クロエ、暴走3
誰とも恋愛出来ないって何よ?
何でも楽しんでる様な人が何で恋愛出来ない訳?
本気なの?
それともただ恰好を付けているだけの台詞?
不意に見せた雨のあの表情からは後者にはとても思えない菊子だった。
雨の事を考えているうちにキッチンの掃除は終っていた事に気が付き、菊子は、ふっ、と笑う。
馬鹿ね、私。
こんな事を考えてどうするのよ。
お節介お節介。
「よし!」
一声上げて菊子は膝を叩いた。
「次の仕事、頑張りますか!」
そう自分に言い聞かせ、気持ちを切り替える。
次は何をしようかな。
そろそろ洗濯したいところだけど。
壁の時計を睨む菊子。
日向が応接間から出て来る気配はない。
洗濯機には日向の洗濯物が入っている。
日向とは洗濯は別々に、との約束になっている。
日向が洗濯機を空にしてくれない事には菊子は洗濯に取り掛かれない。
本当、日向さんって面倒くさいわ。
うんざりする菊子の耳に、ぱたぱたと廊下を踏む音が聞こえて来る。
誰か部屋から出て来た。
誰?
菊子がキッチンでじっと廊下の様子を耳を澄まして窺っていると開けっ放しのキッチンの扉の前をクロエが、すっと横切った。
「クロエさん」
思わず菊子はクロエに声を掛けた。
クロエは引き返して来て扉からキッチンを覗く。
「何ですか?」
クロエの顔は不機嫌そうであった。
な、何その顔?
「あの、何でも無いです。ただ声を掛けてみただけで……」
「そう」
クロエはこの場を去らずに菊子の顔をじっと見ている。
宝石の様な澄んだ瞳に見つめられて菊子は照れ臭くなる。
「あの、私の顔に何か?」
照れ隠しに言う菊子。
「別に何にも。ねぇ、家政婦さん、雨兄いったらね、ずっとあなたのお話ばかりなの」
「えっ?」
「菊子がどうしたとか、菊子がああしたとか、そんな話ばかり。退屈だからお手洗いに行くって言って抜け出して来たの」
クロエは頬を膨らます。
「はぁ……それはすみません。私の話は退屈ですよね、ははっ」
自分の話が退屈だと言われて、心にナイフが刺さった菊子のテンションはだだ下がりだ。
クロエは、はっとした様に、「そういう意味じゃ無くって、折角私が来てるのに、他の人の話ばかりする雨兄いに怒ってるの」と話す。




