シンイチはかく語りき《本編2.5話》
世界が一変したその日。
なんとか物書きでメシ食えるようになってきたかな、て思とった矢先の事じゃ。
いやぁ、こんな安アパートにえらくべっぴんさんが来たもんだで、モデルさんみたいに背ぇ高くて、キリっとした顔立ちで、肩まであるストレートな髪をこう、後ろで束ねて、これまた優しい笑顔で『シンイチさん、こんにちは。』ってなもんで挨拶するもんだから、まいっちゃうね。
あれでもう結婚してるんだからほんとがっかりで、旦那さんはどんなやつだ?って思ってたら、
こんなちんちくりんのどこに惚れたんだか?眠そうな目に、くせっ毛でさ、
あぁでも、この前、ドアの建付けの悪いの直してくれたなぁ、そういや、壊れた扇風機も嫌な顔ひとつせんと修理してくれたしなぁ。小難しい話ばしよるが、生真面目な奴じゃ。
まぁそんな訳で、今や二人とも大好きなわけさ。ワシの本も読んでくれとるし。小説『光と音』が好きだと言うてた、自分で言うのもなんじゃがマニアックじゃの。
そういや、
越してきてすぐ、総一郎君が猫を拾ってきたんだわ、ちょっと変わった猫でねぇ、右目が青色で左目が茶色なんだわ、
でも、そんなこと気にもせんと、『モチ』って名付けとったわ、白猫だからってさ。
せっかくなんで、赤い蝶ネクタイの付いた首輪なんかどうかなって、渡したら、総一郎君が『シンさん、ありがとうございます。』って喜んでくれたんで良かったわぃ。
程なくして、百合子さんが妊娠して、総一郎君も一生懸命でなぁ。
いよいよ生まれるってときにゃ、
車ひっぱり出して、二人を病院まですっ飛ばしたもんだよ。(安全運転でな)
なんとも元気な男の子じゃった。光一郎というんじゃ、
互いが互いを想い合って、それを子に注いで(ついでにモチにも)
この一家は、幸せにならにゃならん!
晴れた朝、西の方からぶわぁっと空一面がおかしな色に光っていつもの空じゃなくなった、近所の子供達がはしゃいどるし、町の人らも何気に空を気にしてる。
そしたら、雪みたいな光るナニカが降ってきて・・・
アレ?体が変だ?
総一郎君と、光一郎君を抱いた百合子さんが心配してる?
よく・・・わから・・・ん・・、赤子・・・旨そう・・だ・・?
ダメだ!だめだ、このままでは・・・
たし・・か、へ・や・・・のひ・・きだし・・に・・・・・・・。
伝わらないかも知れませんが、二人にとっても、すごく良い人でした。