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8. ポーレットの怒り


「マルク様!」

「ああ、ポーレット。君も来ていたのか」


 リュシエンヌをミカエルと共に休憩室に置いてきたマルクは、親しい貴族令息たちとの会話を楽しんでいた。

 そこに、リュシエンヌの妹ポーレットが憤怒の表情で歩いてきたのだ。

 マルクは貴族令息たちと別れ、ポーレットとともにバルコニーへと出た。


「どうしたんだ? そんなに怒ったような顔をして」

「マルク様、お姉様は今どちらに?」

「……休憩室だが。何故そんなことを聞くんだ?」


 普段ならばリュシエンヌのことなど気にも留めないポーレットが、姉の居場所を聞くなどと珍しく思ったマルクは怪訝な表情でポーレットを見た。


「お姉様は今ミカエル様と一緒だと、休憩室に貴方とミカエル様、お姉様が入るところを目撃していた方から聞いたわ。どういうことなの? 何故お姉様がミカエル様と……」

「ああ、そういうことか。ミカエル団長がリュシエンヌのことをお気に召したようでな、リュシエンヌが団長の機嫌を取ってくれれば俺の騎士団での立場も良くなるだろう。だからリュシエンヌには団長のお相手をさせてるんだ」


 フルフルと、怒りに打ち震えるポーレットは拳を握りしめて額には青筋を浮かべた。


「何故お姉様なの! ミカエル様は私がずっとお慕いしていたのに。マルク様、ひどいわ!」

「そんなこと言っても、ミカエル団長の方がリュシエンヌを気に入ったのだから仕方ないだろう」

「お姉様ったら、貞淑そうな顔をしてちゃっかりミカエル様を誘惑するなんてイヤらしいわね」


 いつもは可憐で可愛らしく甘えん坊のポーレットは、今日ばかりは嫉妬に燃えた瞳をぎらつかせて、マルクを睨みつけた。


「まあまあ、リュシエンヌは婚約者である俺の為にしていることだから仕方あるまい」


 マルクからすれば、ただ享楽に耽る相手の一人であるポーレットよりも自分の将来に関わることに役立つリュシエンヌの方が価値があった。


「マルク様、私もミカエル様とお話したいわ。是非紹介して?」


 その顔から怒りを消したと思ったら今度は甘えた顔つきと猫撫で声で強請るポーレットに、まあ一度紹介してみてミカエルがこの妹も気に入れば僥倖だと考えるのであった。


「分かった分かった」

「まあ、嬉しいわ! ありがとうマルク様」


 そう言ってポーレットは誰からも目につかないバルコニーで、そっとマルクの身体に触れるのであった。

 そしてそんな奔放なポーレットにも結局マルクは溺れるのである。



――コンコンコン……


「ミカエル団長、パンザです」

「入れ」


 リュシエンヌとミカエルが幽霊たちと和やかに過ごす休憩室に、そうとも知らずマルクがポーレットを伴ってやって来た。


「ミカエル団長、実は今日のパーティーに先日お話したリュシエンヌの妹であるポーレット嬢も参加していたようで、ポーレット嬢が是非団長にご挨拶をしたいと言うのですが」



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