クロエ、暴走2
足の事を気にして?
そんな事が菊子の頭を過って、菊子はそれを頭から振り払う。
「何? 菊子。俺に結婚して欲しいの?」
「ご祝儀は弾ませて頂きます」
「ははっ」
目黒さんが結婚。
そうしたら私達の関係ってどうなるんだろう。
目黒さんは家庭を大切にしそうだから中々遊べなくなるかもな。
そう考えたら少し寂しい、と菊子は感じる。
何か、目黒さんが結婚したら嫌かも……ん?
私は何を考えてる?
菊子の手が止まる。
「菊子?」
「え、あ、はい」
菊子は再び手を動かした。
「あの、目黒さん、柚李さんの気持ちは、その、ご存知で?」
何となく訊きにくい事だがこの際訊いてみた菊子。
雨は少しの沈黙の後、「まぁ」と答えた。
「どうするんです?」
「どうするって?」
「柚李さんの事です」
結婚は無理でも付き合う事は出来るんじゃないのか? と菊子の頭にそんな疑問が浮かぶ。
柚李と雨。
二人供、経済的に豊かだし、美形同士でつり合いが取れる。
そう考えるとお似合いの二人だ。
目黒さんは柚李さんの事をどう思ってるんだろう?
好意はあるの?
それとも?
菊子の眉間に自然と皺が寄った。
「俺は誰とも恋愛何て出来ないよ」
「へっ?」
車輪を拭くために屈んでいた菊子は顔を上げて雨の顔を見る。
瞬間、雨の表情に今まで見た事の無いものを菊子は見た気がした。
しかし、いつの間にか雨は、いつもの笑顔を浮かべて菊子を見ていた。
菊子は呆気に取られる。
「菊子、行くぞ」
雨が力強く車椅子を走らせた。
菊子の目の前を車椅子が掠める。
勿論菊子には掠りもしない。
止まる事無く走る雨。
「待って!」
菊子は急いで靴を脱ぐと雨を追って廊下を走った。
雨と応接間の前で別れて、菊子はキッチンに戻り、掃除の続きを始めていた。
手を動かしながら考えるのは、あの時の雨の表情。
何だっけ、ああいう顔。
あんな表情をする時を知ってる様な気がするけど、思い出せない。
誰とも恋愛なんて出来ない。
そんな台詞が雨の声で聞こえた事に菊子は違和感が拭い去れない。




