友達になりたい
「はい。もしもし、橘です。どちら様でしょうか?」
午後の7時、こんな時間に彼女に連絡をするやつはいないのだろう。不思議そうな声でこちらに聞いてきた。
「泉 康太です。遅い時間の連絡となってしまいましたがお時間大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。」
「では、早速依頼についてお聞きしてもよろしいですか?」
「はい。あっ、あの私と友達になっていただけませんか?」
「...?」
不思議な依頼だ。...そもそもこれは依頼なのか?
「それは...依頼ですか?」
「そうです。」
「理由をお聞きしても?」
「実は私、お友達をつくるのが苦手で、今まで気軽に話せるような友達がいたことはないんです。」
「...」
彼女がこんな依頼をしてくるとは思わなかった。
「だからって寂しくない訳じゃなくて、楽しそうに話している人達をみたら、私もそんな友達が欲しいなと...そう思ったんです。」
「なら、それがどうしてこうなったのですか?」
「へ、あ、あの...」
「そもそも、そんな話なら、まず自分に依頼が来ること自体がおかしいですし、お金で買った友情はたいして意味もないと思うのですが...。」
「私はまだ、この依頼を承けることはできません。」
「な...なん...で」
そう、お金で気持ちを買う事はできない。だけど今ならまだその事に気付く事ができるかもしれないと、そう思った。だからこそ断り、願わくば彼女がその事に気づけるようにと。そして、彼女のはじめての友達が自分であることを願って...。
「この言葉の意味がわかったなら、もう一度僕に、いえ、僕と、友達になってください。」
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(橘視点)
この人は不思議な人だ。
いつも、周りに人だかりができている。それでも、彼が笑うところ、怒るところ、感情を見せたことは一度もない。頼まれた仕事はそつなくこなしているけれど、彼が楽しそうにしているところは誰も見たことがない。
だからだろうか。私も気がるに依頼をすることができた。まあ、友達になって欲しいというだけの事だけど。
私は友達がいない。もちろん、欲しいとは思っている。だからこそ、私は自分を偽っているし、いつも、笑顔でいるつもりだ。だけど、なぜか友達はできない。
こんなことを考えながら彼、泉くんからの電話を待っていた。
7時になって、電話がかかってきた。泉くんだとわかっていても、違ったときの不安から確認はしてしまう。当たり前だろう。
予想通り、電話は泉くんからだった。
これより先は驚き、絶望、そして悩みの連続だった。
私は考えなければいけない事が沢山できた。そして、このチャンスを逃せばこれから先、私の悩みは消えないと。そう、思った。
だから考えた、考え続けた。何故なら、彼はこう言ったのだ。
「私はまだ、この依頼を承けることはできません。」と、そういった。そのあと、この言葉の意味を考えろ。と、そう言われた。それからは1週間悩みっぱなしだった。
だけど、それでも、彼の言葉の意味は分からなかった。
それでも私は、彼と友達になりたい。そう思った。そして、彼も友達になりたいと言ってくれた。彼と一緒にいれば、その答えがわかるかもしれないと、そう思えた。
だから私は、彼になんと言われても彼と友達になると、はじめて強くそう思った。
友達って良いですよね。
私はいますよ、友達。何人かって?言わせないでください!2人ですよ。どうせそこら辺のリア充には敵いませんよ!
なんにせよ、面白味が増すのはこれからです。どうか、これからもこの作品をよろしくお願いします。