団らん?1
家の門の前まで辿り着いた菊子と雨。
「あれ?」と菊子が声を漏らす。
玄関先では日向がそわそわした顔をしてそこにいた。
菊子達に気が付くと日向は急いで寄って来て門を開ける。
「ただいま」と笑顔で日向に雨が言うと日向がふくれっ面で「遅いよ」と返した。
「あんまり遅いんで心配で、今からスーパーまで行こうかと思ってたんだ。何やってたんだよ、あにき」
何って、買い物だが、と菊子は思う。
雨は、はははっ、と笑ってから、「そんなに遅かったかな。菊子もいるし、大丈夫だよ。心配性だな、日向は」と言う。
全くその通りだと菊子も思う。
確かに車椅子を利用しているとはいえ、いい大人がスーパーへ買い物へ行ったくらいでこんなに心配する何て。
よっぽど私の事が信用出来なかったと見える。
菊子はやれやれと肩をすくめる。
「あにき、そんなに荷物持ったりして。家政婦は何をやってるんだか」
日向の冷ややかな目が菊子に注がれる。
「申し訳なく思っております」
菊子はあの高級スーパーの店員の真似をして丁寧にお辞儀をした。
すると雨が「俺が持つって言ったんだよ。菊子は悪くない」と柔らかい顔を日向に向ける。
日向は、うっ、と小さく声を漏らすと、「あんまり無理しないでくれよ」と雨に言い、雨の膝から荷物を取ると玄関扉に向かって行った。
菊子と雨は日向に続いて玄関扉へと向かう。
玄関扉を開けて待っていてくれている日向に軽くお辞儀をして、菊子は雨と家の中へ入った。
日向が玄関扉を閉めて、素早く雨の車椅子の車輪を用意してあったらしい布で拭く。
菊子は荷物を手にしたまま、自分はどうしたら良いのか分からずにその様子を見ていた。
しかし、居ても立っても居られなくなり、「あの、私も何かお手伝いを……」と声を上げた。
だが、日向からは、「いい」と一刀両断の台詞が返って来る。
しゅんとなった菊子に雨が「菊子は荷物をキッチンに運んでおいてくれないか」と頼む。
「は、はい!」
力強く答えると、菊子は靴を脱いでシューズボックスにしまい、買い物袋三つをこん身の力を込めて持った。
「ちょっと、菊子。無理しないで良いから。二回に分けて行ったら?」
雨は猛烈に焦った顔だ。
「いえ、これくらい、なんて事ありませんから。じゃあ、行って参ります!」
「無理するなよ」
雨は心配げに菊子を見る。
日向は冷たい目で菊子を流し見た。
菊子は日向に心の中で舌打ちをかます。
廊下を歩きながら手に食い込む買い物袋の痛みに菊子は悲鳴を上げそうだった。
うぉーっ、手ぇ痛い。
でも、負けてたまるか!
えっ、何に?
日向にか?
雨にか?
自分自身にか?
兎に角、負けられない、と菊子は意気込みよろしくキッチンに急いだ。




