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26. 気の早いお話です


「リュシエンヌ、君が私の花嫁となればローランはこの世からいなくなってしまうが、大丈夫なのか?」


 ある非番の日にペトラ公爵邸の庭で散歩をしながらミカエルがリュシエンヌに問うた。

 婚約が決まってから、ミカエルはリュシエンヌへの想いを隠すこともせず暇さえあれば一緒に過ごしていた。

 突然のミカエルの問いに、リュシエンヌは傍に控えるローランの方をチラリと見たが、お互いに軽く頷き合ってからはっきりと答えた。


「大丈夫です。ローランはそれで心残りがなくなり、天国へと向かうのですから。それに、私にはもうすでにたくさんの家族ができました」


 リュシエンヌは、ミカエルの家族の穏やかな性格にとても救われた。

 そのうち自分もこの家族の仲間入りをするのだと思えば、とても幸せだと感じた。

 

 ペトラ公爵家には、ミカエルと婚約をした後での挨拶となり、万が一反対されたり気に入らないと言われたらとリュシエンヌはとても不安に思っていたが、実際には全く心配は不要だった。


 ミカエルの両親は、唐変木の息子がやっと婚約者を連れて来たと喜んだ。


 国王の弟であるミカエルの父にとって、公爵家の嫡男はミカエルの兄ルルーシュであったが、次男のミカエルがずっと独り身では心配の種だったという。

 騎士という過酷な職務を支えることのできる良い伴侶が見つかればと常々から口にしていた。


 義母は嫡男ルルーシュの妻であるマルグリッドとも良好な関係を築いていたが、また娘が増えるのは嬉しいと喜んだ。


 義兄ルルーシュは冷静沈着な騎士団長と言われる弟が、リュシエンヌに向けた普段見せぬ優しい表情に驚いた。

 ルルーシュの妻であるマルグリッドも、リュシエンヌと早く仲良くなりたいと人懐っこい笑顔で気さくに話しかけた。


「そうか……それならば良い。両親も義兄夫婦も婚姻によってリュシエンヌをペトラ家に迎え入れる日を心待ちにしている。勿論私が一番待ち遠しいのだが」

「私も、早くミカエル様の妻となりたいです」


 そう言ってふわりとリュシエンヌが笑顔を綻ばせると、ミカエルもその整った顔を緩ませた。


「あらあら、リュシエンヌのあの可愛らしいお顔を見てごらんなさいな。ローラン、貴方があちらへ昇っても私たちがあの娘を見守るから心配はいらないわよ」

「マリア、頼みましたよ。お嬢様はやっとお幸せになれるのです。これからもずっとそうであれるようにお願いします」

「任せなさい。リュシエンヌとミカエルの子どもが産まれるのも今から楽しみね。きっととても可愛らしい子たちよ」

「それはそうでしょうな。どちらに似ても美しいお子でしょう」


 ローランとマリアが気の早い話をしているが、隠すつもりもないのか声が大きく実は全てリュシエンヌとミカエルには筒抜けで、リュシエンヌは羞恥に頬を染めた。


「リュシエンヌ、ローランもマリアも随分と気の早い話をしているが私も今から君との子ができるのが楽しみになってきたよ」

「ミカエル様。本当に気が早いです。まだ私たちは婚姻も結んでいないのですから」

「それでも、きっと私たちは婚姻を結べばすぐに子を授かるだろう。それほどに私はリュシエンヌのことを離すことができそうにない」


 その意味を理解したリュシエンヌはますます頬を紅く染め、最近ではこのように甘い言葉をサラリと囁いてはリュシエンヌの反応を楽しむミカエルを、照れ隠しで少しばかり睨んだのであった。






 







 

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