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恋、しません?  作者: 円間
第一話 男友達の家政婦致します
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そう言や、醤油が切れていた4

 そう言って日向の顔を菊子が窺うと、日向の顔は真っ赤だった。

 

 もしかして、照れました?


「しっかりしろよ、家政婦」

 そう静かに言うと、日向は菊子のエプロンを玄関の飾り棚に置き、菊子の横をすり抜けて玄関扉から外へ出てしまった。 

 日向の新しい顔を見た気がして、菊子はしばらくその場でにやけていたが、雨を待たせている事を思い出し、外へ出た。

 菊子が外へ出ると、雨と日向がもう門の前にいて、雨が菊子を、「おーい!」と呼んでいる。

「すみません、今行きます」

 菊子は雨の下へと走る。

「そんなに急ぐと転ぶぞ菊子」

 雨が言う。

「そこまでドジじゃありません」

 全く、雨はいつも一言多いと菊子は心の中で不満を垂れ流す。

 菊子が側まで来ると、日向が門を開ける。

 開いた門から雨が車椅子を、するりと滑らせて出ると、その後に菊子が続いた。

「じゃあ、日向、行ってくるから」

「ああ、あにき、気を付けて」

 日向の顔は不安そうだ。

 私と二人で出掛けるのがそんなに心配ですか、と言ってやりたいのを堪えて、菊子は代わりに、日向に「日向さんは、何か買って来て欲しい物はありますか?」と訊ねた。

 訊かれて、日向は少し考えた後、閃いたと言わんばかりに顔を輝かせて「醤油」と口にした。

「醤油、ですか?」

「ああ、醤油。醤油が切れていたんだ。買っといてくれ。一リットルのやつ」

「分かりました。他には?」

「他は別に良いよ」

「はい」


 一リットルの醤油。

 よりにもよって重たいやつか。

 これは、日向さんからの挑戦状か?


「おい、何睨んでるんだよ?」

 日向が怪訝な顔を菊子に向けて言う。

「別に何でもありません。行きましょう、目黒さん」

「え? ああ。じゃあな日向」

「ん、あにき。おい、家政婦、くれぐれも、しっかりな!」

「なっ。えーえー、そりゃもう、しっかり致しますとも!」

 お約束の様に睨み合う二人。

 雨は、やれやれと首を横に振る。

「おい、菊子、先に行くぞ!」

「え、目黒さん、ちょっと待ってください!」

 もう、先へ進んでいる雨の背中を菊子は追い掛ける。

 その二人の姿を、日向は複雑そうな顔をして見送った。






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