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恋、しません?  作者: 円間
第一話 男友達の家政婦致します
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団らん?5

 菊子は良く分からない展開に眉を寄せる。

 手にはめたミトン越しに日向の手の感触がやんわりと菊子に伝わる。

 背中から、菊子に、ぴたりとくっ付いた日向の温かさも伝わって来る。

 菊子は瞬きを繰り返した。

 日向は菊子に重ねた手を動かしながらドリップポットのお湯をコーヒードリッパーに注いでゆく。

 それはとても丁寧な所作だった。

「こんな感じ。よく覚えとけ」

 お湯を入れ終えると日向は尖った声で、そう言う。

「分かりました。分かりましたけど、日向さん、手が……後、めちゃくちゃくっ付いてます。体が」

「へ?」

 菊子に言われて初めて状況を飲んだのか、日向が、「うわっ!」と声を上げて菊子から離れた。

「いや、いやいやいや、これは違くて! 断じて違くて!」

 日向は真っ赤な顔をして慌てふためいている。

 そんな日向と相反して、菊子の方は落ち着いていた。

 本当は日向の様に顔を赤くして、そして恥ずかしがって見せるべきなのかも知れないが、菊子は日向の反応があまりにもオーバーに思えて可笑しくなってしまったのだ。

 今にも笑い出したいのを堪えている。

「いや、もう、本当に違うから!」

 日向は懸命にそう言っている。

 何が違うのか菊子にはさっぱり分からなかったが、言いたい事は分った気がした。

「あの、大丈夫ですから」

 平然と菊子は言う。

 しかし、日向は赤い顔をそのままに「本当に違くて! だから……」と菊子にまだ言って来る。


 この男、意外にウブ?


 さっきまで偉そうに監視をしていたくせに、この態度の変化は何だろうか、と菊子は呆気に取られた。

「あの、日向さん。分かりましたから。違うんですね? もう分かりましたから。落ち着きましょう。ね?」

 全く持って分かっていなかったが菊子はそう言った。

「お、俺は十分落ち着いてる!」


 嘘つき。


「そうですね。あの、私、コーヒー、入れちゃいますから。日向さんは大人しくしていて下さい」

「……ああ」

 ちょっぴりの形勢逆転にほんの少しの優越感を感じながら菊子は再びコーヒーを入れる。

 日向は気まずそうにして黙って菊子がコーヒーを入れるのを見ているだけだった。

 ゆっくりとコーヒーがコーヒーサーバーに落ちてゆくのを見守る菊子。

 粉の上に浮いた泡が底に着く前に菊子はコーヒードリッパーをコーヒーサーバーから引き上げる。


 これで出来上がり、よね?


 菊子はそっと日向に視線を向ける。

 日向は何も言わずに黙っている。

 日向の顔はもう赤くはなかった。

 この人、今、何を考えているんだろう、と菊子は思ったが、今はコーヒーだ。

 菊子はカップを何とか三人分持って、お湯を流しに捨てると、ほんのりと温まったそのカップに出来たてのコーヒーを注ぎ込んだ。

 カップから白い湯気が上り、コーヒーの香しい香りが香る。

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