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2章 8話 世間は意外と狭い

「マジかぁ……そう言われたら、そうだよなぁ……こんなナリでリーダーとかお笑い草だよなぁ……」


「ま、まぁ……今こうして気付けたんだし、次から直していけばいいさ」


「簡単に言うなよ、おてんば娘……」


「まぁ、そうなんだけどさ……」


 明らかに落ち込んでいるレオスを慰めるアリア。どちらも小柄なだけあって、傍から見てる分には、泣いている子を慰める近所の女の子に見えてほのぼのしてて可愛らしい。

 まぁ、どちらもオレより年上っていう点を考えなければ……だが。


「事の発端がよく言うな……まったく」


「どういうことだ?」


 言葉の意味が分からず、レオスに問い直す。


「ったく、何も話してないんだな……このおてんば娘め……」


「聞かれなかったし、言う必要もないことじゃないか」


「まぁ、そうなんだが……」


 あきれた様子で、オレを挟んで反対側にいるアリアをレオスが問い詰めるが、アリアはあっけからんと返事をする。


「はぁ……あんちゃん。さっきの偽物の話覚えてるか?」


 渋々レオスも説明を始める。


「アイツらのやってたことって、昔の俺のギルドがやってた事と変わらねぇんだよ。

 元々“銀龍の拳”って言うのは、このルナボアの街を根城にした強盗、暴行何でもアリの……いわゆる闇ギルドのひとつだったわけだが……」


 つまり、さっきの偽物はその辺のチンピラがどこかのヤクザの組名を語って脅していたようなものか。

 たしかに、本家本元からすれば迷惑極まりないな。


「どこぞのおてんば娘が何を思ったのか、壊滅させちまってな」


 あの偽物、なんで壊滅したギルドを語ってたんだよ。もっと他に選択肢あっただろうが……


「あれは、キミのギルドメンバーがボクの仲間を襲ったからじゃないか」


 なるほど。アリアはそれに対して迎撃したってわけね。そりゃ、レオスたちが悪い。


 それを差し置いても、マリアから聞いてはいたがアリアってやっぱすごいんだな……

 さっきの戦闘を思い返して、不意にそう思う。

 マリアの戦闘は、ある意味じゃ、あこがれそのものではある。高速で立ち回り、相手を切り伏せる。漫画やアニメではよく見て、小さい頃は真似てみたものだ。それで、暴れるなと親に怒られるまでが1セット。

 今思い返すといい思い出である。誰もが経験した道だろう。


 そんなマリアの師匠がアリアだ。アリアも負けず劣らず強いんだろう。戦う姿はかっこいいものなのだろう。まだ見た事はないけど。


「うるせぇ。元々ああいう依頼だったんだよ。ただの報復で、うちのメンバーを何人も殺して、挙句には将来有望だった新人をかっさらって行きやがって……」


 しかし、当の殲滅対象になってしまったレオスは面白くない様子で愚痴をこぼす。


「あんな子供にも暗殺なんて仕事させてたキミが悪い」


「あいつ自身が生きる術として選んだ道だ。俺にとやかく言われる筋合いはねぇ」


 判断能力のない子供に人道から外れたことをさせていたのを咎めるアリア。

 その子供を一人の人間として認め、その子供の自己責任だと言い張るレオス。


 どちらの言い分もある意味じゃ正しいし、間違ってるともいえる。だからこそ争って、レオスはアリアに敗北した。そういうことだ。それに関しては、もうすでに解決している過去のことだし、部外者のオレが口をはさむことじゃない。


 オレとしては、そんなことよりも気になることがある。


「なぁ、それって、マリアのことか?」


「なんだ、あんちゃん。知ってんのか?」


 暗殺を生きるためにしていた子供がいて、その子供が所属していた闇ギルドをアリアが壊滅させて……

 どうも聞き覚えのある話かと思ったら、マリアがこの前話していたマリア自身の過去の話にそっくりだ。

 試しに聞いてみたら、レオスがあっさり肯定して見せる。


「いや、詳しくは……」


 とはいえ、詳しくは聞いてない。聞いたのは、マリアがアリアのパーティを襲って返り討ち、そしてアリアが闇ギルドを壊滅させて、マリアがその後アリアの旅について行ったとかそれくらいか。

 むしろ、たったそれだけなのにそこにたどり着いたオレに、オレ自身驚いてる。記憶に残っていたのは、あの時の苦笑いのおかげだろう。

 その苦笑いの意味なんて今でも分からないが、あの苦笑いはどうにも頭の中から離れない。


「そうだよ。あいつは元々“銀龍の拳”のメンバーだよ。それも仕事の中では結構危険な潜入、暗殺をメインに仕事をしてた」


「だから、アリアもマリアもあの時……」


 何はともあれ、これでマリアたちが“銀龍の拳”なんてワードを知っている節が見えた理由が分かった。

 片や、昔所属していたギルドで、片や自分が壊滅させたギルドともなれば、記憶に残って当然だ。


「だが、どこぞのおてんば娘が暴れたせいでギルドは壊滅。やっとの思いで立て直したと思ったら今度は領主が介入してきやがる」


「コペラさんが?」


 そんなことを思いつつ、話を聞いていると意外な人物が登場した。

 こんな薄暗い裏路地の奥の奥にあるような闇ギルドに領主であるコペラさんが介入したっていうのか?


「どうせ、またどこかのおてんば娘が何か言ったんだろ。領主も元冒険者だし、どこぞのおてんば娘と一時期一緒に旅してたしな」


「あぁ……コペラさんとどういう繋がりだったのか気になってたけど、そういうことか」


 賞金首というアリアが、なぜ領主であるコペラさんと知り合いでそんなに仲良くやってるのかって思ったけど、そういう事情があったのか。コペラさんの立場からすれば、切ったほうがいい関係なのに、それでも切らないのは、ひとえにコペラさんの人柄だろう。


「世間は意外と狭いもんだぜ、あんちゃん」


「だな~」


 レオスが何とも言えない顔をしながら、そんなことを言った。

 確かに、そんな話を聞くと、その言葉の力を実感してしまう。


「ついでに言っておくと、マリアが殺そうとしたのもコペラだったりするんだけどね」


「マジで!?」


 油断してたところにとんだ爆弾が投下された。投下したアリア本人は何食わぬ顔をしてるが、とんでもないこと言ってるのに気づいてほしい。


 マリアはかなりの大物を暗殺しようとしていて、ついさっき、その相手と何食わぬ顔で話してたということだ。

 しかも、確かマリアはコペラさんの屋敷に侵入してたよな。それってつまり、その気になればコペラさんの暗殺も可能なわけで……


「なんだかんだで、伯爵家の……当時はまだご令嬢だったか。とにかく、暗殺依頼なんてのはざらに来てたよ。まぁ……」


「レオス」


 何かを言いかけたレオスの言葉をアリアが遮った。


 よくある話……なのかわからないが、貴族の家だと暗殺とかそういう話はあっても不思議じゃない話だと思うが、そんな言葉を遮る必要がどこにあるのだろうか。


「おっと、これ以上は禁句だ。知りたかったら、そこのおてんば娘かマリアから聞き出しな。俺の口からは言えねぇ」


 しかし、レオスもアリアの言いたいことがわかっているようで、言葉を引っ込めてしまった。

 その言葉は、以前アリアにボコボコにされた恐怖から口を閉ざしたわけじゃない。その行動には、レオス自身の意思が見て取れる。


「なぁ、アリア……」


 レオスが話さないのであれば……と思って、アリアに問いかける。


「ゴメンね、ユート君。聞かない方がキミのためにもなると思うし、聞かないでくれると助かるかな」


 予想はしていたが、アリアも口を閉ざしてしまった。そもそも、レオスに口を閉ざすように言ったのもアリアだ。そんなアリアが話すわけない。


「わかった」


「ずいぶんと物わかりがいいな、あんちゃん」


「そんなこと言われてもな……言えないっていうなら……」


 無理に聞き出せるものでもねぇだろ。


 そう言おうとしたオレの言葉を遮るように、オレの隣にいたレオスの額に何の前触れもなくナイフが突き刺さった。

 レオスは悲鳴もうめき声も上げることなく、そのナイフの勢いでレオスがあおむけに倒れた。


「なっ……」


 倒れるレオスを勝手に目が追いかける。ナイフの刺さったレオスは動く気配すら見せない。

 無駄に長い前髪のおかげか返り血が飛んだ様子は見て取れない。もしかして、血が出てないのか……いや、どこからどう見てもナイフが刺さっている。見えてないだけだ。でも、見て取れないということは出血は少量か。だったら、生きて……


 いや、そんなことはあり得ない。頭にナイフが突き刺さった状態で、生きているほうがおかしい。つまり……


「お、おい……」


 その光景が信じられずにたじろいでしまう。今さっきまで話していた人物だ。闇ギルドのリーダーだ。

 元とはいえ、マリアの上司にあたる人物だ。

 そんな人物が、こんなあっさり死ぬことなんて……こんなナイフ一本でも、人が……


 レオスに刺さったナイフを見る。そのナイフには見覚えがある。マリアが持っていたナイフだ。オレもこのナイフで殺されそうになったことがある。


 ナイフの飛んできた先に顔を向けると、薄暗い路地に雷鳴が轟き、一瞬にして青白い閃光で辺り一帯が包まれ――――

誤字脱字の報告、感想評価お待ちしています。


次回更新は、7/21の18時頃を予定しています( * ॑꒳ ॑*)

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