家事が得意か? 普通です。3
夕食作りはつつがなく進んでいる。
日向が菊子の隣で、ああだこうだと口を挟む以外は。
「このじゃがいもは何だ?」
鍋の中で、ぐつぐつと音を立てて茹でられているじゃがいもを覗きながら日向が言う。
「お味噌汁の具です。じゃがいもと玉ねぎのお味噌汁にしようと思って。私、好きなんです。じゃがいものお味噌汁」
「ふぅーん」
日向は神妙な顔で鍋の中のじゃがいもを見ている。
「あの、まずかったですか? じゃがいものお味噌汁」
まさかじゃがいも嫌いとか、と思いながら菊子は訊いてみる。
日向は、ちらりと菊子の方を見ると「別に」と一言。
「そ、そうですか」
気まずい。
気まずすぎる。
見張るって言ったって、何もこんなに近かくで見て無くても……。
正直言って凄く邪魔何ですけど。
でも、調味料の場所とか食器の場所とか教えてもらえて助かってはいる。
しかし、この長身の男に張り付かれてちゃ、動きにくいったらありゃしない。
ああ、そうだ。
閃いた菊子は、「ねぇ、日向さん」と日向に少し甘い声で話し掛ける。
「な、何だよ、変な声出して」
へ、変な声……。
軽いショックを覚えながらも菊子はめげずに話を続ける。
「あの、日向さん、よろしければ手伝って頂けませんこと?」
「はぁ? 何で俺が家政婦を手伝うんだよ。有り得ないだろ」
正論である。
「だって、日向さん、さっきからずっと横に張り付いてて、こう言っちゃなんですが、私、動きにくいです。だったら、いっそ、何か手伝って頂ければありがたいのですが。それか、もう少し離れて見てるとか」
こちらも正論である。
日向は少し悩んだ後、「じゃあ、手伝う」と言う。
そっちを選ぶのかよ! と菊子は心の中で突っ込んで、「じゃあ、お味噌汁の方、お願いします」と頼んでみる。
日向は、ぶすっとした顔で「分った」と答え、直ぐさま菜箸をじゃかいもに刺して、じゃかいもに火が通っているか確かめた。
何だか、任せても大丈夫みたい。
そう思った菊子は自分の料理に集中した。
菊子と日向、二人して余計な会話はせずに料理に集中している。
二人並んでコンロの前に立ち、額に汗を掻いている。
「あの、日向さん。これ、味見お願いできます?」
菊子はホルモン焼きの味見を日向に頼んでみる。
自分でも味見をしてみたが、目黒家の味に合うかどうか自信が無かった。
日向は、「ああ」と素直に了承すると、菜箸でフライパンの中のホルモン焼きを少し摘み、「あちっ」と言いながら食べる。
「どうです?」
どきどきしながら菊子が訊く。
「んー、ちょっと味が濃いかもな」




