家事が得意か? 普通です。2
やっぱり似合ってる様には思えないんですけど。
でも……。
エプロンを身に着けた菊子の姿を、凄く可愛いと言って笑顔を見せていた雨の顔が菊子の頭に浮かぶ。
「…………」
菊子はエプロンを身に着けると、髪を結き直し、「それじゃあ、やりますか!」と言って冷蔵庫に向かう。
菊子が鼻歌交じりに夕飯の食材を冷蔵庫から取り出していると、すっと扉が開く音がした。
目黒さん?
菊子は冷蔵庫から顔を離して扉の方を見た。
日向が頭を掻きながら立っていた。
「日向さん、何ですか?」
「何って……家政婦がちゃんと仕事をしているか見に来たんだが」と日向は、ぼそりと言う。
な、何だか勢いが無いわね。
まださっきの事を恥ずかしがってるのかしら?
勘弁して欲しいわ。
こっちまで何だか恥ずかしくなって来るじゃないの。
「えーっと、日向さん、私の事が心配で様子を見に来て下さった……という事でよろしいんでしょうか?」
菊子は日向に向かって、にこりと微笑んだ。
「そ、そんな訳あるか! あんたがあにきにとんでもない物食わせない様に見張るって言ってんだよ!」
菊子を睨み、噛みつく様に日向は言う。
菊子は安どのため息をつく。
そうそう、やっぱり日向さんはこうでなくちゃ。
うるさいけど。
非常にうるさいけども。
「かしこまりました。じゃあ、出来るだけ大人しく見張ってて下さい」
「はぁ? 何だよ、人が口うるさいみたいに」
「あっ、ほら、口うるさい」
「…………」
したり顔で菊子は冷蔵庫から夕飯の材料を取り出す。
日向がキッチンの扉を閉めて近付いて来て、冷蔵庫を目を細めて見ながら、「あんた、何作る気だよ」と訊く。
菊子は面倒くさそうにして、「はぁ。ホルモン焼きとトマトサラダとお味噌汁ですが」と答える。
「はぁ? ホルモン焼きって、あんた、もっと上品な物は作れないのかよ!」
日向の台詞に菊子の眉が下がる。
もう、本当に口うるさい男。
でも、恥ずかしがってもじもじされるよりはよっぽどいい。
「上品な料理って何です? ステーキとかです? 食べたかったですか、ステーキ?」
「別に」
「なら黙ってて下さい」
「…………」
菊子は微笑む。
この男を言い負かすのが何だか快感だ。
自分にこんな性癖があったとは。




