試作機
コックピットから出てもアーサー・シナプスは、まだ、興奮をしていた。短い戦闘であったが、手の震えが、まだ続いていた。アドレナリンが出るとは、こういう状態なのだろう。
通常のパイロットなら、戦闘が終了したと同時に開放される。ただ、試作機のパイロットは、そうはいかない。バトルアーマーの技術者から、機体に関するフィードバックを求められる。技術者に言葉で、状況を説明するのが仕事だ。
説明をしている間に手の震えが治っていくのが、わかった。パイロットも、機体も、どちらも初陣である。欲しい情報がたくさんある。アーサーが解放されたのは、戦闘から3時間後だった。その頃には、アドレナリンはひいて、ぐったりと疲れ、あてがわれたテントのベッドで深い眠りに落ちるのは、必然だった。
帝国軍は、陣を大きく後退させられた。しかし、大きな損害はなかった。シュナイダーにとっても、予想の範囲内だったが、むしろ敵の指揮官が変わったことと、新型のバトルアーマーの存在の方が頭をよぎった。新型については、1機しか登場していないことから、試作機であることは状況からして察しがついた。
「あの新型の機動力は、侮れないな。」
その言葉を聞いた副官のシュワルツは、言葉を返した。
「帝国にも、二型改や三型の配備の噂があります。」
「この最前線に、いつ届くかが問題だ。噂だけでは、作戦は立案できない。」
素直な感想を、シュナイダーは漏らした。シュワルツは、噂について口に出したことを後悔していた。
「敵の次の一手を待つしか、今のところはないな。」
シュナイダーは、水分を補給しながら呟いた。
連合軍側は、今まで雰囲気が一変していた。どんな勝ち方でも、勝てば官軍である。ただ、指揮官のブラッドリーは、これから先は、同じ作戦が通用しないことがわかっていた。山の中に逃げ込まれたのだから仕方がない。狭い山道では、数の有利をうまく使うことができない可能性がある。
簡易な椅子にもたれながら、ブラッドリーは、次の一手を考えていた。




