2章 幕間② アジト
今回もアリア視点でのお話になりますー
予めご了承ください( * ॑꒳ ॑*)
壊れた瓦礫をどかし、地面に隠された大穴をはしごを使って降りていく。
降りた先はこの街の地下水道とつながっていて、レオス曰く『領主に仕事の報酬代わりに何か所か地図にない水路を勝手に掘っていいという了承を得たから勝手に掘ってアジトにした』とのこと。
今の“銀龍の拳”のアジトは地下水道のどこかにあるということだ。
シャルたちも裏路地のどこかにアジトがあることまでは突き止めていたらしいけど、地下に通じる通路があるとは思ってもみなかったらしい。
ちなみに、メイドの子はシャルとはぐれた後、たまたまあの場所で休憩をしていたら、関係者らしきマリアに声をかけられたとか。
つまり、あの時裏口から入るのを諦めていれば、あの戦闘は起きなかったということだ。
地下水道を何度か曲がると、小さな空間……というか小部屋のようなところに出た。薪の跡やテントが残っている。おそらく作業員たちの休息所といったところかな。
レオスはその中のテントの一つを動かし、その裏に貼ってある不自然な布をはがす。そこには、レンガの壁に似合わない、ぼろい木の扉があった。
「ようこそ、俺のギルド“銀龍の拳”アジトへ。歓迎するぜ」
レオスがボクたちを歓迎する。そこまではよかったんだけど……
「お帰りっす、ボス……って、なんてもん連れ帰ってんですか!?」
ギルドのメンツの一人がボクを見て声を上げた瞬間……
「“銀龍”が出たーーーー!! 総員退避ーーーー!!」
「逃げろーーーー!! またギルドが崩壊するぞ!!」
「もう終わりだぁぁぁぁ!!」
ギルド内が阿鼻叫喚の嵐に包まれる。
理由はわかってるんだけど……目の前でそんな風にされるとちょっと悲しくなってくるなぁ……
「まぁ、騒がしいギルドだがゆっくりしていってくれ」
肝心のレオスは、動じることなくそういってギルドの中を歩いていく。
ボクたちは何も言わずにそれについていくと、ある一室に招き入れられる。
その部屋は、地下特有の薄暗さとランプの優しい明るさがいい感じの調和した落ち着いた部屋だった。
そんな部屋の真ん中にはソファーが一つ、中央には机。さらにそれを見渡すように部屋の奥にはひときわ立派な机がある。
「ここは俺の部屋だ。奥にベッドもあるし、ほかの連中も用事がなければ近づかない部屋だ。落ち着いて話すにはちょうどいいだろ」
そういって、仕切りの奥にあったベッドにユート君を寝かせる。ベッドで寝ているユート君は寝息も荒くないし、しばらくしないうちに目を覚ますだろう。
「それにしても、よくボクだってわかったね、シャル」
ひと段落ついたところで、ボクは後ろをついてきていたシャルに声をかける。
「声を聴いたときに、なんとな~く……それにアリアさんは慌てると話を強引に変えようとするから」
「あはは……やっぱり、あの時にはバレてたか」
「聞いたことのある声、強引な話題転換、そして可愛らしい声なのに“ボク”という一人称……これだけ特徴があれば間違えないわよ」
ボクの予想した通り、あの時には疑われていて、その直後に確信に至ったようだ。そんなにわかりやすいかな、ボク……
「おてんば娘、この赤い嬢ちゃんとはどういう関係なんだ?」
「昔、シャルが子供のころに一緒にいたことがあってね」
レオスが興味なさそうにそんなことを聞いてくる。ボクは当時のことを思い出しながらその質問に答える。
「懐かしいわ。ねっ、アリアお姉ちゃん♪」
「よしてくれ。今となってはキミのほうが大きくなってるんだし」
「それもそうね」
シャルと最後に会ったのは、シャルがまだかなり小さいころ。その時はまだ“アリアお姉ちゃん”って呼ばれてたっけ。
やっぱり10年の時間の流れはすごい。昔はあんなに小さかったのに、今やボクがシャルを見上げるようになってる。
「ふ~ん……まっ、いっか」
本当に興味がなかったのか、レオスはボクたちに背を向け歩き出す。
「どこ行くのさ」
「上の状況確認と“契約魔術”の準備」
レオスは天井を指さしながら、歩いていく。
「……報酬とか聞かないんだ」
「まぁ、今回はな。サービスしといてやる」
「珍しいね」
“契約魔術”の一件は、完全にボク個人の依頼。つまりギルドとして受注することになるのであれば、報酬を払わないといけなくなる。その辺の確認は依頼をこなす前にしとかないといけないはずなのに、レオスはそれをしなかった。
一ギルドのリーダーであるレオスがそれをするのだから少し驚きだ。
「まぁ……あんちゃんには悪いことしたしな。その侘びだと思ってくれ」
「そっか」
「それと……積る話があるんだろ。俺がいないほうが話しやすい話だってあるかもしれねぇしな」
「助かるよ」
それは確かにそうだ。特にアレクの話なんかはものによっては誰にも話しちゃいけない内容のこともある。例えば、アレクの最後の話とか、それの最たる例だろうね。
「何、気にすんな。そこのメイドの嬢ちゃん」
「……何?」
部屋の入口に黙って立っていたメイドの子にレオスが声をかける。
「この部屋の護衛は任せていいな?」
「んっ……」
「ここには、俺と、さっきのグレー髪のやつ以外入れるな。ギルドのメンツが来たら、ここにはいないって言って追い返せばいい。もめそうなら、そこのおてんば娘を引っ張り出せばいいから」
「わかった」
「んじゃ、頼んだぜ」
そういうと、レオスは手を振りながら部屋を出て行ってしまった。それを見送ったシャルが、すでにいないレオスの後を追うように、入口のほうを見ながらジト目を向ける。
「一応……ここって……“銀龍の拳”のアジトよね?」
「そっ。ついでに言うとリーダーの執務室」
「シャルが言うのもおかしな話だけど……今日初めてあった人をそんな大事な部屋に置いていくっていうのはどうなの……」
「いいんじゃない。もし何かあってもボクの住処は彼に割れてるわけだし」
「そういうものなの?」
「そういうものだよ。もしほかのメンバーが勘違いしてもボクには手を出さないだろうしね」
久々にこのギルドに来たけれど……あの反応ということは、当時のメンバーもそれなりに残っているのだろう。
当時のメンバーがボクがいるのに、この部屋を強襲するなんてことはしないだろうし……したら、そいつは単純なバカだよ……
「そういえば、昔自慢気にちょっかいかけてきたギルドを一つ潰したことがあるとか言ってたわね……」
「それがこのギルド」
「その話、ホントだったのね」
どうやら、ボクの話は信じてなかった様子。もしかしたら、当時は信じていたけど成長して物事を考えられるようになってから、疑うようになったのか。
どちらにせよ、普通ギルド一つを単身で壊滅させたなんて話は信じられないよね……
「アレクから聞いてないのかい?」
「お父様は……かつての仲間には悪いことをした……としか」
「そっ……か」
「それで、アリアさん。本題なんだけど……」
シャルが自らのカバンの中をあさって何かを出そうとする。
「うっ……」
その瞬間、ユート君がうめき声をあげる。
「ちょっと待ってね。ユートくんが目を覚ましそう」
「え、えぇ……」
おあずけを受けたシャルは少し落ち込んだように見える。そんなに大事な話だったのかな……
「ちなみにその話って、ほかの人……ユートくんとか聞いちゃまずい話なのかな?」
ちゃんと聞かないといけない。そんな気がした。
とはいえ、動けないユート君を一人置いていくわけにはいかないし、マリアはいまだ帰ってこない。
そもそも、ここは“銀龍の拳”のアジトの中。ボクもちゃんと内部を把握してるわけじゃない。完全に二人っきりになれる場所がほかにあるのかどうかもわからない。
この状況でボクだけが抜け出すのも骨が折れる。
「あまり大勢には聞かれたくない話かしら。一人や二人、信用できる人であるのなら……」
「わかった。なら、キミたちの紹介と一緒にその話も聞こうか」
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次回更新は7/30の18時頃を予定しています!




