団らん?6
我ながら上出来かも、と菊子は笑みをこぼす。
「あの、日向さん、どうでしょう?」
念のため、訊いてみる。
日向は魔法が解けたかの様に、びくりと体を動かして、「ああ……良いんじゃないの」と言った。
その一言に菊子は、ほっとする。
「じゃあこれ、目黒さんの所に運んできます。三つあるんで、目黒さんと日向さんの分と、後……私?」
菊子が訊ねると日向は頷く。
「なんだか私の分まですみません」
「あ、あにきが、そうしろって言うから」
「そうですか。あの、お盆、何処ですかね?」
「ああ……」
日向は、ふらふらした足取りで歩きながら戸棚から四角いプラスチック製のお盆を取り出して持ってきて菊子に手渡した。
「ありがとうございます」
「別に……」
そう言うと日向は下を向いた。
菊子は苦笑いをする。
この人、大丈夫かしら?
非常にやりにくいんですけど。
「あの、日向さん、大丈夫です?」
ずばり菊子は言ってみた。
こんな調子でいられるくらいなら、まだ睨まれていた方がマシだと菊子は思った。
「え?」
キョトンとした日向の顔に菊子はまた笑いそうになった。
不意を突かれた、と言う時の男の顔は何で頼りなげで愛らしいんだろうか、と菊子は思う。
そう言えば菊子は雨のこんな顔を見た事が無い。
雨の、そんな表情を想像してみるも菊子には上手く出来なかった。
「日向さん、ずっと様子がおかしいですよ。さっきの事だったら、私、気にしてませんから」
「お、俺だって気にして無い!」
むきになった顔で日向は言う。
菊子はやれやれ、と思う。
「分かりました。じゃあ、普通にしててくれません?」
「普通って何だよ?」
訊かれて、ふむっ、と菊子は考える。
答えが出るのに、そう時間は掛からなかった。
「普通って……腕を組んで私の事を睨んだり、恫喝したり。馬鹿にしたり?」
「そんな事して無い!」
おいおい、無自覚ですか!
「してましたよ!」
「……そうか?」
「そうですよ」
「…………」
日向は黙ってしまった。
菊子はため息をつき、「コーヒーが冷めないうちに目黒さんの所へ行きましょう」と提案した。
日向は頷くと、さっき雨がスーパーで買ったお菓子をしまった戸棚から、お菓子をいくつか取って、黙って一人でキッチンを出て行った。
菊子はコーヒーの載ったお盆を持って日向の後を追いかける。
目黒さんの弟らしく、日向さんも謎の人だわ。
先を行く日向の背中を見ながら菊子は思った。




