再編成
「小田原評定」昔あった日本という国の故事である。
連合軍の最前線のテントでは、まさしく、この言葉通りだった。ベーカー准将は、部下達からの意見を聞いたが、これという、結論には到らない。
「それでは、また明日と言うことで。」
いつも作戦会議の進行を務めるガザ大佐の口癖となっていた。
あれから1ヶ月、何も打開策がないまま、ブラッドリー大佐の到着を待つことになった。
連合軍の現場の士気は、落ちていた。2つの小隊を失い、無策の1ヶ月。全体では、優勢に戦っている連合軍であるが、この戦場のみは、違った雰囲気があった。
ブラッドリー大佐の最初の仕事は、部隊の再編成であった。
第一小隊と第二小隊は、欠番となった。残りは第三小隊から第八小隊まで。
アーサーは、パイロットとして、第八小隊に組み込まれるはずだった。ただ、第二小隊の生き残りであるウィルソン中尉が、復帰するためバトルアーマーと所属を失った。
新しい指揮官であるブラッドリーのテントに、勢いよく飛び込んできた者がいた。一見して、技術者であることは、わかった。端末機器を小脇に抱えて、忙しそうにメガネを直しながら説明をした。
「この1ヶ月、ずっと待たされているのです。実戦投入を。これでは、現場に来た意味がない。このバトルアーマーは、革命なんですよ。」
資料の入った情報端末を大佐に渡しながら、絶叫している。ジョー・タニハラと言うのが、技術士官の名前だ。
「わかった。私もこの話は聞いていない案件だ、少し時間をくれないか。」
少し落ち着いた様子のタニハラは、渋々、持ち場に戻った。
新しく自分の下で働くバーニー少佐を呼んだ。
「少佐、この試作機の案件は、知っているかい?」
「これですか、パイロットに試作機の搭乗テストをお願いするのですが、最初は、みんな喜んで協力しようとするのですが、結局、みんな断ってしまいまして。」
「なぜ、新型だろ?」
「それが、あまりにも違い過ぎるようなんです。システムが。習熟したパイロットほど嫌がっているようです。」
「そうだ、一人パイロットがあぶれたな。」
「シナプス少尉ですか?」
大佐の頭の中に、一緒に同行したアーサーの姿が思い浮かんだ。
「あ、彼か。」
「お知り合いですか?」
「まあ、同じ便で移動してきた。」
試作機のスペック表を見ながら、大佐は話を続けた。
「このスペックが本当なら、量産機は足元にも及ばない。」
「試作機ですから、なんとも言えませんが。」
そのバトルアーマーには、識別番号がついている。それとは別にコードネームがついていた。その名は、ペガサス。