整列
「時間だ、各隊行くぞ。」
連合軍のグリトップが、一列に整列する。敵陣から見れば、はじめての光景で、さぞ壮観に見えるだろう。各々のグリトップが手持ち兵器を手にした。第三小隊と第四小隊には、レーザーガンが支給された。戦艦の主砲並みの破壊力というふれこみである。
グリトップの隊列から少し離れて、ペガサスが配置された。何もなければ、この位置に固定で先輩方の勇姿をただ眺めるだけの初陣となる。何か起これば、遊軍としてのデビューが待っている。試作機のバトルアーマーの手にも、レーザーガンがあった。
小型の物体が、こちらと敵を、隔てた中央付近まで進んで何かを散布した。俗に言うジャミング粒子だ。これを巻かれると、無線通信は、ほぼ使えないと考えていい。ノイズがのって聞こえない。これから先は、無線での連絡は厳しくなる。通信が発達していない昔の戦場に逆戻りである。
ただ、ペガサスには有線の連絡用端子が伸びていた。
「他の連中とは、通信ができないが、この回線を切り離すまで、通信が可能だ。シナプス少尉。」
バーニー少佐の声がクリアに聞こえた。
連合軍のバトルアーマーは、行進を開始した。この行進は、何もなければ敵の野営地まで実施される。そのまま、敵も、すんなりと行進させてはくれない。木々の間から、敵の二型も姿を表した。
戦闘がはじまった。激しく撃ち合っているが、実はどちらも、射程範囲外の距離だった。レーザーガンは、もう少し近距離でないと効果を発揮しない。しかし、無理に突撃することを止められていた。
「すごい火力だ。このままでは、押し込まれる。」
帝国のパイロットがコックピットで叫んだ。まともに戦ったら、連合軍の有利は変わらないだろう。とりあえず、あるだけの弾丸で敵を足止めすることが、大切だった。ただ一機、帝国の赤い機体が、一直線に並んだ敵の裏に出るつもりで動きはじめた。連合軍の左翼側を狙っている。
双眼鏡で動く物体を確認した連合の斥候が、合図の信号弾を打ち上げた。
「シナプス少尉、左翼側に敵が移動している。君の任務は、敵機に裏に侵入させないことだ。」
「了解しました。」
シナプスの声が聞き終わる前に、通信用のケーブルがはずされた。地球上での機動力では、グリフィンやグリトップより数段上である。ペガサスの背中にあるスラスターから白い煙らしきものが見えた。勢いよく左翼側に移動を開始した。その白い煙は、まるで翼ように見えた。