クロエ、暴走4
ああ、そういう事。
菊子は納得した。
大好きなお兄ちゃんに自分だけを見て欲しい、と言う訳か、と理解する菊子。
「クロエさんは目黒さんの事が大好きなのね」
菊子が微笑まし気に言うとクロエは頬を赤くして、「うん、大好き。だって雨兄いは私の王子様なの」と話す。
「お、王子様?」
目黒さんが?
王冠を被った雨を思い浮かべて笑いが漏れそうになる菊子。
そんなふざけた菊子と引き換え、クロエは真面目だった。
「うん。それで私は雨にいのお姫様なの。だから、家政婦さん、私達の事邪魔しないでね」
そう言ってクロエは去って行った。
「…………」
え、もしかして今、釘を刺された?
「ええっ?」
驚きの菊子。
目黒さんが王子様でクロエちゃんがお姫様ってどういう世界観?
いや、それよりも、えっ?
クロエちゃんって、もしかして目黒さんの事、Likeじゃ無くてLoveの方で好き?
はぁ?
ちょっと待って、歳の差幾つ?
菊子は両手の指を折って数を数える。
自分の指を見る菊子の顔がどんどん奇妙に変化してゆく。
まるで隠し芸だ。
いや。
いやいや、まさか、いくら何でも有り得ないわよね、うん。
いや、でも、今までのクロエちゃんの私に対する反応の数々は……。
一人、石像の様に固まり考える人になる菊子。
「おい、家政婦!」
不意に声が掛かり、「ふぇっ?」と菊子は俯いた顔を上げた。
キッチンの扉の前に日向の姿があった。
最早おなじみの風景だ。
「日向さん、何ですか?」
「何ですか、じゃ無くて、洗濯物。俺これから片付けるから」
「え、でも、日向さん、まだクロエさんとお話が……」
「そのクロエが機嫌損ねて部屋から出て行っちまったからクロエの様子見も兼ねて、だ」
「ああ」
日向さん、クロエちゃんの事、気が付いてたんだ。
菊子は感心する。
「何だよ、人の事、にやけた顔で見て」
「何でも無いです。あの、クロエさんがご機嫌斜めなのは目黒さんもご存知で?」
「ああ、ご存知だよ。何たってあにきが原因だからな」
「あの、私、クロエさんから聞きました。目黒さんが私の事ばかり話してて退屈だって」
頬を膨らました、リスの様な可愛らしいクロエの姿を思い出し、菊子は顔を綻ばせる。
対して日向は厳しい顔つきだ。
「クロエが家政婦にそんな事を? こりゃ、重症だな」
困った様に頭を掻く日向。
「どういう事です?」と菊子は訊ねる。




