊子は洗い物の続きを始めた。
洗い物を済ませて、夕食の片付けを終えた菊子は脱衣室の扉の前にいた。
菊子は扉を軽くノックしてみる。
返事は無い。
ゆっくりと扉を開けると脱衣室の明かりは消えていた。
バスルームの明かりも落ちている。
菊子は、ほっとする。
脱衣室の中に入り、ドライヤーと櫛はどこに置くのかしら? と菊子は悩んだ。
本当に分からない事だらけだわ。
「はぁ」
菊子の口から軽いため息が漏れた。
「何、ため息ついてんだ家政婦」
突然かけられた声に、びくりとしながらも、その声に菊子が「日向さん?」と顔を横に向けて見れば、開けっ放しの扉の前に日向がいた。
よく扉の前に立つ男だな、何ぞ思う菊子。
日向は黒いティーシャツに黒のイージーパンツ姿に変わっていた。
「あの、日向さん。割れちゃったお皿、片づけて下さってありがとうございました」
菊子が言うと、日向は「別に」と、どうでも良い事の様に言う。
「そんな事より、あんたを探してたんだ」
「日向さんが私を?」
一体何なのか?




