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1章 7話 即斬首

「いやいや……街に行ったら即逮捕ってなんだよ」


 オレのルーラへの渇望はそんなことで止まらない。場合によっては、強引に中に入り込んで……


「場合によっては、斬首もあり得るかな……」


「物騒だな!! なんでダメなんだよ!?」


 たかが、街に入るだけでそこまで重罪なの?

 昔、悪者にそこまでしたくなる何かをされたの!?


「だって、キミ……身分証何も持ってないでしょ」


「あっ……」


「キミのいたところがどうだったか知らないけど、何もかもを受け入れてたら悪いやつがやりたい放題じゃないか」


 つまり、入国審査みたいなのがあるわけだ。日本にいたころは、国単位での入出国でやってたぐらいだけど、こっちでは街単位でやってんのか……


「なぁ、どうやったら身分証作れるんだ?」


 とはいえ、入れない理由はわかった。身分証が必要って言うなら作ればいい。


「何かしらのギルドに所属するのが一番簡単かな〜。人間と友好がある国だったら、共通のものを発行してもらえるはずだよ」


 つまり、指定の場所に行って発行すればいいと。それはどこの世界でも同じか。


 まぁ、嫌な予感はするけど……聞かないわけにはいかないよなぁ……


「んじゃ、一番近いギルドは?」


「街の中だね」


 デスヨネー


 …………じゃねぇよ!!


「詰んでんじゃねぇか!!」


 思わず、大きな音を立てながら机にこぶしを叩きつける。


「まぁ、身分証を見せれないやつなんて大概、犯罪者だからね……」


 こればかりは、アリアも苦笑い。


「身分証失くしたとか、街の外で生まれたやつとかはどうしてるんだ?」


「まぁ、方法はいろいろあるけど……一番簡単な方法は、中の人間にアタリを付ける」


「アタリ?」


「要するに、街の中の人間の紹介状があれば、中に入れる」


「なんだよ、簡単じゃねぇか」


「口で言うのはね」


「どういうこと?」


「この場合、入った人間がもし街中で何かをしでかした場合、紹介した人間にも同じ罰が処される。万一、しでかした人間が逃げ出した場合、そいつが背負う分だった罪も一緒に追うことになる」


 連帯保証人みたいなものか。それにしては、デメリットの方がでかい気がするけど。


「街の外で生まれた人間たちは、そこに住んでる行商人が近くで商売をしに来た時に紹介状を書いてもらうことがあるみたいだね。一度中に入ってしまえば、そこの中にあるギルドで登録してしまえば、次からは入れるし」


「そうか……ってことは、オレも行商人を待たないとダメか〜」


「こんなところに行商人なんて来ると思う?」


「それもそっか〜〜」


 そういえば、ここ森の中だったな……


「それに、もし行商人が来たところで、キミはその行商人に何か利益を与えることが出来るのかい?」


「まぁ、そんなものはないわけだけど……」


 行商人だって、ただで紹介状を出すわけがない。


 万一の場合、自分が罪を背負う可能性だってあるんだ。そんなデメリットよりも大きなメリットがなければ紹介状なんて書かないだろう。


「つまりは、そういうことだ。一旦諦めなよ」


「だよなぁ〜」


 聞いてる限り、オレの街に入る方法はないに等しい。もちろん、全くないというわけではないが……


「それにしても、どーすっかなぁ……」


 机に突っ伏して、考える。


「どうするって?」


「いやさ。今ここで生きてるのはいいとして、これからも生きていくのに物資はどうしても必要だろ?」


「それは、そうだね」


 もちろん、ルーラ習得をあきらめたわけじゃない。


 ひとまず、目先のことを考えるとしても、先立つものは必要だ。


「でも、街に行かないと物資なんて手に入らないだろ?」


「そうでもないよ」


「えっ、そうなの?」


 あっけからんと答えるアリアに驚いた。


「ちょっと時間はかかるけど、ここに引きこもってても欲しいものは手に入るよ。じゃないとボクはこうやって生きてないよ」


 言われてみればそうだ。


「何それ、通販でもあんのか、この世界」


「通販……って言うのは何かわからないけど、冒険者ギルドに知り合いがいてね。その子にお金を渡して週に一度食べ物とか持ってきてもらってるんだ」


 成程。通販はないけどパシリがいると。余計に立タチ悪くないか? 気のせい?


「一応、来るのは明日だから、その時に一緒に頼んでおくよ」


「悪いな」


「気にしないで。さっきも言ったけど、ボクの自己満足として切り捨ててくれてもいい」


「…………なぁ、アリア。改めて聞いときたいんだけどさ」


「んっ、何だい?」


「なんで、そこまでオレを助けてくれるんだ?」


「さっきも言っただろ? 昔……」


「そうじゃなくて」


「そうじゃなくて、この世界のアリアからしたら、オレの話なんて素っ頓狂な話だろ。狂ってる、夢見すぎとか言われてもおかしくない。なのに、ちゃんと話聞いてくれてるだろ」


 落ち着いて考えたら、おかしな話だ。


 オレなら、今日会った人間がいきなり異世界の話とかしても“何言ってんのこいつ”としかならない。

 こんな律儀に話を聞いてくれるアリアの方が異常なんだ。


 助けてもらっておいて、異常とか言うのは気が引けるが、それはハッキリさせておいた方がいいだろう。


「あぁ……そゆこと」


 アリアの方も、この質問を予想してたのか、特に驚いた様子もなく淡々と答える。


「簡単だよ。ボクはキミ以外に別の世界から来たって人を知っている。事実かどうかは別としてね」


「ううん。それが嘘かホントかなんてどうでもいいんだよ、きっと」


「もしかして……」


 アリアのこの口ぶり。ある人を思い浮かべる。顔も知らない。けど何度か話に出てきた……


「そ。ボクを助けてくれたあの人も別の世界から来たって言ってた」


 オレ以外にもいたのか……そいつの後をたどれば、もしかしたら……


「なぁ、そいつどうなったんだ?」


「……もう、この世界にはいないよ」


「帰れたのか?」


「さぁ……ちゃんと繋がってるといいんだけど……」


 アリアの声のトーンが落ちていく。もしかすると、その人は……


「はい、湿っぽい話は終わり。とにかく、ボク以外にこんな話しても信じてもらえるかわからないから、なるべくしないようにね」


「わかってるって」


「さっ、今日はこれくらいにして、ご飯にしようか。ごちそうするよ」


「ごちになります」

誤字脱字の報告、感想評価お待ちしています。


次回投稿は7/9の17時頃を予定してますーー

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