クロエ、暴走5
「嫉妬だよ、嫉妬。クロエはあんたに嫉妬してるんだ」
「えっ?」
菊子の口がぽかりと開く。
「あの、どういう事ですか?」
訳が分からない菊子。
何故に?
どうしてクロエちゃんが私に嫉妬するの?
戸惑う菊子を見て日向は廊下を気にした後、菊子にぎりぎり聞こえる声で、「クロエはあにきの事が好きなんだ」と明かした。
「えええっ?」
菊子の出した声は大きかった。
日向が慌てて口元に人差し指を置いて、しぃーっ、とやる。
菊子は直ぐに両手に口を当てる。
「クロエさんが目黒さんの事を? あの、男女の関係的な意味での好きですか?」
「男女の関係的な意味が不明だが、まあ、言いたい事は分った。そうだ。そんな感じの意味でクロエはあにきが好きなんだ」
「はぁ?」
何となく分っていた事とはいえ、事実と知ると驚きを隠せない菊子。
いくら雨が容姿端麗とはいえ雨とクロエでは歳の差もある。
クロエと並ぶと雨だって、どう見ても近所のおじさんかパパだ。
「その事を目黒さんは知っているの?」
信じられない、という顔のまま訊ねる菊子に日向は真顔で、「ああ」と頷く。
菊子は衝撃で両手で強く頬を挟んだ。
お陰で蛸の様な唇になった姿を日向に見せ付けていたが今の菊子にはそんな事は構わなかった。
「凄い顔になってるぞ」
との日向からの突っ込みにより、菊子はやっと頬から手を離す。
とにかく冷静にならなくちゃ!
狼狽えてどうする!
魂に喝を入れて落ち着きを取り戻そうと菊子は深呼吸する。
吸っては吐いてを繰り返す。
そんな菊子を呆れた顔で見る日向。
数秒後、やっと少し落ち着いてきた菊子。
落ち着いて来ると、日向には聞きたい事が出て来た。
「日向さん、何で私にそんな事話すんでかす? クロエさんのプライベートの事じゃないですか。来たばかりの家政婦の私に話す事じゃ無いですよね?」
そう真顔で話す菊子。
日向は頷いた。
「ああ。あんたに協力して貰いたい事がある」
協力、と聞いて先の柚李との恋のキューピッドの約束の件を思い出した菊子だった。
「協力って何です?」
柚李さんみたいに面倒なのじゃないと良いけど。
不安の幕が菊子に降りた。
日向は少し言い出しにくそうにしていたが意を決したという様に話し出した。
「クロエが今日一日、うちに泊ると言っている」
「えっ」
「だから、今日はクロエを刺激する様な行動は慎んで欲しい」
「は?」
一体自分は何を言われているのだろうと、菊子はフリーズ。
「どういう事ですか?」とやっと訊く菊子。
日向は、「あんまりあにきと仲良くしない様にして欲しいって言ってるんだ」と強い口調で言った。




