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2章 4話 久々のテンプレ展開

「んんっ、やっと出れたーー!!」


 大きく伸びる。体中の関節がボキボキと音を立てる。


 久しぶりの日光な気もする。部屋の中も寒かったというわけじゃないが、日光を浴びると温かさを身をもって体感できる。

 初めて見るルナボアの街はかなり賑わっていて、どこを見ても人がたくさんいる。

 こういう初めてくる土地は、どうしてこうもワクワクするんだろうか。


「キミ……今にも走り出しそうだけど、ちょっと待ってね」


 そんなオレをアリアがたしなめる。

 別に……そんなつもりは……うん、ゴメン。色々見て回りたいと思ってた。


「わ、わかってるって。先に用事を済ませてから、だろ」


 この街に来てから、いきなり領主の登場というビックリイベントで忘れかけていたけど、目的は“契約魔術”という魔術を使う魔術師に会いに来たんだ。

 街の散策、もとい冒険者ギルドへはそのついでだ。


「あぁ、それじゃあ、早速行こうか。件の魔術師のところへ」


 そう言って、先に歩き出したアリアの後について行く。





 街の賑わってる大通りからいきなり外れて、薄暗い裏路地に入っていく。


 最初は、ただの裏路地だった。


 次第に薄汚れた、明らかにまともな生活を送れてないであろう人がちらほらと見えてくるようになる。もう何度曲がり角を曲がったかもわからない。空気の流れが止まり、淀んだ空気が嫌な感じを醸し出す。空気中に砂埃が待っていて少しばかり視界に困る。


「なぁ、道間違えたとかじゃないんだよな?」


 心配になってアリアに確認を取る。この雰囲気……いつ襲われても仕方ない気もする。


「あぁ。今から会う子はとても……ある意味じゃ、キミ以上に特殊な子でね」


「どういうことだよ」


「言葉の通りだよ。会えばわかると思うよ」


「確かにそうですね」


 アリアが答えをはぐらかす。はぐらかす意味ってなんだよとか考えていたら、マリアもその意見に賛同する。本人を見ればわかるって言われてもなぁ……


「ところで、師匠…………」


 裏路地を歩くオレたちの戦闘を歩いていたマリアが急に足を止め、先ほどまでとは打って変わってシリアスな雰囲気をまとっている。


「あぁ。囲まれてるね」


「えっ……」


 アリアもその原因がわかっていたのか、落ち着いて話を続ける。


「へへっ……嬢ちゃんたち、こんなところでどうしたんだい?」


 いつの間にか、前からも後ろからもワラワラと薄汚い男たちが現れる。


 巨漢から骨みたいなの、武器を持ってるやつやそうじゃないやつ。容姿は様々だが、ひとまず、これはチンピラないし盗賊とか言われるやつだ。


 どこから湧いたのか、すでに10人近くいる。


「うわぁ……」


「なんだぁ~そこのクソガキ。オレ様の顔に何かついてんのか?」


「いやぁ、絵にかいたようなテンプレだなぁって思ってよ」


 まぁ、異世界物だと王道だよな、このイベント。


「は、はぁ?」


「はいはい、わかってますよ。ここでこいつらボコって、自分の力を自覚とか、周囲に自分の強さアピールしろってことだろ、わかってるって」


「ね、ねぇ、ちょっとユート君」


「ただ、一つ言わせろよ」


「んなこと、出来るかぁぁぁぁ!! こちとら生まれてこの方、ずっと一般人なんだよ。一般人舐めんな!!

 あいつらも何食わぬ顔でボコっていくけど、おまえら本当に人間かって思うよね。

 どんだけ暴力的な環境で生活したら、絡まれたからって相手ボコせんの?」


「お、おい……」


「お前ら、オタクって設定忘れてない? 陰キャって設定忘れてない?」


「お前……何を言ってるのかほとんどわからないが、心の声が駄々洩れだぞ」


 マリアが残念なものを見る目で指摘する。


 おっと、久々のテンプレ展開に思わず心の声が。

 どうやら、いつのまにか大声で何かを叫んでたらしい。マリアに肩を掴まれて止められるまで気付かなかった。


 もしかして、この白けた空気ってオレのせいなの?

 って確認するまでもないな、うん。オレのせいだわ、これ。すまん。


 とりあえず謝っておこう……心の中で。


「はぁ……えっと、ボクたちはある人を探しててね。キミたちに用事はないから通してくれないかな」


 アリアが頭を抱えながら、チンピラと話を続ける。


「何言ってんのかわからなかったが、そこのクソガキがオレ様のことコケにしてるのだけはわかった。そんな奴をそのまま通すかよ!!」


 しかし、チンピラの方は頭に血が上ってしまって話をまともにできる状態じゃない。

 まったく、チンピラってどうしてこう頭に血が上りやすいのかねェ……


「「…………」」


 はい、すみません。オレのせいですよね。わかってますって、はい。

 だから、そんな残念なものを見る目を止めてください。アリアさん、マリアさん、お願いします。お願いだから!!


「俺たちを誰だと思ってやがる!! “銀龍の拳”だぞ!!」


 そんなオレたちのやり取りを見て、チンピラが声を荒げてキレてしまった。しかし、オレはチンピラがキレたことよりも……


「うわぁ……」


 その何とも言えないネーミングセンスにツッコミを入れていた。もちろん、今度は心の中で。

 なんだよ、“銀龍の拳”って。銀龍を使うなら“銀龍の咆哮”とかもっと他にあっただろ。なんで拳なんだよ。拳で戦う龍とかイメージ崩れるからやめて欲しい。


「銀龍の拳? キミたちが?」


 しかし、アリアはオレと違った反応を見せる。


「なんだ、嬢ちゃんは知ってるようだな」


「まぁ、一応ね」


 どうやら、アリアはその“銀龍の拳”とか言うチンピラグループのことを知ってるみたいだ。


「なら……わかるよな?」


 ニヤニヤとしながら、チンピラがアリアを脅しかかる。

 どうせ、金を置いていけとか女を置いていけとか、どのみち碌なことじゃないのは確かだろう。

 むしろ、これで違ったら、チンピラのイメージが崩れる。


 いや、グループ名がそもそもイメージを崩してるから、掛け合わせたら……


 …………そんなわけないか。


「はぁ……」


「師匠……」


 アリアがため息をつき、マリアが何か言いたげにアリアを見つめる。


「マリア……任せて大丈夫かい?」


「かしこまりました。お任せください」


 さすが、師弟。言葉を交わさずに以心伝心して見せた。


 ……で、何すんの? オレにも教えてくんない?

誤字脱字の報告、感想評価お待ちしています。




次回投稿は、7/17の18時頃を予定しています。

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