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恋、しません?  作者: 円間
第一話 男友達の家政婦致します
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桜舞う。買い物へ行く5

 そんな冷たさどこ吹く風で、「さようです。じゃあ、お菓子売り場に出発!」と元気に雨は言う。

「はい」

 菊子は、がくりと頭を下げた。




 雨の後へついてお菓子売り場へ向かうと売り場には子供達がキャッキャと賑やかな声を上げてお菓子を選んでいた。

 その子供達が着ている洋服がブランド物である事に気が付いて菊子は、くらくらと眩暈を覚える。

 そして子供達が着ている服と自分の服を比べて菊子はへこんだ。

 そう言えば雨もラフな服装ではあるがブランド物を着ている。

 菊子にはスーパーへ行くのにブランド物の洋服を着て行くという概念が無かった。

 と言うか、意味不明であった。


 住む世界が違うわ。


 今すぐ回れ右をして馴染んだ激安スーパーへ駆け込みたい気持ちに菊子は駆られる。

 菊子は耳に商店街の総菜屋のスケベ顔の店主が菊子を呼ぶ声が聞こえる気がした。

 揚げたてのコロッケの幻さえ見える。

「どうした菊子? 額に皺なんか作って」

「皺なんか出来ません」

 ふんっ、とそっぽを向く菊子を笑って、雨は車椅子を進め、菊子から離れて、お菓子選びを始めてしまった。

 子供達に馴染んでお菓子を選んでいる雨を、少し離れた所で菊子は眺める。


 本当に自由な人。


 呆れ半分に思いながらも、でも、雨のそんな自由な所が羨ましいし、憧れる。


 自分だって十分自由なつもりでいたけれど……。


「菊子!」

 雨に呼ばれて、ふと我に返り、「はい」と返事をして菊子は雨の下へ小走りで行く。

「何です? 目黒さん」

 菊子が言うと、雨がチョコレートのお菓子の並んだ棚を指さした。

「棚の上のお菓子、取って欲しくてさ」

 雨の指先は棚の一番上にあるスティック型のチョコレートのお菓子を指していた。

 なるほど、車椅子の雨では取ることが出来ないのだ。

「今、取りますね」

 菊子は手を伸ばして棚からチョコレートの箱を取る。

「ありがとう」

 満面の笑みを浮かべる雨。

 こんな事でそんなに喜んでくれるならいくらでも、と菊子は思った。

「これ、かごに入れちゃって良いんですか?」

 菊子が訊ねると、「ああ」と雨。

 菊子がチョコレートをかごに入れている間、雨は真剣な顔でお菓子の棚を見ている。

「まだ何かお菓子買うんですか?」

「いけない?」

「いけなくは無いですけど、好きなんですか? お菓子」

「うん、好き」

 子供みたい、とは菊子は口に出せない。

 雨のお菓子選びに付き合う事数分。

 結局、お菓子だけでかごの半分は埋まってしまった。

「こんなにお菓子ばかり買って大丈夫なんです?」

 目を狐の様に細めて買い物かごを見ながら菊子は言う。

「大丈夫って、何の心配をしてるんだ?」

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