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1章 3話 ロリコン疑惑

 

「知らねぇ、天井だ……」


 まさか、こんなことを現実に言う日が来るとは思ってもみなかった。


 胡散臭い爺さんが偉そうに話してる夢から覚めた。

 明らかに視界に映るものには、色がついている。さっきまで見ていた夢から覚めたのは明らかだ。


 だが、なぜだろう。未だに夢から覚めた気がしない。

 理由ははっきりしている。この知らない天井だ。さっきまで教室にいたはずなんだよ、オレ。なのに、知らない天井ってどういうことだ?


「ったく……せっかく目が覚めたら、話のネタにできると思ったのに……」


 夢から覚めたのに、また夢とかやめてくれよ。


 とはいえ、これは本当に夢か?


 知らないとはいえ、ちゃんと天井がある。寝ているところもベッドの上で……まぁ、もちろんオレの部屋のベッドじゃないわけだが。窓から差し込む日光も作り物には思えない。


 どれもこれも、妙なリアリティがある。これが偽物と言われる方が驚くレベルだ。


「んで、どこだここ……」


 夢って言うのは、本人の記憶にあることを勝手に捏造して見せているものだとか聞いたことがある。

 って言うことは、この光景もオレがどこか見たことあるってことじゃないのか。


「そういえば……」


 “お主たちには、ワシの作った世界に行って、魔王を倒して欲しいのじゃ”


 夢の中で騒いでた自称神様の言ってたセリフ。


 もしそれが本当だったら?

 もし今見ているこの光景が現実だったら?


「……んな、訳ねぇか」


 さっき、夢だって決めつけたはずだ。あんなテンプレ展開だけはマジでごめんだ。

 夢じゃなかったら、この世界の魔王とやらをオレが倒さないといけないんだろ?


 なんで、オレがそんなことしねぇといけねぇんだよ。やるとしても、もうちょい頼み方考えやがれ。それでも絶対断るが。


 何で見ず知らずのやつのために命張らないといけないんだよ。ばかばかしい。


「まぁ、考えても答えは出ないだろ」


 そもそも、現実と受け入れるには証拠が足りなさすぎる。

 今のところ、現実じゃないって理由は、あの爺さんの会話だけだ。あの会話を信じていいのか怪しいのに、あの会話を信じてここを異世界とか言いきるのは安易すぎるだろう。


「んんっ……」


 体を起こし、背中を伸ばす。

 バキバキと音が鳴り、本当に寝起きのように気持ちいい。


 夢のはずなのに、さっきから妙にリアルだな……


「さて、ちょっくら、外でも……」


 布団から出ようとすると、窓際のソファーに丸めておいてある毛布がごそごそと動いたように見え……いや、動いたな。

 オレはなぜか、黙ってその毛布の塊を目で追った。


「んぐっ!!」


 おそらく、毛布から這い出ようとあがいて、そして落ちたといったところだろう。

 ゴンッという音がして、毛布の中から幼い女の子声がする。


「うぅっ……いたた……」


 もぞもぞと動いた毛布から、小さな足が出てくる。足が出てきて、ふくらはぎ、太ももと順番に出てくる。

 声の通り、小柄でオレなんかより細く、白い。“なぜ足から?”なんて疑問もあるが、そんなことは一瞬で気にならなくなった。そのすらっとした白い足に、見とれてしまった。


「あれ……中々出れな……」


 毛布の塊の中では、どうも毛布から出ようと格闘しているみたいだ。足をばたつかせ、必死になっている。


「ッツ!!」


 …………ついてなかった。男の象徴である、アレが。


 条件反射で咄嗟(とっさ)に顔を背ける。


 ……生で初めて見た


 じゃねぇよ!!


 こんなところ誰かに見られたら、どうすんだよ!?

 何も悪いことしてないはずなのに、少女誘拐、拉致監禁で捕まるのオレじゃね!?

 拉致監禁されたのはオレだっての!!



 ◇ ◇ ◇


「なんでこんなことした?」


「ち、違うんですよ。オレは、昨日自分の部屋で寝て、気づいたら知らない天井で、知らない女の子と一緒の部屋で……」


「そんなこと信じられるか!!」


「そんな!! 本当のことですよ!?」


「本当だったとして、なんで女の子が裸だったんだ?」


「そ、それは……」


「ほら見ろ!! 言えないっていうことは、やましい何かがあるんだろ!!」


「そ、そんなぁ……」



 ◇ ◇ ◇


 ……以上、妄想終了。


 妄想の中で、オレが警官に取り調べを受けた。自分の妄想の中ですら、警官に負けた。


 ダメだ。オレが警官でも今の状況は100%有罪にする。

 犯罪者とか言うレッテルのほかに、ロリコンってレッテルも張られる……


「オレはロリコンじゃねぇ!!」


「うわっ!!」


 思わず叫んでしまった。そして、叫んだ後に気付く。

 そういえば、これってば夢だったな。うん。大丈夫、大丈夫。


「夢だから、何しても許される。うん、そうだ。オレはロリコンじゃない……」


「いや、夢じゃないし……それに、ロリコン? 何をぶつくさと言ってるのさ」


 顔をそむけたオレの背後から、女の子が声をかける。

 恐る恐る振り返ると、透き通るような銀色の髪の小さな女の子が眠そうに目を擦りながらこっちを見ている。

 毛布こそ羽織っているが、肝心なところが隠せていなくて、完全にアウトだ。


「おはよう……起きてたんだ。よかった」


「……………………」


「んっ……どうしたんだい?」


「ふ……」


「“ふ”?」


「服を着ろぉぉぉ!!」




誤字脱字の報告、感想評価お待ちしています。


次回の投稿は、7/7の18〜20時くらいを想定しています。よければ、夜にもまたお越しください♪

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