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1章 5話 魔術師アリア先生

「それで……改めて聞くけど、これからどうしたいんだい?」


 再び、向かい合って座って話し合いを始めた第一声。女の子がそんなことを聞いてきた。


「ん〜〜……それなんだけどさ。その前に、さ」


改めて向き合った後で、こんなことを聞くのも恥ずかしい。オレは恥ずかしくなって頬をポリポリとかいて恥ずかしさを誤魔化す。


「んっ、まだ何かあるのかい?」


「いや、そこまで大事なことじゃな……いや、大事なことか」


「もったいぶらないで、言ってごらんよ」


 もったいぶってるつもりはないんだけど……まぁ、いいか。


「いやさ……ここまでしておいてもらって、お前……いや、キミのこと何も知らないなって思って。そもそもなんて呼べばいい?」


「あぁ、そういえば自己紹介もまだだったね」


 そうなのだ。すごく今更だが、あんな話をしたにもかかわらずオレはこの子の名前すら知らない。

 あくまで夢だと思ってたし、重要人物なら自ら名乗るだろうって勝手に思い込んでた節もある。


 でも、今後はそうもいかなくなった。今更こんなこと聞くなんて、小恥ずかしくてたまらない。


「ボクは、アリア。今はただのアリアさ……気軽にアリアって呼んでくれたらいい」


 自らをボクと呼ぶアリアという女の子は、何故か自信満々に薄い胸をそらせながら、自己紹介をしてくれた。


「わかった」


「一応聞かれる前に言っておくけど、ボクはこんな見た目だけど、キミより長生きだからね」


 ……まぁ、そうだよな。喋り方がまず子供っぽくないし、昔同じような経験したとか言ってたし。そんな経験をしたとすれば、アリアの見た目まんまの年齢じゃ若すぎる。


「ちなみに、何歳?」


「……ねぇ、キミ。女性に年齢を聞くのはマナー違反じゃないかな?」


「あっ、悪い」


 まぁ、そうだよな。そうですよね!!

 いや、そんな意味深なこと言われたら気になるじゃん。仕方ないだろ!!


「別にいいよ。って言っても、自分でも覚えてないだけだけだしね」


「どういうことだ?」


「深い意味はないよ」


 いや、自分でも覚えてないって……


「話を戻して……ボクは魔術師だ」


「魔法使いじゃなくて?」


 さっき、アリア自身も魔法って言っていた。

 魔術師なら、さっきのも魔術って言わないか? でも、最初に使った状態異常を回復させる奴は魔術とか言ってたな……

 魔法と魔術、大抵どちらかだと思うんだけど、この世界には両方存在しているみたいだ。


 違いはさっぱりだけど……


「そうだね。その区別を説明するには、そもそものキミの知ってる魔法を知っておきたいんだけど……」


「オレの知ってる魔法って言われてもなぁ……」


 オレは魔法を初めて見たと言ってたはずなんだけど……


「そもそも実際に見たのは、さっきのが初めてだし……創作上のモノでも構わないか?」


「そういえば、さっきもそんなこと言ってたっけ。創作のモノでもいいよ。キミの想像しやすいもので大丈夫」


「それじゃあ、まずは……さっき見たファイアボールとか。有名なところだと相手を凍らせるとか、雷を落とすってやつもあるな」


 某RPGでは、お約束の攻撃魔法3種。

 アリアはファイアとしか言ってなかったが、オレからすればファイアボールなんだよな。ゲームの中ではファイアだったけど。


「と言うことは、自然現象に干渉する物が多いってことかな?」


「まぁ、有名なところだとそうだな。あと有名なところだと、ルーラとか」


 これも超有名RPGでは定番の魔法。

 必ずと言っていいほどシリーズでは主人公が覚えるわけだが、他にも色々魔法を覚えるのに断トツで主人公が使う魔法の一つ。

 対局はホイミ系かな。本職には負けるが、序盤じゃあってホントに助かるんだよな、アレ。ホント、ゲームバランスよく保たれてると思うわ。


「ルーラ?」


 そんなオレの思いとは裏腹にアリアが首をかしげる。どうやら、ルーラはないらしい。

 でも、個人的にはこういう魔法こそあってほしい。おそらくこの世界には電車などという文明の力はない。そんな世界で、わざわざ歩いて街まで往復とかしたくない。


「一度言ったことのある街にひとっ飛びってやつだけど……そういう魔法はないの?」


 あってください。お願いです。いや、これはマジで。


「う〜ん……あるにはあるらしいけど……」


 よしキタ!!


「ボクは使える人を見たことないかな」


 マジかぁ……


「やっぱ、使えるやつ限られてるのか?」


 もっぱら、主人公が使ってるイメージだもんなぁ……


 もっとも、アレはゲーム内のストレス軽減のための特別措置的としてデザインされたとかなんとかって言われてるところもあるから、実際にってなったら難しいものなのかねぇ……


「まぁ……そうだね。“転移魔術”は、汎用性も高いし……使えたら、高給取り間違いなしだと思うよ」


 そりゃ、重宝されるだろうなぁ……

 それで商売なんか始めたら、勝ち組確定だもんな。当の本人は過労死する可能性も無きにしも非ずだろうけど。


「へぇ……それって覚えることは出来ないのか?」


 というか、ここの魔法ってどうやって覚えるんだ?

 ありがちなのは、レベルアップ、魔導書を読む、誰かの師事を仰ぐとか……


 何はどうあれ、オレもその“転送魔術”だけは何としてでも覚えたい。


「それは無理」


「えっ、無理なの?」


 そう思った矢先に、オレの願望は真っ二つに叩きおられた。


「うん。まぁ、断言はできないんだけど……ひとまず、これくらいでいいや。順を追って説明しようか」


「よろしく」


「えっと……まずは……」


 アリアは、紙と羽ペンを持ってきて、紙に文字を書き込んでいく。言葉を話せる時点で大丈夫だと思ったけど、文字も日本語に見える。


 今更だが、アリアが話してる言葉って何語になるんだろうか?


 日本語が話せる人なんてたかが数億で、ここの人々がそうだとは限らない。別の言語を話してると思うのが普通か……


「なぁ、アリア。ちょっといいか?」


「んっ、なんだい?」


「ちょっと羽ペン貸してくれ」


「いいけど……何するの?」


「いいからいいから」


 そう言って、アリアから羽ペンを受け取ると、紙の端の方に日本語で“葛城裕斗”と名前を書き込む。


「これ、何に見える?」


「何って、ボクには絵にしか見えないけど……」


 成程。アリアにとって漢字は絵にしか見えないってことか。今アリアが書いてる字も、おそらく話し言葉も日本語じゃないんだろうな。


「これがどうかしたのかい?」


「いや、何でもない。続けてくれ」


 そう言って、アリアに羽ペンを返す。アリアは不思議そうな顔をしているけど、特にツッコまずに再び文字を書き始めた。


「まず、魔を生業とする者として大きく、魔法使い、付与術師、治癒術師、精霊術師、そして魔術師。この5種類に分けられるんだよ」


 アリア先生の魔法の講義が始まる。紙に書いた文字を一つ一つ丸で囲みながら、口にしてくれた。


「字面から、なんとなく何するかわかる奴は置いておいて……」


 付与術師、治癒術師、精霊術師はおそらく読んで字の如くだろう。


「魔法使いと魔術師に関しては一緒にしか思えないんだけど……」


 おそらく、魔法を使うもの、魔術を使うものとかいうそのくらいの差なのだろう。

 しかし、そもそも魔法と魔術の差が曖昧だから違いがよく分からない。


「似て非なるもの、かな」


 どうやら違うらしい。


「それじゃあ、その説明からしていこうか」



誤字脱字の報告、感想評価お待ちしています。


次回は7/8の21時以降で考えております〜

よろしくお願いします!

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