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ミーティアライトのいたずらよ外伝  作者: ヒジカタアルジ
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ギンジの路(みち)前編《外伝ギンジの道以降》

初夏の深夜。


特殊な目を持つ青年から目をえぐり盗って、冷凍保存出来る黒い箱に入れた、青年は窓から飛び降り逃げたが生死はどうでもいい、もうここには用はない。


シュウヘイに見つかるも、不意を突いて胸を狙って撃ったはずが避けられ、仕留め損なった、まだ勘は鈍ってないらしい。


塀をよじ登り駐屯地を去る所をマシロに見つかる、夜目が利くやつだ。


殺しとこうかと思ったが、使える駒なら捨てがたい、追々見極めていこう。


「あーにきー、これからどうするんスか?」


暗い森の中、先を行くギンジに、行き当たりばったりを楽しむかのように明るく問いかけるマシロ。


ギンジは短髪に鋭い瞳、背丈175cmくらいでバネのように瞬発力のある体躯をしている、細いフレームの眼鏡を掛けてはいるが、目が悪いわけではなく、素顔を軽く誤魔化す為。


黒の軍服に片方掛けリュック、それに必要最低限のものと、人を操れるかもしれない目を凍結保存している黒い箱も入っている。


30代前半にしてサバイバル術、格闘術、運転技術、教わる全てをマスターし、なにをするにしてもコツを覚えるのが早い、ただ、寡黙で目標らしい目標が無い事から、好かれも嫌われもしない人物。


永く生きる確信がある事から、どうせならと強さの極みを目指そうとした、対人なら負ける気はしないが、今は獣人という人ならざるパワーを持ったり、異能力という思いがけない隠し玉がある。


そのどちらも持たずにいるのは、なんともつまらない。


その為には、獣人の単純なパワーと人の特殊な異能力をどうにか使えるようにしたいし、手段を選ぶつもりもない。その可能性のある場所に向かおうとしている。


しかし、まだまだ医療技術も科学技術も拙すぎる、急ぐ旅ではないので色々寄り道がてら独り旅をするつもりだったが。


「聞いてますー?あーにきー!」


うるさい。


名はマシロ、ソフトモヒカンに背丈180cmくらいで、どれだけ重たいバーベルを上げれるかを競うかのような体躯をしている、緑色の軍服、ノリは軽いから嫌う奴は居ない、大きめのリュックを持っていて、あわてて準備して手当たり次第詰め込んできたのだろう。年齢はギンジより2、3歳上だったはず、兄貴呼ばわりされるいわれは無い。


まぁ暇だから聞いてやる。


「俺ホントなんにも出来ないんスよ、頭ワルいんで、だから力だけでも鍛えとこうかなって思いまして、ホラ、筋肉は裏切らないっていうじゃないっスか。」


答えになってない。


「兄貴は兄貴なんスよ。」


やっぱり答えになってない、まぁいい、付いてこれるなら連れていってもいいだろう。


もう、この駐屯地に戻ることはない、まずは、北の山沿いから東に行く旨をマシロに伝える。


「いいっスね、俺山育ちで、木に登るのが好きだったんスけど、最近筋肉付けすぎて体が重くて・・。」


軽く無視して少し早めに歩き、一泊を廃虚のようなコンクリートの建物で過ごす。干し肉が残り少ないが、山に入れば現地調達しながら歩いていける。マシロが付いてこれないならそれでも構わない。


まだ太陽が高いうちに山の入り口に着いた、ここを抜けて東に向かう。


だが、入った瞬間から他人の罠に嵌まった違和感、まぁここで死ぬならそれも一興。


獣道を警戒しながら歩く。


不穏な気配が辺りを覆う、太陽の光が入りにくく、生い茂った木から木へと駆け抜けるモノが居る、ムササビより遥かに大きい、不気味な木々の揺れや動物の甲高い鳴き声に両肩を掴んでくるマシロがうっとうしい。


「うおぉ、ちょっと気味悪くないっスか?俺が住んでた山と全然違うんですけど。」


中腹辺りの開けた所から光が射し込むが、小柄な人影が邪魔をする。


目が光に慣れてきた。


地味なちゃんちゃんこを羽織った好々爺が両手を後ろで組み、似つかわしくないこと言い出した。


「軍人さんかのぅ?まぁ誰であろうと構わんよ、荷物を置いて去りなさい。」


(じじい)の両隣に猿の獣人が2体降りてきた、さらに木々の揺れからして、あと2体はいるだろう。


おそらく山賊のボスと部下なんだろうな。


「マシラか。」猿とはいえ退化したわけではなく、猿と人間の良い所が合わさって進化した獣人だ。


「呼びました?」


この状況でふざける余裕があるなら、どうせ挟撃してくるだろうから片方をマシロに任せてやる、せめて相討ちくらいはしろよ。


好々爺もどきは(かん)にさわったんだろうな、不気味な笑顔から怒りをあらわに右手を上げた。


前から側近の一体が突進してくるのに対し、リュックを下ろし、マシロに後ろを向かせ、腰に着けたナイフをひとつ取り出す。ナイフで素早く薙ぐがバックステップでかわされる、猿より速くフロントステップし、ふたつめのナイフを左手で取り出し喉を突く。


後ろからは一体だけ降って来て、鉤爪で突いてくる、マシロはその手首を掴み、もう片方の振りかぶる鉤爪の手首も掴む。


「ひぃぃ、なんスかこいつは?」


情けない悲鳴を上げながらも、力を力で押さえ付けれるのはマシロの強みだろうな。


拮抗した状態のまま、頭突きを二回決め、怯んだ猿を見てマシロは油断した。


「あだっ!痛ってぇ、な、なにす、うわあぁぁ!」


いつの間にか降りていたもう一体の猿に横からタックルされ、さらに、頭突きから復活した最初の一体と共にマシロの巨体を抱え、木を登って連れ去っていった。木々を飛び回り暴れているので枝や葉がぼとぼと落ちてくる。


「許しを請うなら助けてやっても良いぞ」


許しを請うてもどうせ殺すだろう、無言で右手のナイフを(じじい)の眉間に投擲する、猿の獣人は動かないが、爺は後ろの開けた所へ大きく跳躍し、怒声をぶつけてながら、右手の手刀で(くう)を薙ぎる。


「ならば、死ねい!」


何かが迫ってくる。


先ずはサイドに避ける、舞散る葉が裂けた事で鋭いナニカが飛んできたのが分かる。


良いねぇ、これだ。


ヒリヒリした空気、死ぬ可能性さえある緊張感、知らぬ間にニヤケていた。

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